信用保証制度、利用状況調査
DORオプション調査より

中同協は、2月に「信用補完制度縮小の検討の中止を求める要望書」(「中小企業家しんぶん」2月15日号に掲載)を各政党及び中小企業庁へ提出し、要請懇談を行っています。そこで、要望の裏づけとなる同友会会員の信用保証制度の利用状況を調べるため、DOR(同友会景況調査)の2005年1~3月期調査でオプション調査(回答企業数1005社)を実施しました。

信用保証協会付融資利用57%超える
制度縮小に強い危惧

6割近くが保証協会付き融資を利用

 調査項目は、「貴社は金融機関による信用保証協会付き融資を利用していますか」と「前問で『はい』の場合、貴社の金融機関からの借入総額のうち、信用保証協会付き融資の割合はどのくらいですか」の2問です。

 集計結果によれば、「信用保証協会付き融資の利用の有無」は、全国平均で「はい」が57.4%、「いいえ」が37.9%、「不明」が4.7%でした。(図1)

DOR69号オプション調査図表1

 ただし、別の設問で「借入金の有無」を聞いており、「無し」つまり無借金の回答が17.2%あります。したがって、「いいえ」と「不明」の合計、42.6%から無借金企業を引いた割合、25.4%程度が金融機関からプロパー融資のみを受けている企業群と推計されます。

同友会企業は利用に積極的

 保証協会付き融資利用に「はい」と答えた割合は、業種別ではほとんど差が出ませんが地域経済圏別で見ると、「関東」の69%が他地域を10数%ポイント以上も上回って高い比率になっています。これは、一番低かった「北海道・東北」(50.3%)と18.7%も開きがあります。正規従業員規模別で見ると、「20人未満」で63.7%と高く、規模が大きくなるにつれて低くなり、「100人以上」では37.3%でした。

 さらに、「関東」の中では、東京(回答企業数77社)で「はい」と応えた割合が71.4%と高く統計調査と同様の傾向が見られます。全国で信用保証協会の保証を利用している企業は2003年度で、186万社で保証利用率(企業数ベース)は39.8%(中小企業金融公庫「平成15年度政策評価報告書」)。東京では28万社、保証利用率(同)が50.3%で、全国より10.5%ポイント上回っています。

 以上見たように、一般企業の平均値に比べると、同友会企業は全国で17.6%ポイント、東京で21.1%ポイントも比率が高く、信用保証協会付き融資の利用により積極的である姿勢がうかがえます。

保証協会付き融資「100%」に見る地域差

 「借入総額に占める信用保証協会付き融資の割合」の分布を見ると、「10%未満」が13.8%、「10%以上50%未満」42.3%、「50%以上100%未満」35.3%、「100%」で8.6%。「100%」は、信用保証協会付き融資に完全に依存している企業であり、業種別で「建設業」が11%とやや高く、地域経済圏別では、「九州・沖縄」が12.4%、「関東」で11.9%と高めです。

 もちろん、信用保証協会付き融資の割合は、保証を受ける企業の財務体質だけでなく、その地域の信用保証協会の保証姿勢などによっても大分違ってきます。興味深いことは、「100%」依存が北海道(回答企業数95社)でゼロ、広島(回答企業数76社)で2.2%であること。信用保証協会付き融資に依存しない企業が多い側面と地元保証協会の姿勢の反映もありそうです。また、東京は「100%」が12.7%と高い水準にある一方、「10%未満」も25.5%と高い割合を占め、二極化の傾向を示しています。(図2)

DOR69号オプション調査図表2

資金的余裕の度合いに相関

 「信用保証協会付き融資の利用」をDORの他の設問と関連させて分析すると、「業況判断」の好転・悪化、「売上高」の増加・減少と、融資利用企業では、あまり違いは生じません。ただし、「業況水準」では「良い」(25.7%)より「悪い」(43.7%)、「資金繰りの状況」では「余裕あり」(27.1%)より「窮屈」(41%)と回答する融資利用企業の割合が高くなっており、この設問に関しては資金的余裕の度合いに相関する傾向が見られました。

 また、長期資金の借入先金融機関別では、利用している割合は、「信組等」80%、「信金」73.1%、「地銀」68.5%、「第二地銀」64.9%、「都銀」54.5%の順番。短期資金でも同様の傾向でした。

危惧される信用補完制度縮小に対する取り組みの強化を

 以上見たように、同友会会員は、信用保証協会付き融資の利用に積極的です。また、保証協会付き融資に「100%」依存して資金調達している層も全国平均8.6%存在し、信用補完制度縮小がそのような層の資金調達を困難にする可能性が懸念されます。今回の調査の記述回答では信用補完制度縮小に対して強く危惧(きぐ)する声も出されています。

 現在、中小企業政策審議会の「信用補完制度のあり方に関する検討小委員会」は、制度見直しに着手し、信用補完制度縮小の検討の他、信用補完制度の運用改善による利便性向上や金融機関との適切な責任分担のあり方などについて議論が進められており、近々取りまとめる予定です。中同協は五月下旬、「2006年度国の政策に対する中小企業家の要望・提言」を各政党・各省庁に提出懇談し、信用保証制度問題でも働きかけを強める予定です。

「中小企業家しんぶん」 2005年5月 5日号より