調査・研究

中小企業はすでに“アベノミクス不況”のさなか
〜中小企業のダイナミクス(躍動力)が日本経済をたてなおす〜
DOR110号(2014年10〜12月期景況調査)速報

 2014年7〜9月期の国内総生産(GDP)改定値は前期比0.5%減、年率換算で1.9%減と、多くのエコノミストの見込みとは裏腹に2四半期連続のマイナス成長となった。GDPの重要な構成部分である中小企業への注目が欠かせない。消費増税後の個人消費の低迷と、1ドル120円近辺への円安進行が中小企業経営にとって二重苦である。エネルギー価格や原材料等価格が高止まりして付加価値が低迷。消費増税分と合わせた物価上昇を充分に価格転嫁するのは至難の業である。とくに小規模企業で困難な状況で、中小企業内で景気二極化が懸念される。7〜9月期V字型回復の期待は外れ、10〜12月期も回復は見られない。さらに新年は悪化見込みと、中小企業は景気後退が続いている。中小企業の回復なくして日本経済の回復はあり得ない。

 前年同期比の業況判断DI(「好転」−「悪化」割合)は△5→△7、売上高DI(「増加」−「減少」割合)は4→△1、経常利益DI(「増加」−「減少」割合)は△5→△6と若干の低下である。足元の景況を示す業況水準DI(「良い」−「悪い」割合)は△6→△1と改善した。前年同期と比べた指標と、足元の景況を示す指標が逆の傾向を示す特異な状況である。経営者の多くは、前期よりはましになっているが季節性の要素が働いているという見方である。現状は「回復」といえる状況ではなく、消費増税不況が続いているといえる。

 業況判断DIを業種別に見ると、建設業が△1→△11、製造業が△4→△4、流通・商業が△12→△9、サービス業が△1→△6と建設業が大きく悪化した。流通・商業のみ改善したがなお深いマイナス側である。地域経済圏別では、北海道・東北が△15→△19、関東が△6→1、北陸・中部が△2→△5、近畿が△10→1、中国・四国が△3→△11、九州・沖縄が4→△8と、関東と近畿がプラス側に改善、それ以外の地域は悪化と、地域による差が鮮明である。企業規模別では20人未満は△9→△13、20人以上50人未満は△5→△3、50人以上100人未満は△1→△5、100人以上は14→8と、20人未満の悪化が目立つ。小規模ほど景気後退感が強い。

 次期以降は、業況判断DIが△7→△11、売上高DIが△1→△5、経常利益DIが△6→△10、業況水準DIが△1→△9とそろって悪化する見込み。前年同期比の指標だけでなく、足元の景況を示す業況水準DIも大きく悪化している。年初の景気悪化が濃厚である。業況水準DIの次期見通しを業種別に見ると、建設業が13→5、製造業が△6→△14、流通・商業が△5→△11、サービス業が△5→△12と、全業種で悪化を見込んでいる。唯一プラス側の建設業も8ポイント減と悪化する見込みで、年初に緊張感がある。

 採算面では、一人あたり付加価値DI(「増加」−「減少」割合)は△9→△7とやや改善したが消費増税前の水準(プラス8)にはまだ遠い。仕入単価DI(「上昇」−「下降」割合)は54→50と下降。次期も50→40と下降見込みだがなお高い水準である。売上・客単価DI(「上昇」−「下降」割合)は11→10と経営努力が持続している。価格差は縮まる見通し。金融面では長短の借入難度DI(「困難」−「容易」割合)は「容易」側で水準を維持している。資金繰りDI(「余裕有り」−「窮屈」割合)は2.9%とプラス側(余裕有り)でやや拡大した。

 雇用面では、正規従業員数DI(「増加」−「減少」割合)は14→12、臨時・パート・アルバイト数DIは7→6と微減。所定外労働時間DI(「増加」−「減少」割合)は1→5。人手の過不足感DI(「過剰」−「不足」割合)は△32→△32と強い不足水準が続いている。建設業で不足感が強い。設備投資では設備の過不足感DI(「過剰」―「不足」割合)は△15→△14と不足感が減少する一方、投資実施割合は32%→34%と増加した。投資目的は、能力増強が39%→39%と横ばい、維持補修は29%→28%と微減だった。投資しない理由で、「資金がない」が9%→9%と横ばいの一方、「採算の見込みがない」が12%→13%と微増した。設備投資が本格化する兆候は見られない。

 経営上の問題点では「民間需要の停滞」が増えて36%となり「同業者相互の価格競争の激化」(36%)にならんだ。「仕入単価の上昇」が33%で続いている。「従業員の不足」(25%)と「人件費の増加」(22%)もこの間高い水準が続いている。経営上の力点では「新規受注(顧客)の確保」(58%)と「付加価値の増大」(48%)が減少した一方、「人材確保」(32%)、「社員教育」(43%)、「新規事業の展開」(21%)が増加した。新市場の開拓が意識されて人材確保と社員教育の努力が展開されている。

 「売上強化を図っていますが市場が縮小しており対策が追いつかない状態。アベノミクスは大企業だけはよいでしょうが私どもにとっては最悪(北海道、流通・商業)」。全国津々浦々の中小企業の経営努力を、日本経済回復の推進力として位置づけられるかどうか、安倍政権の経済政策が問われている。

*本文中特に断りのない限り、業況水準以外は前年同期比
*詳細は2015年1月31日発行のDOR110号をご覧下さい

[調査要領]
調査時    2014年12月1〜10日
対象企業   中小企業家同友会会員
調査の方法 郵送により自計記入を求めた
回答企業数 2,486社より1,031社の回答をえた(回答率41.4%)
(建設196社、製造業335社、流通・商業300社、サービス業190社)
        役員を含む正規従業員34.93人
        臨時・パート・アルバイトの数27.70人

PDF資料はこちら(PDF458KB)

このページの先頭にもどる

携帯用二次元バーコード
携帯対応について

更新情報RSS