調査・研究

水面下の改善あるも、先行き不安定感ぬぐえず
DOR104号(2013年4〜6月期景況調査)速報

 円安などの影響を受けて大企業の景気回復が進んでいると報じられているが、中小企業の回復は遅れている。水面下で回復の動きはあるものの2012年10-12月期の水準に戻したにすぎない。建設業、サービス業で回復の動きがあるが製造業はなお水面下で低迷している。円安進行による仕入高が採算を圧迫しており、販売価格に「ほぼ転嫁できている」企業は9%にとどまる。先行き不透明感から設備投資が躊躇されており、景気上向き期待はあるものの実体経済の根底は依然厳しい。次期は△2→6と改善を見込むものの業種ごとの差が大きい。中小企業景気はまだ「自律回復」の入り口に立っていない。

 前年同期比の業況判断DI(「好転」−「悪化」割合)は△10→△2、売上高DI(「増加」−「減少」割合)は△9→△2、経常利益DI(「増加」−「減少」割合)は△12→△5といずれも水面下で改善した。足元の景況を示す業況水準DI(「良い」−「悪い」割合)は△17→△9と改善に遅れがある。業況判断DIを業種別に見ると建設業△3→12、製造業△24→△22、流通・商業△5→△1、サービス業2→16である。建設業とサービス業が10ポイント以上改善したが、製造業と流通・商業はわずかな改善である。製造業は今期△24→△5への改善が見込まれていたが、実際は△22と期待が大きく裏切られた。

 業況判断DIを地域別に見ると、関東が△11→6、近畿が△16→△1、九州・沖縄が2→11と一定の改善。北陸・中部でも△21→△15、中国・四国は△1→1とわずかではあるが改善。他方、北海道・東北は△5→△10と唯一悪化した。当地での震災復興需要の影響が弱まっているようである。企業規模別に見ると、20人未満が△5→0、20人以上50人未満が△13→△6、50人以上100人未満が△19→△7、100人以上が△10→0と改善した。20人未満と100人以上が10ポイント改善と、改善状況は斑模様である。
 次期以降(全業種)は、業況判断DIが△2→6、売上高DIが△2→8、経常利益DIが△5→0とそろって改善を期待している。業況水準DIも△9→△3と水面下ながら改善見込みである。

  こうした景気改善への期待感が存在する一方、円安進行による仕入コスト増の影響が現れている。仕入単価DI(「上昇」−「下降」割合)は23→37と上昇。次期も46と上昇見通しである。円安進行による仕入単価への影響を尋ねた設問では45%で既に影響があり、そのうち77%で予定利益が減少し、10%で赤字となっている。また影響がある企業のうち、販売価格に「ほぼ転嫁できている」のは9%にとどまり「ほとんど転嫁できていない」は、59%にのぼる。円安進行は多くの中小企業に利益低下をもたらしている。売上・客単価DI(「上昇」−「下降」割合)は△12→△5と改善し、懸命の経営努力が展開されているが、それを大きく上回る仕入コストの上昇である。

 雇用面では、正規従業員数DI(「増加」−「減少」割合)は7→7と横ばい、臨時・パート・アルバイト数DIは3→5と微増した。所定外労働時間DI(「増加」−「減少」割合)は△1→△4と減少、人手の過不足感DI(「過剰」−「不足」割合)は△17→△11と不足感の伸張が一服した。

 設備投資では設備の過不足感DI(「過剰」―「不足」割合)は△9→△9と引き続き不足感が存在する。しかし投資実施割合は32%→29%と再び30%を下回った。しかも投資目的は、維持補修(35%→37%)が中心であり本格的な設備投資とはなっていない。製造業の設備投資しない理由を見ると「自業界の先行き不透明」が40%→50%に急増している。取引企業の海外進出や後継者の問題に加え、昨今の仕入高も加わり、業界全体の先行き不透明感に懸念が強まっている。

 経営上の問題点では「同業者相互の価格競争の激化」が49%、「民間需要の停滞」が38%と続く。「仕入単価の上昇」が23%→30%、「仕入先からの値上げ要請」が7%→10%と上昇した。経営上の力点では「新規受注(顧客)の確保」(62%)と「付加価値の増大」(50%)の指摘が多い。「社員教育」(44%)の努力も強まっている。商品・サービスの付加価値を高めるための短期戦略としても、事業承継を成功させるための中長期戦略としても社員教育が一層意識され取り組まれている。

 “アベノミクス”による今後の改善に期待感もあるが、実体経済は製造業の低迷に見られるように楽観できない。経営環境を一層、注視・警戒することが求められる。

*本文中特に断りのない限り、業況水準以外は前年同期比
*詳細は2013年7月30日発行のDOR104号をご覧下さい

[調査要領]
調査時    2013年6月5〜15日
対象企業   中小企業家同友会会員
調査の方法 郵送により自計記入を求めた
回答企業数 2,413 社より956社の回答をえた(回答率39.6%)
(建設166社、製造業304社、流通・商業296社、サービス業176社)
        役員を含む正規従業員35.8人
        臨時・パート・アルバイトの数35.3人

PDF資料はこちら(PDF 548KB)

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