社内での評価の違いを気づきのきっかけに~(株)紀之国屋 代表取締役会長 中村 高明氏(福岡)

【変革への第1歩~活用しよう企業変革支援プログラム】2

 『企業変革支援プログラム・ステップ1』を活用し、企業課題の明確化、社員との現状認識の共有化、経営指針の実践など、「企業変革」につなげている事例(企業)と、それを促進する事例(同友会)を紹介する本シリーズ。今回と次回は、中同協第42回定時総会第6分科会から、(株)紀之国屋・中村高明氏(福岡)の報告を2回に分けて紹介します。

同友会との出合い同友会での学びと実践

中村会長

 私は、39歳でサラリーマンを辞めて独立し、1987年に取引先の縁で同友会に入会しました。

 入会前は資金繰りや社員との関係に悩み、毎日近くの酒屋へ行き、「なぜ俺の言うことがわからんのか」と憂さを晴らすという状況でした。

 同友会入会後、「自分と同じ悩みを持った経営者がこんなにもいるのか」と、同じ悩みを持つ仲間に出会えたことをうれしく感じ、同友会で学びを深めていきました。

 1989年には、経営指針作成セミナーに参加して経営指針を作成しました。同年に経営計画発表会をし、1992年には社員全員参加による経営指針作成の合宿を始めました。

 1990年に経理をオープンにしていましたので、経常利益が1000万円出ていることを皆知っていました。

 合宿中に社員の1人が「会社の金庫の中に現金が1000万円あるのでしょう」と尋ねました。そこで、翌日の朝礼後に皆で金庫を開けて確認してみようということになり、いざ金庫を開けてみると、現金は全くありませんでした。数枚の受取手形のみだったのです。

 「利益が出ても、それは売掛金や卸売資産等に化けているということを社員は知らないんだ」と重要なことに気づき、それから経理研修や管理者研修を行っていきました。今では各部門長が経営計画を作成し、各部門長の責任のもと、売上・粗利・経常利益目標等を決めるようになっています。

『ステップ1』を使っての自社評価

会社外観

 『企業変革支援プログラムステップ1』の発売直後、2009年11月に経営幹部7名を集めて『企業変革支援プログラムステップ1』を使用して自社を評価してみました。

 そうしたら、自分や社長が良いと思っていた項目が、幹部の評価が思いがけず低いことに気づいたことはもとより、「Ⅳ 市場・顧客及び自社の理解と対応状況」と「Ⅴ 付加価値を高める」のカテゴリーが自社の弱点であることに気づいたのです。

 そこで幹部会議で「Ⅰ 経営者の責任」から順に取り上げ、次の段階にステップアップするにはどうすれば良いのかを話し合うようになり、そのような話し合いは現在も継続して行っています。

自分と幹部の評価の違い

 「Ⅰ-(2) 社員との信頼関係の構築」の項目において、幹部社員の評価の平均は1・8(会長と社長の評価は共に3)で自社にとって弱点だと認識されました。

 しかし、会長と社長としては、経営指針も成文化して社員と合宿で意見を交換して経営指針を作成し、さらには経理の公開、社員の意見を聞いての就業規則や給与規則の策定、人事評価制度の策定や育児休暇の付与など徹底して労働問題について解決していったにもかかわらず、信頼関係が構築されていないということはどういうことなのか、と思いました。

 幹部と討議した結果、「会長は同友会に出ていつも会社におらんじゃないか。一人ひとりとコミュニケーションを日頃とっていないではないか」と指摘されたのです。

 そこで、社員はいつも自分との対話を望んでいることに気づき、対話の重要性に気づかされました。

 「Ⅳ-(3) 顧客の満足度の把握」の項目においては、会長の評価は2で社長の評価は3、幹部社員の評価の平均は2・8。

 (株)紀之国屋には「お客様アンケート」と「仕入先様アンケート」がありまして、「お客様アンケート」は営業が回収し、「仕入先様アンケート」は社長に直接届くようになっています。苦情があれば社長に直接封筒が行くようになっているのですが、「お客様アンケート」は営業が回収するためか、きれいごとが回答に書いてあります。私にとってはそこに不満があり、評価は2となっています。

 現在ではこれらのアンケートを時系列的に把握していないことと回収方法の見直しについて今後討議しなければと考えています。

(次号につづく)

会社概要

創業 1977年
資本金 4000万円
年商 17億円(グループ)
社員数 52名(パート1名)
業種 機械器具工具販売・省力機器設計製作、金属加工等
所在地 福岡県直方市大字頓野字三本松970
URL http://www.kinokuni-ya.ne.jp/

「中小企業家しんぶん」 2010年 9月 5日号より