政策・主張

「2004年度国の政策に対する中小企業家の要望・提言」にあたって

 私たち中小企業家同友会全国協議会[略称・中同協]は、1969年(昭和44年)設立以来、自助努力による経営の安定・発展と、中小企業をとりまく経営環境を是正することに努め、1973年(昭和48年)以降毎年、国の政策に対する要望・提言を、政府各機関とすべての政党および国会議員にお伝えし、懇談を積み重ねて参りました。

 日本経済は、政府の「景気底打ち」宣言にもかかわらず、中小企業景気は悪化の度合いを深めており、多くの中小企業が経営危機に直面する可能性があります。連鎖倒産を回避し、地域経済の崩壊を防ぐためにも緊急かつ抜本的な経済政策が切望されています。

 この10数年間にアメリカやヨーロッパの先進諸国は経済社会における中小企業の果たす役割を的確に評価して中小企業重視へと経済政策の政策転換を行っています。2000年にはEUが「欧州小企業憲章」(リスボン憲章)を採択し、「小企業は、ヨーロッパ経済のバックボーンである。主要な雇用の源であり、ビジネスの発想を育てる大地である」と宣言しています。また、OECDも同年に採択した「中小企業政策に関するボローニャ憲章」で、中小企業が普遍的な存在として重要であることを認識した政策を行うことを強調しています。

 わが国では1999年に中小企業基本法が改正されたにもかかわらず未だ政策転換は遅れています。中小企業政策は、ベンチャー企業の育成や創業だけにとどまらず、健全な企業家精神を持つ多様で多数の中小企業の「経営革新」等の自主的経営努力を着実に実らせるために、現実的かつ適切にバックアップすることに力を入れなければなりません。

 私たちは、中小企業経営を守る政策対応を強く要望するとともに、日本経済において地域に根ざした中小企業が果たしている役割を正当に評価し、従来型の補完的役割という政策比重の置き方を抜本的に転換させ、中小企業政策を産業政策の柱の1つとする姿勢に転換させることを提言するものです。

 これまで同友会は、産学官連携の実践など地域振興への寄与にも微力ながら一定の役割を果たして参りました。私たちは、自らの基本姿勢・行動指針の確立に努め、中小企業家としての社会的責務を果たし、日本経済と中小企業が発展できる環境をつくるために下記のような経営環境・金融環境を求め、行動するものです。関係各位のご協力、ご支援を要望します。

中小企業が求める経済社会の構想と中小企業家同友会の基本姿勢

1、私たちが望む中小企業が発展できる経営環境

  1. 日本経済が地球環境に配慮した「維持可能な成長」をめざす中で、景気回復を実現すること。人間らしく豊かに暮らせる国民経済を充実させ、中小企業が国民とともに繁栄できる日本経済をめざすこと。
  2. 大企業中心の産業政策ではなく、中小企業重視を産業政策のなかにきちんと据え、国民経済を積極的に支えていく存在として中小企業を位置づけること。また、中小企業の取引・競争上の不利是正と健全な競争ルールが確立されること。
  3. 企業の社会的責任を自覚し、健全な企業家精神を発揮して経営をしている中小企業の自助努力が生かされる、中小企業の自立的発展を促進するような経営環境を整備すること。
  4. 国の権限や財源を自治体に委譲し、地方分権によって地域経済の活力を地域の中から築いていくことが出来るようにすること。産業空洞化をくい止めながらアジア各国と共存するためにも、日本の特性を生かした魅力ある地域づくりと地域産業起こし・仕事づくりを推進すること。
  5. 中小企業が参入可能な環境保全・自然再生型の産業システムの形成をめざすこと。中小企業の知恵と人材を生かせる環境保全・自然再生型の公共事業を拡大すること。
  6. 新しい時代の人づくりを積極的に行うこと。政府の唱える「人材大国」を文字通りのものとするために、人間らしく育つための教育・人材育成環境の重視と生涯関わることのできる職業能力開発の基盤整備を進めること。
  7. 金融アセスメント法(仮称)を制定し、円滑な資金供給と地域・中小企業にやさしい21世紀型金融システムの構築をめざすこと。

2、中小企業家同友会の5つの基本姿勢・行動指針

  1. 私たちは、厳しい経営環境の中でも企業の継続発展に全力を尽くし、雇用確保と魅力ある企業づくりに取り組みます。今後の景気後退の嵐を乗り切る経営指針・戦略と社内体制の構築に総力を傾けつつ、大学や金融機関等との連携、行政施策活用などの総動員で企業を守り、新しい市場創造に挑戦します。
  2. 私たちは、経営指針の確立と全社的実践に努力し、21世紀型企業((1)お客様や地域社会の期待に応えられる存在価値のある企業、(2)労使の信頼関係が確立され、士気の高い企業)づくりをめざします。特に、企業活動の「血液」である金融を確保するためにも、経営指針を通じて金融機関の理解を深めながら、金融アセスメント法(仮称)の制定と地域での金融機関との連携を強化します。
  3. 私たちは、企業活動を通じて納税者としての社会的責任を果たすとともに、税金の適正な使い方や行政のあり方にも関心を持ち、提言・行動します。とりわけ、公共投資を従来型公共事業から、生活基盤整備・社会福祉・環境保全・防災重視の生活整備型・自然再生型の公共投資へ抜本的に転換させることを求めます。
  4. 私たちは、企業の社会的責任を自覚し、環境保全型社会づくりに取り組みます。環境負荷の少ない企業活動を実践するとともに、エコロジーとエコノミーの統一による仕事づくりや地域づくりを行政・市民団体等と協力しながら挑戦します。
  5. 私たちは、経営者自らの教育を含めた21世紀の最も貴重な資源である人づくりと次世代を担う若者が働いて誇れる職場と社会の環境づくりに努めます。

 以上の認識に基づいてここに政策要望・提言を提出する次第です。

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