中小企業憲章と私

根本的な中小企業政策への近道

東京同友会政策部長 水戸部 良三(水戸部(株)社長)


 中小企業憲章制定がどうしても必要なんだと考えている会員は、東京では残念ながら少数であります。それが証拠に、第16回東京経営研究集会が10月28日、立正大学と共催で開催されましたが、憲章の分科会は一番参加の少ない分科会になってしまいました。

 一番参加者の多かった分科会は、印刷と建設関連の分科会でした。こういう業界の分科会を会員が望んでいたわけで、分科会そのものの企画は成功であったと思います。ただし、それぞれの分科会が本当であれば、憲章や条例に結びつくように設定すべきであり、業界ごとの分科会も来年は憲章・条例と関連づけないといけないと強く思います。

 東京という地域は、大企業の本社の約50%が集中し、製造出荷額や付加価値額でも、大企業と中小企業がほぼ半分ずつになっています。「世界のTOKIO」という経済環境の中で、自社を考えてみても、憲章や条例がなくても十分やっていけるでしょう。

 だからこそ、ほとんどの中小企業は「困った時は業者運動をやれば、何とかなるさ」で、戦後ずっとやってきたのでしょう。しかし、困った時の業者運動は痛み止めにすぎず、結局は今日の状況に至ってしまったわけです。もちろん同友会、商工会議所の提言・活動がその間継続されていましたが、根本的な中小企業政策は導入されず、零細企業の廃業が相次いでいます。

 中小企業憲章や中小企業振興条例の制定は、自社の継続・発展などとは直接的には関係ないと考えているなら、大いに考え違いです。「急がば回れ」のことわざ通り、一番遠回りのようですが、実は一番近道であります。

 日本の80%の就業者の雇用主であるわれわれ中小企業家が、真に生存しやすい税制や民法改正などを実現するための近道こそ、中小企業憲章・条例制定の道であることを、東京の会員に広く訴えていきたいと強く思っているところであります。

「中小企業家しんぶん」 2007年 11月 15日号から

このページのトップへ ▲

同友ネットに戻る