中小企業憲章と私

「他が為に生きる」
中小企業憲章は地道な取り組みから

熊本同友会副代表理事 穴井 憲義(九州電設(株)社長)


 私は、3年前の中同協総会(福岡で開催)で大きな衝撃を受けました。それは、私が常日頃考えていることと、これから中同協がやろうとしている「中小企業憲章制定運動」が非常に近い考えであると思ったからです。

 当社の社訓は「他が為(ため)に生きる」です。全ての生物は生きていること自体が「他が為」になっています。しかし人間は自分の意志で「他が為に生きる」ことができるのです。多くの会社が、経営方針あるいは理念の中に「社会貢献」を掲げていると思います。

 会社は公器であり、社会のためにならなければ存在意義がありません。このことは多くの経営者が頭では理解しています。しかし実際に、そのための行動をしている経営者は何人いるでしょうか。

 会社経営と国家運営はある意味では同じです。国家のリーダーは国民の為に仕事をしなければなりません。しかし私には、多くのリーダーが自分の為に仕事をしているようにしか思えません。自分の為に仕事をすることも大事です。しかし「人を育てる仕事」、あるいは「人の為になる仕事」をすることはとても素晴らしいことです。

 今年、わが社は、社会貢献への取り組みとして、4月に200名ほどで阿蘇の山間に1600本の植林をし、8月には50名で下草刈りを実施しました。この取り組みを10年間続け、将来地域の財産になってほしいと思っています。

 今私は、農業法人「山渡会」に参加して、地域の特産品作りを手伝っています。今年わずかばかりの焼酎を作りました。地域の農家の方々が芋を育て、それを酒造会社に運び、自分たちで「竹迫城」と名前を付け、自分たちで売っています。

 今の農業のあり方はおかしいと思います。自分たちが作ったものに自分たちで値段を付け、仕事の末端で働く人たちの生活を豊かにしなければ本当の豊かさはありえないと思うのです。

 今年、熊本同友会では農業部会、環境部会を立ち上げました。約50名のメンバーが集まり、勉強会や視察を行っています。熊本では2009年に「第39回中小企業問題全国研究集会」(中同協主催)が行われます。私は、この全国大会に併せて「5000本の植林活動」を提案しようと思っています。この取り組みが、将来の地域発展に役立つと信じています。

 自慢話みたいに書いてしまいましたが、中小企業憲章はこんな小さなところからの、地道な取り組みから生まれてくるものだと思います。

「中小企業家しんぶん」 2006年 12月 15日号から

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