中小企業憲章と私

炎のように燃え上がれ!

京都同友会代表理事 井上 誠二 (建都住宅販売(株)社長)


 京都は、中小零細事業者の割合が高く、政令都市中トップです。回復傾向にあると言われている景気ですが、観光を中心とする小売業、サービス業、伝統産業の景況感は、依然厳しい状態が続いています。

 今後、大企業誘致や大型公共工事には限界があり、京都の街や人々を救うとは思われません。かつてないほど、地域社会、地域経済のあり方が、今、問われています。

 地域内の生活者でもある中小企業家は、地域活動に貢献し、納税も雇用も引き受けています。事業活動を通じ、地域の人々の暮らしを支え、地域の豊かさを創造してゆく大きな役割を担っています。地域の主役である私たち事業者が、元気になるには何が必要か、できることは何か、常に意識するようになりました。

 京都を訪れる観光客は、自然やお寺、文化施設だけを見に来られるのでなく、暮らす人々、町家、町なみも散策します。残念ながら、どこにでもあるような特徴のない家が多くなり、町なみが変わりつつあります。長期的に、京都の財産、観光資源を失っていくことになります。

 弊社は、建築不動産業者です。町家が減らないような政策や、所有者、住み手の意識改革運動に参加するとともに、ほかの同友会メンバーと協同で、町家保存のための証券化の取り組みをスタートさせました。この秋に、1号案件が出ますが、地域のためにささやかな挑戦です。

 また、京都には、優れた地域産材(北山杉、竹、京畳など)、伝統産業(西陣織、清水焼など)、伝統技術があります。これらを組み合わせることで、地域特性を生かした、京都らしいオリジナリティーの高い住宅建設、団地開発が可能となります。1社ではできないことも、仲間が集まれば・・・との思いで、われわれ中小企業こそ、地域事業者間ネットワークを意識的につくり、深めていく必要があります。それにより、地域内産業連関が強まり、地域内再投資によるお金が循環し、地域の活性化に結びつきます。

 「京都こだわり住宅」の提案開発を、ほかの仲間と共に、この春、立ち上げました。京都の住まいを、京都の材料、職人で供給することで、京都の地場産業の振興、仕事づくり、担い手の育成、そして、そこから生まれる良質な町づくりにつなげることを、目指したいからです。

 今年もお盆に、五山の送り火が無事焚(た)かれました。東山の大文字とその左側に見える左大文字は、125基の炎で構成され、1つの炎は意味がなくても、全体では大きな意味を成し得ます。

 振興条例や中小企業憲章制定運動が広がりを見せ始めていますが、私たち一人ひとりの力は微力でも、結集し、炎の意志を力強く燃やし、運動に取り組むことで、大きな成果を生み出します。われわれの地域は中小企業家が守る、地域の未来は私たちの手で、との決意を新たにし、勇気を出して、行動してゆきます。

「中小企業家しんぶん」 2005年 9月 15日号から

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