92号(2010年7~9月期)

見出景気再後退局面入りの可能性大し

報告

速報

 2010年7~9月期の景況は、前年同期比の業況判断DIで見ると引き続き改善を見せ、水面に達した(0)。リーマン・ショック後の急後退をみて、2009年第1四半期に(△59)と底を打って以来、1年半をかけて水面に達したのは急回復といえる。業況判断の内訳を見ると、「好転」(33.7%)、「横ばい」(32.4%)、「悪化」(33.8%)とほぼ数字は一致している。かなり珍しい現象といえるが、今までと違う点は比較的「横ばい」の数値が低い点にある。このことが意味するものは何か、それが今後の中小企業の景況に影響するだろう。業種別でもすべての業種で改善がみられるものの水面上に出ているのは製造業のみである。地域別でもプラスとなっているのは関東、北陸・中部、近畿と大都市を抱える都市圏のみである。製造業がなお業況の改善を牽引しているものの、業況、売上、経常利益の次期見通しは製造業を含め厳しい見通しを示し、先行き再後退の可能性を見せている

 2010年7~9月期の業況判断DI(「好転」―「悪化」割合)は2010年4~6月期に比べ4ポイント好転し0と水面に達した。前期に引き続き製造業が13→16と好転を牽引している。しかし、業況水準DI(「良い」-「悪い」割合)は△32→△18と改善しているものの依然マイナスの側に止まっている。業況判断を業種別に見ると、建設業(△20→△15)、製造業(△13→16)、流通・商業(△12→△9)、サービス業(△9→△1)と改善しているように見える。しかし、次期見通しは建設業(△15→△23)、製造業(16→4)、流通・商業(△9→△19)、サービス業(△1→△4)といずれも再悪化を予想している。

 地域別の業況判断DIでは、近畿(9→5)を除き改善が見られる。規模別業況判断DIでは、20人未満(△11→△6)、20人以上50人未満(△5→△1)、50人以上100人未満(7→11)、100人以上(15→22)と全規模で好転を見せているものの、50人を境にプラスとマイナスが分かれ規模による格差がさらに先鋭化してきた。以上の規模階層でプラスに転じての好転ぶりが目立つと同時に、規模による格差がはっきり表れた。

 売上高DI(「増加」-「減少」割合)は△6→1と水面に出る改善を見た。これは2007年1~3月期以来3年半ぶりのことである。建設業(△26→△14)、製造業(11→13)、流通・商業(△11→△7)、サービス業(△10→5)と改善をみている。地域別では北海道・東北(△20→△6)、九州・沖縄(△10→△12)は依然マイナスにあるが、他の地域はプラスを維持かプラスに転換している。

 経常利益DI(「増加」-「減少」割合)は△7→△1までの改善を見た。製造業(10→12)がプラスであるほかは依然マイナスの域を脱し切れていない。ここでも製造業が他を牽引する。採算水準DI(「黒字」-「赤字」割合)のプラスは4期目、今期5→15とプラス幅を増進した。業種別では建設業(△17→△14)を除き、プラスを維持している。

 売上・客単価DI(「上昇」-「下降」割合)は△34→△29と多少改善を見せ、仕入単価DI(「上昇」-「下降」割合)は10→6とその差は縮まったが、製造業の仕入単価DI(25→14)で上昇幅が急速に落ちてきたのは材料価格の高騰とともに、円高の影響が出始めたためとも思われる。

 雇用面でも改善が進み、正規従業員数DI(「増加」-「減少」割合)は△1→△1と現状維持、臨時・パート・アルバイト数DIは△7→2と増加に転じ、所定外労働時間DI(「増加」-「減少」割合)は△12→△2と大幅残業減となった。人手の過剰感DI(「過剰」-「不足」割合)は20→7と人手の過剰感が収束に向かっている。

 設備投資の実施割合は26.9%→29.6%と30%の大台に迫るところまできた。しかし実施方法では現物購入(67.0%→61.6%)が減り、リース(13.5%→20.1%)の比率が増えるなど、力強さに欠ける。ただし、設備の過不足感DI(「過剰」―「不足」割合)は2→0へと過剰感は消えた。景況を見ながら、設備投資の実施を考慮する経営者の姿が見えてくる。

 業況判断など変化方向の数値は改善を見せたものの、業況水準ではいまだ深い水面下にあり、エコ減税等の施策終了による需要鈍化、アジア向けで活性化してきた輸出鈍化等から先行き見通しは全業種で悪化が予想されている。今後、出荷の鈍化や減少があると、後退局面入りの可能性もある。

*本文中特に断りのない限り、業況水準以外は前年同期比
*詳細は2010年10月30日発行のDOR92号をご覧下さい

[調査要領]
調査時     2010年9月5~15日
対象企業   中小企業家同友会会員
調査の方法 郵送により自計記入を求めた
回答企業数 2,432社より963社の回答をえた(回答率39.6%)
(建設162社、製造業321社、流通・商業293社、サービス業177社)
平均従業員数 役員を含む正規従業員数38.5人
臨時・パート・アルバイトの数34.5人