【08.11.20-21】「人が育つ企業と地域をつくる」企業の総合的実践へ~人を生かす経営全国交流会

43同友会から372名が参加

 11月20~21日、「人を生かす経営全国交流会」が、滋賀県大津市にある「びわ湖ホール」および「琵琶湖ホテル」で開かれ、43同友会と中同協から372名が参加しました。

 本交流会は中同協の社員教育委員会、経営労働委員会、共同求人委員会の三委員会が合同で開く初めての交流会です。毎年一回それぞれの委員会が担当して開いていた、「社員教育活動全国研修交流会」「中小企業労使問題全国交流会」「全国共同求人交流会」を、本交流会としてまとめて開き、労使見解(「中小企業における労使関係の見解」、中同協発行パンフレット『人を生かす経営』所収)の精神をもとに新卒採用・社員教育を行う、企業の総合的実践をすすめようというものです。

 大企業が雇用調整を進める中、中小企業は「人を生かす経営で乗り切ろう」との高い志で、全国から集まった参加者は、1日目全体会(基調講演、3委員長問題提起)と分科会、2日目全体会(パネルディスカッション、グループ討論)で熱心に討論、交流しました。

 最初に、地元を代表して蔭山・滋賀同友会代表理事が「このような時代だからこそ、同友会理念と労使見解の精神を生かした経営が望まれている。人材こそ企業の砦(とりで)として、本交流会で学びあいましょう」とあいさつ。

 また、主催者を代表して鋤柄修・中同協会長は、「待ち望んでいた企画。採用・教育のよいサイクルを回し、同友会がめざす本物の経営者となるため、自社の実践を大いに語り合おう」と呼びかけました。

「共に生き、共に育つ~生命(いのち)のきずなを」~大田尭氏による基調講演

基調講演する大田尭氏
 基調講演では、大田尭・東京大学名誉教授が「共に生き、共に育つ~生命(いのち)のきずなを」をテーマに、日常の中での人と人との関係こそ大事であり、違いを認め合い、共に生きる姿勢を持つことの大切さを訴えました。

 氏は「3つのヒント」として、以下の3点について話しました。

 第1に、同友会が言う「経営指針」の中核にある理念は、まさに「共に生き、共に育つ」こと。この実行は今の社会では大変であるが、人間は元来かかわりをせずには生きていけない存在である。人間関係を密にする方向への切り替えが大切。「やはり金だ」となりがちな社会で、同友会はそういう意味で先見の明がある。

 第2に、学習は生きることにつながる。学習権は生存権の一部であり、「教育」は学習の手助けとなるもの。一人ひとりの持っているユニークな学習権の介添えをしていくのが社員教育。社長は演出家でもある。演出はアート、創造の喜びを実感していただきたい。響きあうことが芸術の基本。

 第3に、一人ひとりの生命体の違いを大事に、個人の尊厳である新しい地域づくりは、新たな質の、密度の濃い人間関係を築いていくことを考えながら、人間の連帯を築いていくことが大切である。

 最後に大田氏は、「今のピンチを新しい変革の契機にしていきましょう」と呼びかけました。

「人を生かす経営」へ~3委員長が問題提起

本郷利武・中同協社員教育委員長
 分科会を前に、中同協社員教育、経営労働、共同求人の3つの委員会の委員長は以下のように問題提起しました。

 まず、本郷利武・中同協社員教育委員長が「人は話し合い討論できる存在であり、未来を構想し築く力がある。さらに心で感じたことを表現できる存在。何が起きてもダメージを受けない企業づくり、地域づくりのため、明日を展望できる交流会としましょう」と提起。

大野栄一・中同協経営労働委員長
 次に、大野栄一・中同協経営労働委員長は、「新型複合不況と名付けられた状況の中、いかに社員と外部環境について共通認識を持つのかが問われている。労使見解では経営者と社員の信頼関係こそ大事と説いている。同友会が培ってきた企業づくりの教訓をもとにつくられた企業変革支援プログラムの活用をしながら、労使見解がめざす企業づくりの実践をしていく議論をしていきましょう」と強調。

前田幸一・中同協共同求人委員長
 最後に、前田幸一・中同協共同求人委員長は、「今年度前半は売り手市場、後半は買い手市場となり、高校生の内定取り消しが発生するなど、企業の採用姿勢が問われている。同友会の共同求人活動は25年間に13万人の新卒を採用してきており、地域に人材を残す大きな力となっている。会社を維持発展させようと思えば、採用し教育し、人を生かす経営を実践する必要がある。新卒採用を視野に入れた議論をお願いしたい」と話しました。

「企業の総合的実践」へ向けた報告と議論~6つの分科会

琵琶湖がみえるチャペルを会場に開かれた第6分科会
 3つの委員会が2つの分科会を設営し開かれた6つの分科会では、以下の方々が報告しました。

 【社員教育委員会】やわらぎ住宅㈱代表取締役 山崎裕基氏(滋賀)、㈱テクシード代表取締役 奥河内博夫氏(広島)。【経営労働委員会】㈱ライナーネットワーク代表取締役 安井清吉氏(北海道)、㈱トナミデンタルラボラトリー代表取締役 黒田文彦氏(富山)。【共同求人委員会】コンピュートロニクス㈱代表取締役 渡邊高一氏(東京)、中沼アートスクリーン㈱代表取締役 中沼壽氏(京都)。

「人を生かす経営」パンフレットを参加者全員が持ち込んで討論
 1時間では話しきれないほどの内容が語られた各分科会では、報告を受けて2回にわたるグループ討論を行い、密度の濃い討論と交流が行われました。

あいさつする村田健二実行委員長
 分科会終了後は、午後8時から夕食会が開かれ、村田健二実行委員長があいさつし、赤石中同協会長が乾杯しました。

 夕食会と並行して翌日のパネルディスカッション(各分科会座長がパネリスト)の打ち合わせが別室で行われました。

「人が育つ企業と地域づくりのために」~各分科会座長によるパネルディスカッション

 
 2日目は各分科会座長をパネリストに、大野・経営労働委員長がコーディネーターとして登壇。以下3点の論点をもとにパネルディスカッションしました。

・論点1:厳しい時代だからこそ、企業づくりで大切にしなければならないこと~「中小企業における労使関係の見解」
・論点2:同友会で学んで、企業の総合的実践をすすめるとはどういうことか~経営指針、採用・教育のサイクルはなぜ必要か
・論点3:「人を生かす経営」に対する地域からの期待と、地域とともに「共に人が育つ地域づくり」への取り組み~同友会の出番

 【パネリスト】金森弘和氏(滋賀:副代表理事)、梶原啓子氏(広島:理事)、大久保尚孝氏(中同協:前社員教育委員長)、八嶋 祐太郎氏(富山:理事)、小暮恭一氏(中同協:共同求人副委員長)、上野修氏(中同協:前経営労働委員長)

 
 100分にわたるパネルディスカッション終了後、企業の総合的実践へ向けた取り組みに向けてグループ討論しました。

「人を生かす時代」へアピール採択

 最後に、「人を生かす経営」の課題を次の3点にまとめ、この総合的実践の必要性を会の内外に訴えた、「人を生かす経営全国交流会」としてのアピールを、丸毛・滋賀同友会副代表理事が読み上げ、採択しました。

第1に、社員とともに自社の存在意義を問い直し、明確な経営指針を持ち、指針にそって実践し、新たな仕事づくりに挑戦していくこと。
第2に、労使が共に育ちあい、信頼関係を確立し、社員一人ひとりが誇りと喜びを持って、自主的・主体的に働くことで自らを成長させ、社会的使命感を持って働くことを通じて、地域貢献できる社風を確立すること。
第3に、若者が将来に希望が持てる雇用の場を提供し、行政・教育機関と連携し、企業間ネットワークを強化し、持続可能な社会づくりの輪を広げていくこと。

 「今こそ、この厳しい経営環境に経営者が社員とともに立ち向かい、正規雇用を維持し、新たな仕事づくりをしていくため、『人を生かす経営』を同友会活動の全ての柱に据えて学び実践していくとともに、本交流会のアピールを全中小企業経営者、地域づくりや人育てにかかわるすべての機関に発信し、共に『人を生かす』時代をつくっていくことを呼びかけます」。(アピール文から)