【2009全国広報・情報化交流会・パネル討論より】愛知同友会の広報・報道・情報の三位一体活動を語る

企業家たちのたたかいを伝え広げる―情報創造はわれわれの手で

 「情報創造は我々の手で~知恵と勇気の湧く広報活動とは」をテーマに「2009全国広報・情報化交流会」が10月22~23日、名古屋で開かれました。2日目には、愛知同友会が取り組んでいる「広報」「報道」「情報」の三位一体活動について、パネル討論が行われました。同友会運動が対外広報そのものとしつつも、運動の発展に伴って「必然的に」発展してきた広報活動が生き生きと語られました。その模様を紹介します。

<コーディネーター> 中同協広報委員長 加藤 昌之氏((株)加藤設計社長)
<パネリスト>
愛知同友会広報部長 宇佐見 孝氏(宇佐見合板(株)社長)
愛知同友会前報道部長 舟越 信三氏((株)ニュータス・名東支社副支社長)
愛知同友会情報部長 浅井 章博氏(アルファフードスタッフ(株)社長)

同友会運動の発展に伴い、必然的に生まれてきた広報・報道・情報の三位一体活動

加藤 私は、愛知同友会の広報委員会に長年携わってきましたが、愛知だけでなく、中同協広報委員会に参加する中で全国からもたくさんのことを学んできました。同友会の良さは、全国で学び議論でき、自らを変えていけることです。

 今日は、愛知での機関紙「同友あいち」を担当する広報部、対外広報とホームぺージ「Ainet」担当の報道部、会内情報の一元化や会内グループウエア「あいどる」のソフト面を担当する情報部の三位一体の活動を紹介します。まずは、広報・報道・情報の3部門の全てを責任者として経験されてきた前・報道部長の舟越さんからお願いします。

舟越 私は1987年2月に入会し、すぐに広報委員になりました。広報委員会は飲むのだけが楽しい委員会というのが、最初の印象でした。3年目で委員長になりました。まず、それまでは事務局が作っていた機関紙「同友あいち」を、「自分たちの機関紙を自分たちで作ろう」と委員会を改革しました。

 地区から1人ずつ広報委員を選び、自ら取材し、同友会理念からどうなのかといった観点からも書けるよう、勉強もしてもらいました。地区の役員にも広報委員になってもらい、委員会で学んだことを各地区に持ち帰って反映してもらったり、地区の例会のつくり方の標準化につとめてきました。4年間委員長を務めたあと、対外広報(現・報道部)の仕事が与えられました。93年、中部経済新聞から1ページ割くので、同友会の記事を書いてほしいと依頼があり、2年半の間、2カ月に1回取材して書きました。

 92年、愛知同友会設立30周年を迎え、3つのセンター構想が生まれました。その1つが、同友会を情報発信基地にしようという情報センターでした。まず、対外向けのホームページ「Ainet」(アイネット)を立ち上げました。その管理を対外広報が担当することになりました。それが現在の報道部の前身です。

 では、対外広報として何を情報発信していくのか、と考えました。対外的に打って出る武器がいる。同友会運動そのものがいいものでないと発信できません。そうやって厳選しながらホームページでさまざまな情報を発信していきました。一番脚光を浴びたのは、貸し渋りの実態調査結果の発表でした。

 ホームページをよく見ているのは、役所と学校です。求人やインターンシップなどでは、学生もよく見ます。マスコミが注目し始めると、同友会だけでなく、会員企業も経営をしっかりやっていないといけないということになってきます。

 「Ainet」の中には、各地区や支部の動きなどのページもあったのですが、地区ごとにアンバランスが生まれてきます。そういった問題を解消しようと、各地区のホームページ担当者による交流会も開いてきたのですが、やはり会内向けと対外広報を分ける必要があるということになり、会内向けとして、グループウエア「あいどる」を立ち上げました。そして、その管理を担当する部門として、情報部が生まれたのです。

 このように、広報部、報道部、情報部の三位一体組織は、同友会運動の発展に伴って必然的に生まれてきたものなのです。

会と会員間をつなぐ「あいどる」 同友会運動のデータベース化も

浅井 会内グループウエア「あいどる」は、2003年4月から本格的活用が始まりました。まず、理事から使い始めました。各地区では、それまでファックスでやりとりしていたものから、いきなり「あいどる」を使え、コンピューターを使えと言われても、そう簡単なことではありません。情報化推進委員が「あいどるクラブ」というものを作り、その普及に務めました。電話で説明しても、よくわからない、ということで、会社に直接出かけていって、パソコンの操作までしました。やがて、便利だからと定着していきました。

 単に例会案内を流し、出欠をとるだけでなく、ファックスとはちがった付加価値をつけていこうと、例会報告や参加者の思いや反応も載せるなど、行事活動記録を残していくことにしました。各地区が独自に作るページも作りました。

 会内でしか見ることができないことから、逆に、例会資料などいろんな情報を載せることができ、それらが同友会運動のデータベースとなってきています。

会報発行の役割を学びながら、情報収集・加工・発信する広報部

宇佐見 機関紙「同友あいち」を担当する広報部は、部員が90名います。「広報活動の手引き」をもとに、会報発行の役割や、何をどう会員に情報提供していくのかを学びながら会報を発行しています。例会の記事は、その地区の人に依頼して書いてもらう。写真や記事の書き方も勉強します。どんな地区の行事や活動を掲載するかは、12名いる編集部員が選び、よかった地区活動の表彰やランクづけもします。広報部の活動は、同友会理念に基づき、同友会の取り組みや、会員企業の情報、地域の情報を収集・加工して発信していくことが役割です。

中小企業の現場の声をリアルに伝えるアンケート調査が威力発揮

加藤 マスコミ対応はどうされていますか。

舟越 仮にマスコミと太いパイプを持っていても、こちらから売り込んだだけで記事になることはありません。やはり、新聞記者が飛びつく、書きたい記事があれば書くということです。結局、同友会活動をねばり強く続けるしかない。同友会そのものが対外的に打って出る武器なのです。

 各種マスコミ記者や経済デスクとの懇談会や昼食会、あるいは行政との懇談会などの場で、そのときどきの中小企業の状況や同友会の取り組み、見解などを情報提供していきます。

 中小企業の状況を伝えるためには、「あいどる」を活用したアンケート調査が有効です。この自前の調査を元に、同友会としてのコメントを出すこともできます。景況調査がまとまった頃には必ずマスコミに情報発信しています。

 10年前に東海豪雨災害があった時は、同友会会員が手分けして調べた中小企業の被害状況を「Ainet」に載せたところ、それを行政がみて、激甚災害指定を受けたこともあります。

 3日以内にだいたい600人くらいが回答し、その結果を瞬時にまとめることができるため、会員対象にアンケート調査をしてほしいとの依頼も外部からきます。

浅井 アンケート調査の依頼があった場合は、「愛知同友会調べ」として載せてもらうことを条件に、無料で受けています。マスコミからのものが多く、これが大きな同友会の宣伝にもなっています。

 建築基準法改正の時は、その影響が建設業だけでなく全業種にみられたので、アンケートも全業種に広げて調査しました。このときは、質問項目の作り方から集計・分析、さらにはそれをいかに活用していくのかの戦略まで専門家のアドバイスを受けながら実施したところ、大きな反響がありました。

ホームページ、機関紙、そしてグループウエアの総合力で

加藤 会内向けのグループウエア「あいどる」と紙媒体の機関紙「同友あいち」の関係はどのようにしていますか。

宇佐見 広報部の仕事も、「あいどる」ができて便利になりました。全48地区の行事や活動状況が「あいどる」を見れば1目瞭然ですので、その中から「同友あいち」に載せるものを選べるようになりました。相互に有効利用することで、「あいどる」の利用率も72%と高くなってきました。

 今後、会員がなにを知りたいのか、たとえばリーマンショックの影響が日本にどのようにいつ頃及ぶのか、といったようなことも、いち早く分かるような、先を読む広報にしていきたい。そのことが、企業を強くしていくことにつながります。また、増強の観点からも、入会しても地区だけ見てやめていくのではなく、「あいどる」を見ることで、愛知同友会3000人を実感してもらい、退会防止につながるようにもしたい。さらに、ホームページの「Ainet」も会外の企業が見ることで、増強に貢献しています。

 この厳しい状況下で、会員に対してどんなサービスができるか、考えているところです。

同友会活動そのものが対外発信 広報戦略を明確に社会との関係づくりを

舟越 同友会の会活動そのものが対外発信です。その活動をサポートするのが広報です。たとえば、地域社会で何が起きているのかを調査し、公開討論会などを主催し、報道していく。地元に焦点をあてれば、見えてくる宝物はたくさんあります。シンクタンク的役割も果たしていきたい。

加藤 広報とは、現状を伝えるだけでなく、会の目的・方針をふまえ、戦略的にいかに組み立てていくかを考えることがとても大事です。広報とは社会との関係づくりです。

 ビジョンを明確にもち、現状をとらえ、未来を見据えた広報を考えること。場合によっては組織も変えていく必要があります。

 いろんなことが常に現場でおきています。そのことを伝え、声を集め、分析し、目的をもって発信していくこと。さらに、行政やマスコミとの人間関係を構築していくことも大事です。

 この厳しい状況下で、こんな大きなことを同友会では行っている、ということを伝えていくこと。「情報とは、自ら創造したものでなければ情報とは呼ばない」という言葉がありますが、広報戦略をもって、情報創造をわれわれの手で行っていきましょう。

「中小企業家しんぶん」 2009年 12月 5日号より