「企業変革支援プログラムステップ1」【私はこう学んだ】

(1) 事例に学び課題が明確に ユーハン工業(株) 専務 友繁正司(京都)

 当社は創業者のワンマン企業で、これまで全社的な方針や計画を策定したことがありませんでした。

 しかし、昨年からの世界的大不況で内部環境も外部環境も激変。創業者と共に仕事をした社員も今では3分の1になり、社員も入れ替わる中、全社の力を結集し、「企業変革」しなければ生き残れない状況です。

 自社の診断結果は、ほとんどが成熟度「2」のレベルでした。「2」までは経営者や一部のスキルをもった人材が頑張れば、なんとかクリアできますが、「3」へのステップアップには、社内全体での取り組みが不可欠で、「経営指針」、とくに経営理念が浸透していないと、まず不可能であることがハッキリ理解できました。

 同友会の研修会では、グループで「ステップ1」に取り組み、学び合う形式でした。他社の事例からも、自社で取り組める具体的な方法や次の課題が明確となり、このプログラムを通して、中小企業の限られた経営資源をいかに戦略的・計画的に投入するかが見通せるようになり、大変有意義でした。

▼創業1948年、資本金1000万円、従業員60名、年商5億4000万円、油圧歯車ポンプ及び油圧パワーパッケージの製造等

(2) 「人を生かす経営」の意義を実感 エイベックス(株)社長加藤明彦(愛知)

 「ステップ1」をじっくりと読みながら行うことで、「できている」つもりで実は中途半端な状態にあることがわかりました。幹部社員にも診断してもらい、比較することでさらにそれが鮮明になりました。

 「経営の主要数値の正確な把握」という項目があります。まず経営者が決算書の各項目・各数値の意味をよく理解することは当然ですが、会社全体から数値を集約し、時系列的に分析し、経営指針に落とし込んで、今後の見通しを語れるようになれば、銀行交渉などにも力を発揮できるようになると思います。

 しかし、そこまで行うには、社内に数値把握の仕組みをつくる必要があり、それを行う人材育成も不可欠と気づきます。結局のところ、強い会社づくりの基礎は「人を生かす経営」ということが改めて分かります。

 「ステップ1」は「労使見解」をはじめとした同友会らしい視点で、自社を具体的に見つめ直すことができるのが最大の特長で、同友会にいなければ、自分も真っ先に雇用に手をつけていただろうと思います。しかし「人を切ってしまったらおしまい」ということも、このプログラムで気づかされました。

▼設立1953年、資本金1000万円、従業員150名(内パート85名)、年商16億6000万円、自動車部品製造(切削・研削加工)

(3) 経営指針の必要性に気づく (有)エーワンセキュリティサービス 社長 有吉徳洋(香川)

 私の「ステップ1」との出合いは、所属している組織委員会主催の新入会員オリエンテーションで当プログラムを採用した時でした。

 その時、新入会員と共に実際に実施してみて、大きな衝撃を受けました。

 自社企業の強みと弱みが明確になり、経営を行う上で、最も必要な「経営指針」の必要性に気づくことができました。

 恥ずかしながら経営理念、就業規則、賃金規定の無かった自社は早速、3カ月以内に就業規則、賃金規定を作成。

 半年後に香川同友会の「経営指針を創(つく)る会」に入会し、経営指針を成文化することができました。その後、支部では、例会でのプログラムの実施、また社内では社員とプログラムを実施し、経営に対する考えの差を埋めるツールとしても使用しています。

 このプログラムは自社の健康状態を把握できる健康診断書であり、今後、定期的に行うことで、理念の浸透、迷いのない経営を行うことができるのではないかと思っています。

▼設立2003年、資本金300万円、従業員2名、年商6000万円、防犯システム設計、施行、保守

「中小企業家しんぶん」 2009年 12月 5日号より