調査・研究

中小企業、景気後退のリスク高まる
DOR101号(2012年7〜9月期景況調査)速報

 東日本大震災後のボトム(2011年4〜6月期)以降、改善を続けてきた中小企業景気だが今期は黄色信号が灯った。業況、売上、採算DIがいずれも後退し、次期、次々期も後退を見込んでいる。特に中国リスクが顕在化した影響を受け、製造業での後退が顕著である。欧州債務危機の影響、アジア需要の減退、円高の継続、中国リスクの顕在化、エネルギー政策の不透明化、政権交代期の政局不安定化などの要因から、景気の先行き不透明感・不安感が一層増大している。来年3月の中小企業金融円滑化法延長終了後の対応を含め、景気・経営環境のリスクをしっかり見つめた経営が肝要となる。

 前年同期比の業況判断DI(「好転」−「悪化」割合)は9→2、売上高DI(「増加」−「減少」割合)は11→5、経常利益DI(「増加」−「減少」割合)は5→0といずれも震災後初の後退となった。これら前年同期比の指標だけでなく、前期比で足元の景況感を示す業況水準DI(「良い」−「悪い」割合)も△8→△10と悪化していることから、中小企業景気は後退しつつあると見える。業種別に業況水準DIを見ると建設業が△19→0と大きく改善、サービス業が5→5と維持した一方、製造業が△9→△22、流通・商業が△9→△13と悪化した。製造業が大きく悪化したのは中国リスク顕在化の影響とみられる。

  同じく業況水準DIを地域経済圏別に見ると、北海道・東北が△5→△11、関東が△11→△5、北陸・中部が△5→△6、近畿が△24→△23、中国・四国が2→△12、九州・沖縄が△2→△4である。関東が改善した一方、中国・四国の悪化が目立つ。近畿はマイナス20台を脱しきれず厳しい状況である。業況水準DIの企業規模別では、20人未満が△18→△11、20人以上50人未満が6→△11、50人以上100人未満が△7→△9、100人以上が7→△5である。20人以上50人未満と100人以上では各10ポイント以上下落してマイナス側に落ち込んだことが注目される。

 次期以降(全業種)は、業況判断DIが2→△6、売上高DIが5→1、経常利益DIが0→△3とさらなる後退を見込んでおり先行きへの不安感が存在する。業況水準DIでも△10→△13と悪化を見込んでいる。

 収益性に関わる指標では、回答企業の実力を示す採算水準DI(「黒字」−「赤字」割合)では25→26と黒字側で維持しており経営努力が反映している。これを業種別にみると建設業は4→15、製造業は22→18、流通・商業は31→31、サービス業35→44であり、製造業で悪化しているものの全体として横ばいを維持している。仕入単価DI(「上昇」−「下降」割合)は12→9と下降傾向が一層明らかになっている。売上・客単価DI(「上昇」−「下降」割合)は△15→△15とマイナス側で低迷しており収益改善を本格的に実現する上での課題となっている。次期以降、仕入単価DIは9→9、売上・客単価DIは△15→△14とそれぞれ現状維持を見込んでいる。

  雇用面では、正規従業員数DI(「増加」−「減少」割合)は9→3と低下、臨時・パート・アルバイト数DIは7→7と維持だった。いずれも製造業では12→5、9→5と顕著な低下である。所定外労働時間DI(「増加」−「減少」割合)は△1→△2とほぼ変わらず、人手の過不足感DI(「過剰」−「不足」割合)は△5→△7とやや不足感が増した。

  一方、設備投資では設備の過不足感DI(「過剰」―「不足」割合)が△11→△9とやや不足感が緩んだものの不足感は継続している。しかし投資実施割合は30.0%→30.0%と変わらず、30%での頭打ち感がある。実施目的では維持補修の回答が目立ち、積極的な設備投資が行われている状況にはなく、縮み志向が見られる。金融面では、各指標はほぼ変化なく推移した。ただし今後は、来年3月で中小企業金融円滑化法の延長終了を迎えることから、資金繰りのリスクに十全な備えが必要となる。

  経営上の問題点では「同業者相互の価格競争の激化」が57.5%でトップ、「民間需要の停滞」が50.3%で続いている。「従業員の不足」、「熟練技術者の確保難」という人員確保の指摘割合も増加が続いている。経営上の力点では「新規受注(顧客)の確保」(62.2%)と「付加価値の増大」(48.4%)の指摘が多い。同時に「社員教育」(42.3%)の努力が続けられている。経営指針の実践による社員教育と付加価値の創造、そして地域と顧客から支持される企業づくりの意義が一層鮮明になっている。

*本文中特に断りのない限り、業況水準以外は前年同期比
*詳細は2012年10月31日発行のDOR101号をご覧下さい

[調査要領]
調査時    2012年9月5〜15日
対象企業   中小企業家同友会会員
調査の方法 郵送により自計記入を求めた
回答企業数 2,368社より924社の回答をえた(回答率39.0%)
         (建設165社、製造業314社、流通・商業271社、サービス業168社)
        平均従業員数 役員を含む正規従業員37.3人
        臨時・パート・アルバイトの数29.2人

PDF資料はこちら(PDF 338KB)

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