組織率10%超える支部の活動より(7)【北海道・根室支部】先人たちの足跡に学んで地域経済の地盤沈下に歯止めを

 中同協では、地域に責任の持てる同友会づくりを進めようと、組織率10%をめざしています。組織率が10%を超える支部の活動を紹介するシリーズの7回目は、北海道同友会根室支部を紹介します。

 根室市は、北海道で最初に朝陽を拝むことができる最東端の街。市の西側に位置する春国岱(しゅんくにたい)では、さまざまな野生生物が生息し、自然愛好家たちの心を惹きつけています。

 根室開拓に偉大な足跡を記した高田屋嘉兵衛は、海上安全、産業振興を祈願して1806年に金刀比羅神社を建立しました。北海道3大祭りにも数えられる金刀比羅神社例大祭は、毎年8月、勇壮に開かれます。

200海里宣言きっかけに根室支部誕生

 根室市はサンマ、鮭鱒、花咲ガニなど、さまざまな水産資源に恵まれた漁業と水産の町でした。しかし、1977年のアメリカ・ソ連による200海里(かいり)宣言により、北洋漁業を中心に発展を続けてきた地域経済は大きな痛手を被ることになります。その影響は、漁業や水産加工業ばかりでなく、造船・漁具・漁網や無線・燃料・魚函・運送・食糧仕込み・雇用など多方面に及びました。

 そのような危機感を背景に、釧路など近隣支部から同友会の存在が伝えられ、82年には根室でも準備会の動きが始まります。勉強会といえば、中央から招いた講師の話を聞くことだと思っていた根室の経営者にとって、経営者同士が胸襟を開いて悩みや課題を語り合う姿は新鮮でした。

 根室支部は84年6月に91名が集い、道内11番目の支部として産声をあげます。

新しい「根室人」に

 根室支部にとっての画期は、1991年から始まった「根室温故知新講座」でした。高田屋嘉兵衛、山縣勇三郎、柳田藤吉ら根室とゆかりの深い商人や経済人の他、ロシア最初の遣日使節アダム・ラクスマンなどにスポットを当て、学芸員や神社の宮司さんら地元の研究者から学ぶ講座です。

 根室に生きた先人たちの足跡をたどる同友会主催の勉強会は、回を追うごとに熱を帯び、その学びの記録は『大人(たいじん)たちのねむろ史』として刊行されました。

 当時支部長だった(株)マルコシシーガルの早川昭貴彦社長は、「これらの人物史を学びながら、新しい根室人が生まれてくるような気がした」と語ります。

 嘉兵衛の屋号にちなんで名づけられた青年経営者の集まり「山高会」も、91年に発会します。講演会を開くなど、地域の高校とも接点が広がっていきました。

 観光客でにぎわうサンマ祭りやカニ祭りの担い手としてがんばっているのも、同友会の仲間たちです。

組織率15%の悩みと可能性

 支部設立から26年が経過し、根室支部の組織率は現在14・9%に達しています。会員数のピークは、87年の95社。現在は会員数が67社に減っているにもかかわらず、組織率は逆に上昇しています。地域経済の地盤沈下に歯止めがかかっていないのです。会員歴20年以上の方が約3割を占め、若手会員が少ないという悩みもあります。

 高岡1朗支部長(根室スチレン(株)社長)は、「多くの先輩経営者が今も最前線で活躍していることは、若手会員にも刺激になる。組織率の高い支部として例会参加者の一層の増加を目指したい」と意気込みを語っています。

北海道同友会釧根事務所 事務局 小松邦洋

「中小企業家しんぶん」 2010年 2月 5日号より