政策・主張

2002年度国の政策に対する中小企業家の重点要望・提言

 この10年間にアメリカやヨーロッパの先進諸国は経済社会における中小企業の果たす役割を的確に評価して中小企業重視へと経済政策の政策転換を行っています。わが国では1999年に中小企業基本法が改正されたにもかかわらず未だ政策転換は遅れています。日本経済の再活性化にあたって中小企業の重要な役割を正当に積極的に評価して、経済政策を従来型の補完的役割から中小企業振興を経済政策の柱の一つとする中小企業重視へと抜本的に転換させることを提言します。

1.必要な資金が円滑に回る国民と中小企業・地域に優しい金融システムの構築を

  1. 「貸し渋り」「貸し剥がし」がなく国民と中小企業・地域が健全かつ社会的に望ましいかたちで存続していくために、日本の金融システムを1.金融機関の公共性を維持させる、2.金融機関と借り手の取引慣行の歪みを是正する、3.現行の裁量型金融行政を利用者参加型金融行政に、転換させなければならない。そのために、「円滑な資金需給」、「利用者利便」、「経営の健全性」の3つの視点から必要な情報を収集して金融機関の活動を評価することを監督官庁に義務づける、さらにその評価と判断理由をインターネット等利用者が入手しやすい形で公開することを義務づける「金融アセスメント制度」を早期に法制化すること。
  2. 金融庁の各金融機関に対する「検査マニュアル」は中小企業金融を人為的に不安定化させている。したがって、中小企業向け融資の場合には、金融庁は中小企業の実情に沿った別の基準の「マニュアル」を速やかに作成し、それを適用すること。
  3. ペイオフ解禁は、中小企業にかかわりの深い地域金融機関の預金の流失を促進させ、そのことが原因となって中小企業への融資の引き上げ、事業資金の中断など、中小企業の存続を人為的に断つ可能性が高いばかりでなく、地域金融機関の存立を危うくする懸念があるから、2002年4月施行の預金保険法の実効猶予措置を直ちに宣言すること。
  4. 金融機関の合併・破綻によって生じる取引先中小企業に対する事業資金のパイプを細くすることなく、資金供給の継続を保証する法制化措置を緊急にとること。
  5. 民間金融機関および政府系金融機関(信用保証協会を含む)のいずれにおいても融資審査にあたっては、物的担保優先主義を改めて、経営指針の確立、経営者の経営能力、企業の技術力、開発力、市場性、社風等を総合的に評価するシステム(総合評価システム)への転換を早急に図られたい。

2.地域経済の活性化と地域雇用の維持による景気回復策

  1. 中小企業が地域で取り組んでいる新規事業、事業転換、グループ化、ネットワーク化などのさまざまな「新しい仕事づくり」――それらは市場としては小さいが市場を深く掘り起こす多種多様な事業であり、地域経済を活性化させ国民生活を豊かにすること、地域雇用を維持し拡大することに結びついている――を有効な景気回復策として位置づけて、積極的に支援すること。
  2. 公共投資を、大手ゼネコン中心の国家的大型プロジェクト方式による従来型公共事業から、環境にやさしく地域を豊かにし、地域雇用に果たす役割も大きい、生活基盤整備・社会福祉重視・環境保全重視の生活密着型公共投資へ抜本的に転換させること。
  3. さらに、国民の消費回復策の根源的政策として、1.雇用不安の解消策、2.国民の将来不安を解消する夢がもてる社会保障制度(介護保険、年金等)の構築を国の景気対策の重点に据えて実行すること。

3.市場創造と経済再活性化を支える税制

  1. 地方税である法人事業税においては付加価値基準の外形標準課税方式導入の動きが進んでいるが、これは赤字法人のみならず長びく不況下にある多くの中小企業の税負担能力を超えるものである。このままでは社会的な歪みだけでなく、日本経済の活力削減につながるから導入を中止すること。
  2. 日本の税制は個々の特別措置で調整をはかる方式が取られているが、その姿勢を改めて応能負担原則を税制の基本部分で貫くこと。とくに法人税は応能負担原則に基づいて累進的多段階の税率――所得1500万円まで15%(資本金1億円未満)、所得5000万円まで25%、所得5億円まで34.5%、所得5億円以上40%――に変更すること。
  3. 中小企業の事業承継については、1.相続税の基礎控除額を大幅に引き上げること、2.事業用資産については、事業を継承するという条件の下で事業承継猶予制度を設けて10年以上事業を継承した場合一定額を免除すること、3.自社株式評価には企業の利益水準をベースにした収益還元方式による評価方法を導入すること。
  4. 固定資産税を非現実的な地価公示価格に連動させることから、税負担能力に対応した収益還元による評価方式に改めること。
  5. 消費税の税収は今や基幹税化しているが、景況の低迷、投資意欲の低迷、金融不安・雇用不安が進行している。こうした状況下で消費税の税率を引き上げることは、景況に確実に大きなダメージを与えるから、消費税率の再引き上げは行わないこと。

4.取引の適正化による公正競争と既存企業への積極的支援

  1. 市場経済の下では中小企業の市場参入の機会が公平に保証されなければならない。それには中小企業に不当な不利益を与える不公正取引(とくに大企業と中小企業との間における)に対して市場のルールを守るべく具体的な「厳正・迅速」な政策的対応が不可欠である。そのために、1独禁法(独占禁止法)の「厳格な運用」あるいは独禁法の新たな強化をはかり、独禁法を遵守させること。2公正取引委員会の権限の強化と司法(裁判所)機能の強化および独禁法の私訴規定のさらなる充実を図って、ルール違反防止と不公正取引の是正・防止を厳正に実施すること。3経済産業省設置法でうたっている「市場における経済取引に係る準則の整備」を取引適正化のために行うこと。
  2. 中小企業重視への姿勢変化には少なくとも以下のことが求められる。1.中小企業の圧倒的多数を占める既存企業のさまざまな「経営革新」の取り組みに対して中小企業基本法の具体化として、中小企業の実態に即した支援を積極的に行うこと。2.中小企業にかかわる予算は中小企業の評価にふさわしいレベルに拡充すること。3.中小企業の範囲規定に「独立性」基準を厳格にして、形式的には中小企業であるが実質的には大企業保有企業を中小企業の範囲に入れないこと。4.地域経済の活力を再構築するために、権限とともに現在国にある財源を適切な形で自治体へ委譲する措置をとること。5.政策の具体的立案にあたっては、住民や中小企業の現場の声を正当に反映させるために当事者の参画を積極的に図ること。6.上記の改善を率先して実行するために担当省庁の政策担当者を数年間は同一セクションに専念させる人事的措置をとること。

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