青年経営者全国交流会第2分科会の報告(要旨)

社員と創る“第二創業”への夢
人と車の絆をつなぐ企業づくり
(株)ヴィ・クルー 社長 佐藤 全氏(宮城)

 9月に山口で開かれた第35回青年経営者全国交流会の第2分科会で行われた(株)ヴィ・クルー社長、佐藤全氏(宮城)の報告概要を紹介します。

——————————————————————

 私の好きな言葉に、「Be daring Be first Be different ~勇気を持って、だれよりも先に人と違ったことをする」という言葉があります。そんな思いで社員と共に挑戦し続けてきた取り組みついてお話しします。

絶望の中でも語り続けた夢

 父の経営する(株)オートパルは、1983年2月に設立した会社で、社員数45名、業務内容はバス、乗用車の車両販売と車体整備(板金・塗装・電装)、製品開発・販売、解体、及びパーツの販売をやっていました。

 私が入社した当時は、倒産寸前でした。年商以上の設備投資をして東日本で一番大きなバス専門の修理工場を建設したことが原因でした。それでも、「何がなんでもよい会社をつくりたい。3年後に東北一の会社にしよう。どんなに厳しいことがあってもおれは逃げない。絶対によい会社にしてみせる」と、社員の前で宣言し、徹底的に社員に夢を語りました。

「お客様はだれか」を問い続け危機脱出

 当時の現場は、敷地面積では東日本最大を誇っても、年間2~3台しか仕事が入ってこない、仕事の質も悪い、社員はあいさつもなく、しゃべりながら仕事をして夕方5時半には帰るという状況でした。社員が誇りを持って仕事ができる環境づくりが自分の仕事だと考え、取り組んできました。

 クレーム時には、「失敗は成功の種」だとその場でクレーム会議を開き、1つ1つの仕事を積み上げていきました。また、常に「わが社のお客様はだれか?」と問いかけ、「バス会社・ディーラーも大切なお客様だが、バスに乗る人の立場になって考えよう」と確認しました。

 ありがたいことに当社のファンも増え、債務超過を脱出したのはこのころです。何より「つぶれそうな会社だったおれたちでも、やればできるのだ」という自信が社員に生まれたことが非常に大きなことでした。
同友会と出合い経営指針成文化

 やがて東北・東日本でトップシェアをとるまでになり、エリア拡大か、他地域への進出か、と今後の方向性が見えなくなった時、出合ったのが同友会でした。翌年、同友会の「第15期経営指針を創(つく)る会」を受講し、経営指針を成文化しました。

 成文化して感じたことは、価格決定権の必要性でした。一修理工場からメーカーへ、(1)人、車、地球へ元気を与えられる、(2)一生使い続けられる安心を創る、(3)再び生まれ変われる循環を創る、という3つの定義で、メーカーを目指す決意をします。

 そんな時、現場で路肩灯(巻き込み防止のため、後ろのタイヤを照らす装置)を目にします。これは鉄製で腐食しやすく、電球の玉切れが多い消耗品でした。これを腐らず、玉切れが起こらない製品にするにはどうしたら良いかと考え、周りからは無理だと言われましたが、どうせなら自分が作ると一念発起し、製品開発に没頭していきます。

 三次元設計、光学、材料など一から勉強し、2年間かけて、鉄を樹脂に、電球をLED(発光ダイオード)に変えた従来の電球の3割増の照度の「SHINEMARKER」を完成させました。当時、自動車部品のLED照明器具としては初めての製品でした。

新たな可能性を追求して分社化

 これをきっかけに、新たな可能性を追求していこうと、(株)オートパルを車両販売部門(バス、小型車両の販売・整備)と、(株)ヴィ・クルーのアフター部門(車体整備、製品開発・販売、リサイクルパーツ販売)に分け、27名の社員と分社しました。この27名は、ほぼ10年間新卒で採り続けてきた社員で、平均年齢28歳という非常に若い現場となりました。

 会社再建中でも新卒採用を続けてこなければ、現在の展開はありませんでした。現在、この2社は経営理念を共有し、私は(株)オートパルの非常勤取締役を兼ねています。

人・車・地球を元気にするメーカー

 経営理念ができたことで、自社の事業定義が「人・車・地球を元気にするメーカー」へと変化し、次のようなさまざまな事業展開が生まれてきました。

(1)製品開発・販売事業。路肩灯をはじめ、サイドマーカー、車外灯など、長く使用でき、最終的に資源が循環できることが開発コンセプトです。

(2)リサイクルパーツ販売事業。環境面から見ると、日本は資源のない国です。バスは乗用車と違い、非常に高価で、限界まで使用した後は、スクラップするか、海外へ輸出するかという状況です。バス会社から見ると、規制緩和による運賃の価格競争の激化で、安全面にコストをかけられない状況があります。当社のネットワークを生かし、これらを何とか解決したいと事業を立ち上げました。

(3)Bto Bオンライン決済によるインターネットショッピングモール事業。信販会社をはじめ数社と取り組む事業で、(1)1つのサイトで小売と卸売りが可能、(2)法人名義で分割での支払いが可能、(3)信販会社と共同の取り組みで貸し倒れが無いことが特徴です。

 バス会社の経営が厳しい中、24時間どこでもネット上でリサイクルパーツを分割払いで購入、修理ができればバスを止めずに済みます。修理工場から見ても、新しい仕事が生まれます。これも日本で初めての取り組みで、今後、金融決済の革命になっていくと思います。

 経営理念を追求していくことで、環境保全にもつながり、安心した社会をつくれると考えています。

経営者の責任は夢の持てる会社をつくること

 売上を伸ばすことだけでは目的は小さい。その先に理念が必要です。また、夢を持って成長していきたいと思っている人は、つぶれそうな会社には来ません。そうした中でも入社し、今まで頑張ってくれた社員に本当に感謝しています。経営姿勢を客観的に見つめ、自社がお客様・業界・地域にとって必要とされる会社になっているかを考えていくと、やはりよい会社をつくっていくしかないのです。

 私の夢は、現在働いている社員の子どもたちと一緒に働くことです。親の仕事を見てヴィ・クルーで働きたいと言ってもらえるような会社を、社員と一緒につくっていきたいと思っています。

【会社概要】
創業 2006年
資本金 980万円
社員数 24名
業種 自動車整備、部品の開発・販売、リサイクル部品の販売など
所在地 白石市斎川字伊具田
TEL 0224-24-3511
URL http://www.vi-crew.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2007年 10月 25日号から