建築確認遅延問題に関する要望・提言

建築確認遅延問題に関する要望・提言
2007年11月7日発表
中小企業家同友会全国協議会
会長 鋤柄 修

 本年6月20日からの改正建築基準法の施行に伴い、着工認可が大幅に遅れ、建設業界が大混乱に陥っています。この問題に関して、当会の各都道府県の中小企業家同友会が緊急アンケートやヒアリングを実施して実態の把握に努め、県などに早急な改善や対応策を要請しております。
 下記の8府県の中小企業家同友会のアンケート(回収総数1,723社)によれば、地域により現われ方に違いがありますが、建設業で5~7割、建設業以外でも2~3割が建築確認遅延問題の影響を「現在、受けている」と答え、「これから危惧される影響あり」という建設業者が6~9割に達する勢いにあるという深刻な事態に至っています。
 記述回答では、「改定の影響で工事の受注ができない。受注できても確認の審査が下りない」「このままでは、建設業は存亡の危機にある」という切実な声が寄せられています。また、「建設業界は景気のバロメーターであり、不動産、金融、資材、物流、素材、雇用など、ほとんどの業界で連鎖効果があり、(今回の建築確認遅延問題が)経済全体に悪影響を与えている」という経済失速の懸念も広がっています。事実、建設業以外の会員からも、「製造業ですが、建築材料(モルタル)の製造を行なっております。7月から9月の売り上げが前年比50%、例年比70%ぐらいで大変落ち込んでおります。建築材料関係の客先や他メーカーも同様の状態であると聞いております」など悪影響が波及している様子がうかがえます。さらに、建設業にとっては資金繰りとともに、「今、確認申請が止まっている物件が一気に動いたとき、人手不足などが深刻になる可能性がある」ことも想定しなければならないなど年度末にかけて不確定な要素を織り込んだ難しい経営の舵取りが迫られています。

○神奈川県中小企業家同友会(10月5日~10月31日実施、回収41社)
 「現在、影響を受けている」(建設業・50.0%、建設業以外・31.0%)
 「これから危惧される影響あり」(建設業・68.4%、建設業以外・45.2%)

○長野県中小企業家同友会(10月24日~11月5日実施、回収131社)
 「現在、影響を受けている」(建設業・62.75%、建設業以外・22.50%)
 「これから危惧される影響あり」(建設業・90.20%)

○愛知中小企業家同友会(9月27日~10月15日実施、回収554社)
 「現在、影響を受けている」(建設業・61.03%、建設業以外・23.17%)
 「これから危惧される影響あり」(建設業・72.07%、建設業以外・35.98%)

○京都中小企業家同友会(10月15日~10月22日実施、回収130社)
 「現在、影響を受けている」(建設業・72.7%、建設業以外・34.2%)
 「これから危惧される影響あり」(建設業・78%)

○大阪府中小企業家同友会(10月5日~10月19日実施、回収182社)
 「現在、影響を受けている」(建設業・53.84%、建設業以外・18.13%)
 「これから危惧される影響あり」(建設業・25.82%「わからない」29.67%、建設以外・21.97%)

○広島県中小企業家同友会(10月12日~10月20日実施、回収201社)
 「現在、影響を受けている」(建設業・56.1%、建設業以外・17.4%)
 「これから危惧される影響あり」(建設業・62.1%)

○香川県中小企業家同友会(10月8日~10月17日実施、回収213社)
 「現在、影響を受けている」(建設業・57.1%、建設業以外・27.3%)
 「これから危惧される影響あり」(建設業・69.7%、建設業以外・48.3%)

○福岡県中小企業家同友会(10月1日~10月29日実施、回収271社)
 「現在、影響を受けている」(建設業・52.3%、建設業以外・24.0%)
 「これから危惧される影響あり」(建設業・64.2%、建設業以外・41.1%)

 以上の状況に鑑み、耐震偽装事件の教訓から安全性の確保を目的とした改正建築基準法の主旨を踏まえつつ、建築確認手続き等に関する円滑かつ柔軟な対応を求めるものです。次の事項に要望をまとめましたので、関係各位の早急な対応を要望します。

(1)今回の建築確認遅延の影響を地域ごと、関連業界ごとに広く、実態調査を行うこと。また、いつ混乱が収束するか、見通しを公表すること。

(2)改正建築基準法の運用に関連して、①確認申請の審査期限を厳守すること、②ピアチェックの対象物件を減らすこと、③現場の工事工程を尊重した変更申請業務にすること、④安全性が低下しない条件で着工後の適合性判定不要の計画変更制度を設けること、⑤過剰な確認申請図書の簡素化、など円滑かつ柔軟な対応に努めること。

(3)運転資金(つなぎ融資)に関して、行政として特別に対応すること。特に、政府系中小企業金融機関の対応に加え、信用保証制度等での積極的な対応を早急に実施すること。
①セーフティーネット貸し付けの適用の拡大
②既往債務の返済条件緩和等の対応

(4)関係部局の人員を増やし、特別体制で処理にあたること。

(5)行政において特別窓口を設け、適切な対応を行うこと。相談体制の周知方にも努めること。

以上