調査・研究

中小企業景気の回復、息切れの兆し
DOR100号(2012年4〜6月期景況調査)速報

 東日本大震災から1年5か月が経とうとしている。前年の同期が大震災後のボトムであっただけに、前年同期に比べた改善感は顕著である。しかし前期比の業況水準の改善は遅れている。さらに震災後の回復をけん引してきた建設業が後退したことや設備投資の力強い拡大が見られないこともあり、順調な回復過程にあるとは言えない。次期以降は業況、売上、経常利益DIで後退を見込んでおり中小企業景気の回復は息切れの兆しが表れている。欧州債務危機再燃への不安、円高の継続、大企業の海外展開、エネルギー政策の不透明化、消費税・政局の不安定化により先行き不透明感が増している。

 2012年4〜6月期の回答結果は、業況判断DI(「好転」―「悪化」割合)は1〜3月期の2から7ポイント改善して9となった。しかしこれは大震災後のボトム期との比較である。直近の景況水準を示す業況水準DI(「良い」−「悪い」割合)は△13→△8といまだに水面下にある。業況判断DIを業種別に見ると建設業が8→△2と水面下に潜り、他の3業種の改善傾向と対照的な動きとなった。サービス業は1→21と20ポイントもの改善を見せた。次期以降は、業況判断DIは今期の9から4へ、次々期は2と後退を見込んでいる。業況水準、売上高、経常利益DIも後退を見込んでおり、先行きの不安心理が明らかである。

  前年同期比の売上高DI(「増加」−「減少」割合)は5→11、同じく前年同期比の経常利益DI(「増加」−「減少」割合)は△2→5、前期比の採算水準DI(「黒字」−「赤字」割合)は23→24とともに改善した。4業種別に見ると、売上高、経常利益DIともに建設業のみが悪化した。ここでも建設業の不調が目立つ。売上高DIを規模別に見ると、50人以上100人未満が17→11と悪化した一方、20人以上50人未満が7→19と12ポイント、20人未満も△3→3と6ポイントの改善で小規模企業が健闘している。次期以降は、売上高DIが11→6、経常利DIが5→3と悪化を見込み、回復傾向は続かないと見られている。

  収益性に関わる指標を見ると、売上・客単価DI(「上昇」-「下降」割合)は△17→△15とわずかな改善にとどまり、依然マイナス側にある。一方、仕入単価DI(「上昇」−「下降」割合)は23→12と下降傾向が明らかになった。これにともない売上・客単価DIとの差は40→27と縮小した。次期以降、仕入単価DIは12→9と下降の継続を見込む一方、売上・客単価意DIは△15→△16と再悪化を見込んでいる。採算向上のカギは売上・客単価の改善の如何にかかっている。

  雇用面では、正規従業員数DI(「増加」−「減少」割合)は5→9と増加、臨時・パート・アルバイト数DIは10→7と減少だった。所定外労働時間DI(「増加」−「減少」割合)は6→△1と減少している。人手の過不足感DI(「過剰」−「不足」割合)は△12→△5とこの間強まりつつあった不足感が一服した。建設業では1〜3月期に△32だったが今期は△13と不足感は後退した。一方、設備投資では設備の過不足感DI(「過剰」―「不足」割合)が△10→△11と不足感を継続している。しかし投資実施割合は30.4%→30.0%と設備投資の目安となる30%台に一気に突入するような力強さは見られない。実施目的で増えているのは維持補修(28.7%→37.7)で、ここにも先行き不透明感が現れている。

  金融面では、短期資金の借入金利(「上昇」−「低下」割合)が△15→△13と2ポイント上昇、長期資金の借入金利(「上昇」−「低下」割合)が△19→△16と3ポイント上昇した。短期資金の借入難度(「困難」−「容易」割合)は△30→△25、長期資金の借入難度(「困難」−「容易」割合)は△26→△25と容易側で推移している。

  経営上の問題点では「同業者相互の価格競争の激化」が、業種別では建設業(60.2%→75.0%)、地域別では北海道・東北(51.1%→59.1%)と近畿(48.5%→61.8%)で増加が顕著である。経営上の力点では「新規受注(顧客)の確保」(62.7%)と「付加価値の増大」(49.3%)の指摘が多い。「財務体質強化」(27.6%)の指摘割合も増えてきている。金融円滑化法延長期限切れにともなう金融環境の変化に警戒を強めながら、新規開拓と付加価値増大の努力が続けられている。

  大震災不況を乗り越えつつある中小企業景気を息切れさせないため、政治・経済の先行き不透明感を払しょくすることが求められている。同時に中小企業にとっては、自社の存在意義と方向性を明確にし、社員との高度な信頼関係によって強靭な経営体質をつくることが重要になっている。

*本文中特に断りのない限り、業況水準以外は前年同期比
*詳細は2012年7月31日発行のDOR100号をご覧下さい

[調査要領]
調査時    2012年6月5〜15日
対象企業   中小企業家同友会会員
調査の方法 郵送により自計記入を求めた
回答企業数 2,364社より941社の回答をえた(回答率39.8%)
         (建設159社、製造業313社、流通・商業294社、サービス業169社)
        平均従業員数 役員を含む正規従業員37.3人
        臨時・パート・アルバイトの数33.0人

PDF資料はこちら(PDF 311KB)

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