中小企業憲章と私

憲章・条例の制定運動で必要なのは「視点」

愛知同友会 政策委員 和田 勝((有)シー・アンド・シー保険サービス社長)


 「中小企業憲章」とは、中小企業に関係する人のみでなく、中小企業というものを国民全体の立場でどう位置づけるかを問う運動・宣言です。また「中小企業振興基本条例」とは、地域経済にとっての中小企業の持つ意義や、中小企業にとって地域とはどういう意味をもち、どう貢献すべきかを問う運動・宣言です。

 愛知同友会では、憲章制定の学習例会を行う際、事前に次のようなレポートを提出します。

 (1)自社を取り巻く経営環境とは、(2)その中で自社はどのような方向性をとるか、(3)上記を実現していく上で、望ましい経営環境とは、(4)「中小企業憲章」に望むこと、の4点です。

 さて当社は、2000年設立の保険代理店です。私たち保険代理店を取り巻く経営環境は、金融ビッグバン、そして日米保険協議の決着を受け、大きく様変わりしました。従来の横並び体質から、本格的な自由化、つまり競争原理が導入されました。

 結果、相次ぐ保険会社の倒産・合併、商品の複雑化、そして保険金不払い騒動まで、全保険会社が横並びというシャレにならないオチまでつきました。私たち保険代理店もそんな経営環境の中、1996年の62万社から2005年には27万社弱にまで激減しています。

 自社では憲章学習運動に倣い、経営環境の認識を社員さんと共有化することから始めました。

 「自社の方向性は?」の論議で、単なる保険販売屋ではなく、私たち代理店が地域に存在する意味と、提供するお役立ちをお客様に伝えていかなければ、自社の存在意義がないことを確認しました。

 しかし、お客様へ多様で良質な金融商品を提供するという大義名分での自由化は、適切なサービスの提供よりも、保険会社主導による代理店の合併促進や専属関係強化といった効率最優先の流れになっています。

 競争原理、勝ち組・負け組、格差社会という言葉は、流行語ではなく、殺伐とした実感を伴って感じます。

 これから進める憲章・条例の制定運動で必要なのは「視点」ではないでしょうか。

 私たちの周りの変化をとらえる「視点」、中小企業の存在意義と責任を自覚する「視点」、良い経営環境とはの理想を見据える「視点」、そして「街のおじちゃん、おばちゃんに分かる言葉で提言していく運動でなければアカン」、愛知の政策協議会のメンバーの発言です。そういった「視点」が大切だと、今、考えます。

「中小企業家しんぶん」 2007年 4月 15日号から

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