人が島をつくり島が人を育てる (有)日間賀観光ホテル 社長 中山 勝比古氏(愛知)

地域おこし活動の実践事例(中同協第38回全研分科会より)

 3月に宮城で行われた第38回中小企業問題全国研究集会。地域からの中小企業への期待が高まる中、今回、初めて「地域おこし活動の実践事例」という課題別テーマが設けられました。その中から、第13分科会の報告概要を紹介します。詳細は、『中同協』第80号をご覧ください。

若者が流出する中で

 高度成長期に第1次産業が疲弊する中で、漁業中心であった日間賀島(ひまかじま)も若者が島を出て行かざるを得ない状況がありました。そこで漁業者は冬場の収入源として海苔(のり)養殖を始め、これが新たな仕事づくりの第一歩となり、過疎化は止まります。また日間賀島漁協は片名漁協と提携し、魚市場を設立、近代化資金制度の活用で造船を奨励しました。さらに日間賀島漁協は、主婦の働き場所を観光業に求めて、海水浴場、島1周道路、港の拡張、下水道事業など、島のためにハード施設の事業を展開して観光業の支援をしてきました。

日間賀の魅力とは

 観光業者は「漁師のために何ができるか」を考え、島らしい魅力づくりを展開していきます。島外企業との連携とキャッチフレーズで「多幸の島」、「ふぐの島」など次々とビジネスを起こしていきました。「ふぐの島」は大企業の名古屋鉄道(株)との連携です。高付加価値商品の企画を、1年がかりで採用までこぎ着けました。

 当時はこの地方では、「ふぐ」を食べる習慣があまりなく、日間賀島で水揚げされた「ふぐ」は鳥羽を経由して下関に行き、全国に出回っていました。始めは鳴かず飛ばずでしたが、一気に軌道に乗りました。当初は3年ほど、下関唐戸魚市場(株)社長の松村久さん(山口同友会会員)と最高の料理を作られる方のおふたりに、「ふぐ料理」を教えに来ていただきました。

島の収支を黒字に

 始まりは個人の人の縁ですが、その心を動かしたのは「島の共生の精神」といえます。初年度には17軒で始めた「ふぐ」料理は、翌年には60軒の民宿も全部取り組みを始めました。そして講習会を開き、末代までこれで食べていこうと調理技術の標準化を図りました。海水浴客が減っている今、「ふぐ」料理がなかったら日間賀島は今ごろ過疎化の一途をたどるところでした。

 漁業と観光業が“想(おも)いを共有化”して仕事づくりをして来た原点は、「島の収支を黒字に」という考え方です。観光業は外貨を稼ぎ島の中で消費するという、地域における利益循環システムが存在しています。1人勝ちではダメで、地域活性化は地域経営の黒字化をめざすことなのです。

 経営が厳しくて地域の活動に参加できないというのはむしろ逆で、そんな時こそ地域の活性化に取り組んだ方が、経営はうまく行くのではないでしょうか。

(「同友Aichi」5月1日発行より転載)

会社概要

設立 1992年
資本金 1800万円
社員数 6名(パート・アルバイト25名)
業種 旅館業・売店
所在地 知多郡南知多町日間賀島下海59-60
TEL 0569-68-2211
http://www.himakakankou-hotel.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2008年 7月 15日号より