ためらいあるも障害者雇用に関心
DORオプション調査より

 中同協では、障害者の雇用促進に取り組んでいますが、会員企業における障害者雇用の現状を把握しようと、1~3月期の同友会景況調査(DOR)のオプション項目として3月半ばにアンケートを実施(回答企業922社)。このほど結果がまとまりましたので、紹介します。

雇用企業は2割弱

 障害者雇用の有無では、「雇用している」18・3%、「雇用したことがある」17・9%、「雇用したことはない」が63・8%でした。(図1)

図1 障害者雇用の有無

n=818(nは回答総数)

DOR65号オプション調査図表1

 業種別では、製造業で「雇用している」(27・4%)がもっとも多く、「雇用したことがある」(23・8%)をあわせると、回答企業の約半数に雇用経験があります(図2)。さらに細かく20業種分類でみると、製造業の中で比較的雇用が多いのが「印刷・同関連産業」、「食料品等製造」となっています。規模別では、規模が大きくなるにしたがい、雇用企業の割合も高くなっています。(図3)

図2 障害者雇用の有無(業種別)

n=873

DOR65号オプション調査図表2

図3 障害者雇用の有無(規模別)

n=818

DOR65号オプション調査図表3

雇用に踏み切れない理由

 現在障害者を雇用していない企業の「雇用に踏み切れない理由」(複数回答)をみると、「過去に雇用したことがある」企業と「雇用したことがない」企業では、違いが出ています。(図4)

図4 雇用経験の有無と雇用に踏み切れない理由

過去に雇用経験有り n=116 / 雇用経験無し n=474

DOR65号オプション調査図表4

 雇用経験のある企業では、「雇用するだけの仕事がない」(37・1%)がもっとも多く、「仕事の内容が危険で適さない」(23・3%)、「受け入れる施設・設備がない」(22・4%)が続き、4番目に「過去に雇用で失敗」(19・0%)があがっています。

 これに対し、雇用経験のない企業では、「障害者に適した仕事がわからない」(30・4%)や「障害者との接点がない」(19・6%)が雇用に踏み切れない理由の比較的上位にあげられており、障害のある方たちとの交流を深めたり、何らかの支援体制などがあれば、雇用の可能性のあることが伺えます。雇用経験のある企業で「過去に雇用で失敗」も、支援体制次第では変わる可能性もあります。

支援措置の有効性

 障害者の採用予定の有無では、「ある」企業が9・9%に対し、「ない」と明確に回答した企業は49・2%と約半数。一方、「障害者就労を支援するジョブコーチ等の体制があれば検討」(5・9%)、「職場実習の受け入れは検討したい」(4・9%)と、少ないながらも、すぐに雇用には踏み切れなくても、障害者雇用への関心のある企業が1割強ありました。(図5)

図5 採用予定の有無等

n=811

DOR65号オプション調査図表5

 障害者雇用の支援措置としては、障害者の働く現場で就労を手助けする「職場適応援助者」(ジョブコーチ)の派遣や、障害者の本格的な雇用にはまだためらいのある企業には「障害者試行雇用事業」(トライアル雇用)などがあり、こうした制度の周知徹底とその活用が望まれるところです。

 なお、障害者の採用予定の「ある」企業割合を20業種分類でみると、「ある」企業が20%台となっているのが、「情報通信業」と「印刷・同関連産業」で、とくに情報通信業は、現在雇用している企業割合は9・3%と少ないものの、採用予定では積極的な姿勢がうかがえます。

障害者の雇用率は

 障害者雇用促進法では、民間企業における障害者(身体・知的障害者)の法定雇用率を1・8%とし、常用労働者数56人以上の企業には、その規模に応じた雇用義務があります。2002年12月発表の厚生労働省の統計によれば、雇用義務のある企業の障害者の実雇用率は1・47%で、法定雇用率を下回っています。では、会員企業での雇用率はどうなっているかを比較してみました。

 なお、この比較にあたっては、今回の調査がDOR調査の一部として行われ、統計で使われている常用労働者数についての回答を求めなかったため、これに近いと思われる正規従業員数で算出。また、統計と同様に、法的雇用義務のある知的・身体障害者のうち重度障害者は2倍に換算。さらに、実雇用率の計算では、現在、建設・運輸など危険業務のある業種などでは、一定の除外率が業種によって設けられ、雇用義務が軽減されていますが、国の方針でもこの除外率設定を縮小していく方向であることから、会員企業については業種別の除外率は算定しないで雇用率を算出しています。

 したがって、厚労省の統計との厳密な比較はできませんが、正規従業員数が明記された有効回答企業数852社を対象に、障害者の雇用率を算出した結果は、以下の通りです。

 まず、852社での総正規従業員数は3万2947人で、雇用されている障害者数は、身体212人(うち重度54人)、知的110人(うち重度8人)、重複5人(うち重度1人)、障害者雇用率は1・18%(精神障害者6人を含めると、1・20%)となっています。

 このうち、雇用義務のある正規従業員数56人以上の企業(175社、総正規従業員数1万8215人)だけで見ると、1・26%(同1・28%)となっています。雇用義務のない55人以下企業(677社、1万4732人)では1・08%(同1・10%)と、雇用率は若干低くなっています。

 会員企業だからとくに雇用率が高い、との結果は出ませんでしたが、雇用義務のない小規模企業でも、業種によっては障害者雇用を支えていること、さらに採用意欲もうかがえるなど、雇用には直接つながっていなくても障害者雇用への関心が少なくないことのうかがえる結果となりました。

「中小企業家しんぶん」 2004年 5月 15日号より