組織率10%超える支部の活動より(8)【北海道南しれとこ支部】

中小企業振興条例の施行で地域経済振興策への発言力強める

 北海道東部に位置し、中標津(しべつ)町、別海町、標津町、羅臼(らうす)町の4町、人口5万人からなる南しれとこ支部は知床半島の南に位置しています。

 豊かな海からは秋サケ、ホタテ貝、シマエビ、コマイが獲れ、内陸の広大な平地は放牧による酪農が盛んで、牛の頭数は18万頭に上る第一次産業の地域です。

全国初、町単位の支部

 中標津町、別海町を中心として1973年から「国営根釧パイロット事業」が始まり、機械化による大規模酪農経営が始まりました。人口の増加に合わせ商業も発展し、特に中標津町で商業施設が増えました。

 この頃から支部設立の必要性が高まり、3年間の準備期間を経て1983年5月に全国初の町単位での支部となる中標津支部が発足しました。この年の7月に北海道で開かれた全国総会では全国の参加者が中標津町を訪れ、「日本経済を支える中小企業の経営基盤は地域にある」とした総会宣言に合致し、道東の小さな町で産声を上げた同友会の「共に育ち合う土壌づくり」という考え方に触れました。

 支部設立20周年となる2003年には4町に会員のネットワークが広がっていることを表す支部名「南しれとこ支部」に改称されました。90年代半ばから全道的に人口、事業所の減少が進みましたが、中標津町は酪農と商業の町として2008年まで釧路、根室管内で唯一人口が増加していました。

別海地区会の発会

 110社程の会員数が続いていた2007年11月、南しれとこ支部に別海地区会が発足しました。40社で発会した同地区会は年々会員数を伸ばし、2009年には農業水産委員会を発足し、別海町を支える第1次産業とのかかわりを強める運動を展開しています。

 さらに特筆すべきは、全国の町村の先陣を切って2009年4月に中小企業振興基本条例が施行され、地域経済振興策への発言力を強めていることです。

 また地域の医療支援を目的とした「医良同友(いいどうゆう)」が発足し、町民300名が登録して、結氷した湖上でのワカサギ釣り大会や健康づくりのための勉強会などを企画しています。

 別海地区会の寺井範男会長(寺井建設社長)は、「条例が施行され、今後はその効果が問われる。役場との連携を強めて地域貢献の場で同友会のしっかりした地歩を築きたい」と語ります。

 南しれとこ支部の会員数は別海地区会の発会後、順調に拡大しました。2010年2月現在、別海地区会は会員数72社、組織率は29%に達しています。支部全体では152社で組織率は14・3%を誇ります。

 金曽義昭支部長(広栄メンテナンス社長)は「別海地区会の急速な会員増強は支部全体に大変良い刺激を与えている。中標津町でも2010年4月に中小企業振興基本条例が施行される見通しだ。厳しい経営環境が続く道東経済だが、活発な運動を行って地域経済の振興を行いたい」と熱意をにじませています。

北海道同友会釧根事務所 事務局員 栗谷秀実

「中小企業家しんぶん」 2010年 2月 15日号より