調査・研究

明るさやや増すも、景況感格差が拡大、先行き不安定
DOR99号(2012年1〜3月期景況調査)速報

 東日本大震災の発生から1年が経ち経営への影響は薄れている。経営への影響を尋ねたオプション項目では、震災3カ月後には57.5%にのぼった「影響がある」の回答は、今期、その半分の水準の21.6%となった。大震災直後(1ヶ月以内)と比べた売上高増減DI(「増加」―「減少」割合)も震災3カ月後は△25だったのが今期は14と、減少から増加に転じている。震災で延期・保留された需要の回復にともない、景気はやや明るさを増してきた。しかし小規模企業層の停滞など回復には格差があり、加えて、欧州・米国の不安定な経済状況、円高・原油高、消費税増税など先行き不透明な要素を背景に次期以降は停滞が見込まれている。2012年度はかつてない不安心理を抱えた要注意年度となる。

  2012年1〜3月期の回答結果は、業況判断DI(「好転」―「悪化」割合)は2011年10〜12月期の△2から4ポイント改善して2となった。しかしこれは東日本大震災発生直後の時期との比較(前年同期比)のため注意を要する。直近の景況水準を示す業況水準DI(「良い」−「悪い」割合)はむしろ△7→△13と6ポイント悪化しており、次期はさらに△15への悪化を見込んでいる。景況は震災前水準に回復してきたものの回復の勢いは弱まっており、年中盤にかけて停滞が見込まれている。業況水準DIを業種ごとにみると建設業は△6→△9、製造業は△7→△17、流通・商業は△9→△13、サービス業は△5→△11と全ての業種で悪化したが、とりわけ製造業での10ポイント悪化が注目される。

  前年同期比の売上高DI(「増加」−「減少」割合)は0→5、同じく前年同期比の経常利益DI(「増加」−「減少」割合)は△7→△2とともに5ポイント改善した。しかし売上高DIを企業規模ごとで見ると、20人未満が△7→△3、20人以上50人未満が3→7、50人以上100人未満が6→17、100人以上が18→25と規模の大きい企業ほど回復を鮮明にしている。小規模企業層の回復は遅れており、規模間での格差があることが注目される。また売上高DIは次期、5→4と停滞することが見込まれている。

  収益性に関わる指標を見ると、売上・客単価DI(「上昇」-「下降」割合)は△18→△17と1ポイントの改善にとどまった。一方、仕入単価DI(「上昇」−「下降」割合)は24→23と高止まりしている。売上・客単価DIとの差は40と依然として大きな幅がある。原油や鉄鋼など原材料・素材価格が上昇している一方で小売価格はほとんど上昇が見られず、採算向上のネックとなっている。

  雇用面では、正規従業員数DI(「増加」−「減少」割合)は5→5と変化なしで、臨時・パート・アルバイト数DIは8→9と微増だった。所定外労働時間DI(「増加」−「減少」割合)は2→6と増加している。人手の過不足感DI(「過剰」−「不足」割合)は△9→△12と不足感が鮮明である。特に建設業で△24→△32と不足感が増している。一方、設備面では設備の過不足感DI(「過剰」―「不足」割合)が△9→△10とやや不足感が増した。投資実施割合は30.4%と設備投資の目安となる30%台に1期ぶりに戻った。ただし投資内容は機器設備や情報化設備が中心で本格的な生産拡大局面と言えない。

  金融面では、短期資金の借入金利(「上昇」−「低下」割合)が△12→△14と2ポイント下降、長期資金の借入金利(「上昇」−「低下」割合)が△19→△19と横ばいで推移した。短期資金の借入難度(「困難」−「容易」割合)は△23→△30、長期資金の借入難度(「困難」−「容易」割合)は△△24→△26と容易側で推移している。

  経営上の問題点では「同業者相互の価格競争の激化」(55.0%)と「民間需要の停滞」(48.2%)の指摘が多く、同時に「人件費の増加」(14.4%)、「従業員の不足」(10.3%)など雇用に関わる項目の割合が増えている。経営上の力点では「新規受注(顧客)の確保」(62.6%)と「付加価値の増大」(53.0%)の指摘が多い。「社員教育」(42.3%)の指摘割合も増えてきている。激しい価格競争の下、社員教育で競争力を高めながら新市場を開拓する努力が展開されている。

  経済・政治の先行き不透明感が増している下、中小企業経営者は景気の明るさを実感できずにいる。

*本文中特に断りのない限り、業況水準以外は前年同期比
*詳細は2012年5月1日発行のDOR99号をご覧下さい

[調査要領]
調査時    2012年3月5〜15日
対象企業   中小企業家同友会会員
調査の方法 郵送により自計記入を求めた
回答企業数 2,372社より950社の回答をえた(回答率40.0%)
        (建設172社、製造業317社、流通・商業282社、サービス業172社)
        平均従業員数 役員を含む正規従業員36.1人
        臨時・パート・アルバイトの数33.0人

PDF資料はこちら(PDF 281KB)

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