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中同協の動き

「中小企業家しんぶん」2003年 5月 5日号より

金融アセス法の考え方が反映された監督指針

<解説>
金融庁「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」


金融庁は3月、中小企業金融の再生に向けた取り組みの強化などを盛り込んだ「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」(以下、「行動計画」と略)を発表。これは、金融審議会第2部会報告(以下、「報告」と略)に基づいて作成されたものです(いずれも金融庁のホームページにありますhttp://www.fsa.go.jp/)。本紙4月15日付の鋤柄中同協幹事長・談話では、「私たちが進めてきた金融アセス法の考え方に通じるもの」と評価し、「改めて確信を持って運動を進めてまいりましょう」としています。ここではそのポイントを見てみます。

なぜ、リレーションシップバンキングが焦点か
 「報告」では、リレーションシップバンキングとは、「金融機関が顧客との間で親密な関係を長く維持することにより顧客に関する情報を蓄積し、この情報を基に貸出等の金融サービスの提供を行うことで展開するビジネスモデル」であり、その担い手は、地銀、第2地銀、信金、信組であるとしています。

 今、なぜこれが問題になっているのかというと、政府が進める「金融再生プログラム」が対象とする大手銀行とは異なる特性を踏まえての中小・地域金融機関の不良債権処理が課題になっているからです。今回の「行動計画」は、不良債権処理の数値と時間軸での目標設定をせず、大手行とは別の行政指針となっています。「報告」は、地域経済における地域金融の果たす役割を重視し、無理に不良債権処理を進めると、「地域経済に重大な影響を与えかねない」とし、不良債権処理の数値目標を設定しない代わりに、今後2年間の「集中改善期間」でできるだけ収益改善に努めるよう要請しています。

問題視されるコミットメントコスト
 信金関係者によれば、これは地域金融機関の主張が取り入れられた成果としつつ、もう一方で地域へのコミットメントコストの抑制という大きな課題が突きつけられたと受け止めています。
 「報告」によればコミットメントコストとは、地域金融機関が、(1)信用リスクに応じた金利より低い金利で貸出していること、(2)収益性の裏付けの弱い融資・金融サービスの提供、(3)地域での評判・悪評を気にするあまり過大なリスクを負担することなどとされています。今後、地域金融機関は収益改善のために、コミットメントコストの抑制とともに信金なども信用格付に見合った金利体系の導入等が求められてくることになります。そのため中小企業はこの流れを見据えた金融対応が迫られてきます。

 確かに、地域と中小企業との取引は手間とコストがかかる面があります。しかし逆に、地域に密着しながら相対取引の強みを生かすこと、日常的な渉外活動や顧客からの情報を生かすことで全体のコストを抑制し、金融ニーズを掘り起こして新しい事業機会につながるという見地に立つことも可能です。

 現に、「報告」に関する地方懇談会で意見表明した福島県商工信用組合の須佐喜夫理事長は、戸別訪問は非効率でも「真実を見出す力を持っている。書類や言葉による説明で得ることのできない“生の情報”と、個々の客と会うことでその本質を判断できる」(『信用組合』03年4月号)と述べていますが、これが金融機関の原点ではないでしょうか。

 地域を「しがらみ」のコストと見るのではなく、地域資源や中小企業の活性化による「利益の源」になると再評価すべきです。この視点こそ、金融機関に求められる理念であり、アセス法の精神にも通じる発想なのです。

金融アセス法に通じる考え方が盛り込まれる
 「報告」は、リレーションシップバンキング機能強化に向けた取り組みを提言していますが、特に「地域貢献についての情報開示及び評価による地域経済の活性化に資する取り組みの強化」を掲げ、「提供された情報は、将来的には、例えばNPO等の第三者機関が、中小・地域金融機関が果たしている地域貢献の状況について、利用者の立場から評価する際に活用するようになることも考えられ」と述べていることが注目されます。

 これは、私たちが進めてきた金融アセス法の考え方に通じるものであり、私たちの運動の成果です。問題は地域貢献をどのような項目・内容で情報開示・評価し、どこが評価機関となるのか、根拠となる法律はどうするのか、などに関して中小企業と地域金融機関の側からの主張・提案が必要であり、まさに同友会の出番となっています。

 また、「行動計画」では、「担保・保証に過度に依存しない中小企業金融の研究会」や都道府県ごとに各金融機関等へ寄せられた苦情・相談等に関し意見交換を行う「地域金融円滑化会議」の設置など、同友会の金融問題の取り組みと重なるものも見られます。

 しかし、2年後の「集中改善期間」終了直後にペイオフ完全実施の予定であり、それまでを金融庁は中小・地域金融機関の収益改善のための「猶予期間」と考えているようです。したがって、それまでに中小企業の信用格付に見合った金利体系の導入を含む収益改善努力がなされていなければ、ペイオフが一部解禁された昨年4月までの中小・地域金融機関の大量の破たん処理の再発がないとも限りません。

 中小企業から見れば、積極面と懸念される面の混在する「報告」「行動計画」ですが、今後もその具体化に際して金融アセス法に通じる「芽」を大切に育てる立場から大いに行動していく必要があります。

中同協事務局 瓜田靖

 

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