調査・研究

アベノミクス効果 中小に及ばず
―円安先行で採算伸びなやみー
DOR103号(2013年1〜3月期景況調査)速報

 一部の大企業景況の上向きと対照的に中小企業景況は後退が続いている。売上・業況・採算DIは、いずれも水面下で悪化、特に製造業での悪化が大きい。円安の影響で仕入単価が大きく上昇し、採算が圧迫されている。次期以降に改善への「期待感」が存在する一方、製造業などで業界の先行き不透明感がぬぐえず、設備投資に踏み切れない状況もある。アベノミクス効果が中小企業景況に及んでいるとは現況ではいえない。むしろ円安先行による利益圧迫との攻防が当面する課題となっている。

 前年同期比の業況判断DI(「好転」−「悪化」割合)は△5→△10、売上高DI(「増加」−「減少」割合)は△4→△9、経常利益DI(「増加」−「減少」割合)は△4→△12といずれも水面下で後退した。前期比で足元の景況を示す業況水準DI(「良い」−「悪い」割合)も△7→△17と深く水面下に潜った。業況判断DIを業種別に見ると建設業11→△3、製造業△16→△24、流通・商業△4→△5が悪化、サービス業のみ△4→2と改善した。製造業はこの9ヶ月間で40ポイント近く後退し、全体の悪化に影響している。これまで復興需要の影響を受けていた建設業も一服した状況である。

 同じく業況判断DIを地域経済圏別に見ると、関東が△11→△11、近畿が△16→△16、九州・沖縄が2→2と変化がなかった一方、北海道・東北が9→△5、北陸・中部が△17→△20、中国・四国が7→△1と悪化した。関東、近畿、北陸・中部と大都市部を含む経済圏はそろって深い水面下にある。企業規模別では、20人未満が△4→△5、20人以上50人未満が△3→△13、100人以上が△2→△10と悪化した。50人以上100人未満は△19→△19と変化がなかった。20人以上50人未満の悪化が目立つ。 次期以降(全業種)は、業況判断DIが△10→3、売上高DIが△9→7、経常利益DIが△12→2とそろって改善を見込んでいる。業況水準DIも△18→△8と水面下ながら改善見込みである。次期以降への期待感が高まっている。

   しかし実際の改善に至るには障壁が存在する。仕入単価DI(「上昇」−「下降」割合)が6→23と大きく上昇して採算圧迫リスクが高まっている。売上・客単価DI(「上昇」−「下降」割合)が△19→△12と改善したが、この努力を上回る仕入コストの上昇である。仕入単価DIを業種別に見ると建設業が12→27、製造業が8→23、流通・商業が0→23、サービス業が10→20といずれも二桁以上の上昇である。この結果、採算水準DI(「黒字」−「赤字」割合)は33→15と黒字企業が後退している。仕入単価DIは次期は23→36とさらに上昇が見込まれる。特に建設業は27→48と警戒感が高まっている。

 雇用面では、正規従業員数DI(「増加」−「減少」割合)は3→7と増加、臨時・パート・アルバイト数DIは6→3と減少した。所定外労働時間DI(「増加」−「減少」割合)は△2→△1と微増、人手の過不足感DI(「過剰」−「不足」割合)は△10→△17と引き続き不足感が増している。

 一方、設備投資では設備の過不足感DI(「過剰」―「不足」割合)は△13→△9と減少したが、なお不足感は存在する。投資実施割合は29.1%→31.8%と30%を超え、次期計画割合も32.9%とじわじわ上昇している。しかし投資目的をみると、増えているのは維持補修(29.1%→35.2%)であり、さらに設備投資しない理由では「自業界の先行き不透明」が増加している。「バタバタと協力会社が潰れ新規設備投資どころか国内で仕事を続けられるのか不安」(精密機械部品製造業)の声もある。

 経営上の問題点では「同業者相互の価格競争の激化」が49.6%、「民間需要の停滞」が40.0%と続く。仕入単価上昇に対応して「仕入単価の上昇」が12.2%→22.9%、「仕入先からの値上げ要請」が2.1%→7.2%と上昇した。経営上の力点では「新規受注(顧客)の確保」(62.8%)と「付加価値の増大」(47.7%)の指摘が多い。「社員教育」(43.6%)の努力も強まっている。同友会型企業づくりで全社一丸となり新規受注を開拓し、価格競争から抜け出す企業戦略が展開されている。

 債権市場などはバブル時並みの活況を呈しているが、実体経済とは乖離していることが浮き彫りとなった。中小企業経営の実態を踏まえ、中小企業憲章に基づく経済政策の実施が望まれる。

*本文中特に断りのない限り、業況水準以外は前年同期比
*詳細は2013年4月30日発行のDOR103号をご覧下さい

[調査要領]
調査時    2013年3月5〜15日
対象企業   中小企業家同友会会員
調査の方法 郵送により自計記入を求めた
回答企業数 2,397 社より962社の回答をえた(回答率40.1%)
       (建設162社、製造業319社、流通・商業294社、サービス業179社)
        役員を含む正規従業員35.8人
        臨時・パート・アルバイトの数29.0人

PDF資料はこちら(PDF 502KB)

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