業界と地域に生きる企業としての自覚と責任 川西航空機器工業(株) 社長 深田 政宏氏(兵庫)

【環境経営で企業革新を―「同友会エコ」受賞企業の取り組み】(4)

環境問題に取り組み続ける姿勢が企業を伸ばす

深田社長

 昨年の全国総会でキックオフした中同協「同友エコ」。今回は、航空宇宙関連機材の設計・製造・修理で厳しい国際基準に対応した品質管理、環境管理を行っている川西航空機器工業(株)(兵庫)を紹介します。基本理念は、「地球環境の保全及び改善に努め、自然環境にやさしい企業活動を行う」です。

航空・宇宙関連業界の国際基準に対応して

 日本の国際宇宙ステーション「きぼう」の空調機器など、航空・宇宙関連業界で生きる川西航空機器工業(株)(深田政宏社長、兵庫同友会会員)。この業界の厳しい国際基準の要求のすべてを満足させる安心を提供すること、すなわち絶対安全を追求する経営姿勢を打ち出し認知されることが必要です。そこで、環境マネジメントシステムISO14001(2004)だけでなく、品質マネジメントシステムISO9001、航空・宇宙産業の品質マネジメントシステム JISQ9100、情報セキュリティマネジメントシステムISO27001を取得しています。

地域に生かされる視点

化学物質の排出削減

 川西航空機器工業ではさらに、「中小企業には、業界だけでなく、地域に生かされるという視点も大切」と考えています。そのためには、事業内容を事あるごとに地域に公開していく姿勢が求められるとし、地域の小学校などから企業見学を受け入れたり、ホームページなどを通して、企業を公開・開放していくことにも積極的です。

 環境に取り組むというと、CO2削減や省エネルギーというテーマが中心になりがちですが、騒音・悪臭・汚染などの問題も正面からとらえています。地域への環境負荷(マイナス要素)を計測、防止・抑制、法令遵守など厳しい管理と、ごまかしがないだけでなく、「今のままでよいことはない」という姿勢でのぞむことも、企業が地域社会の一員である役割です。

 同社の事業活動によるマイナスの環境側面としては、化学物質を使用する製造工程があります。厳しい管理が求められていると同時に、運用体制や設備投資も含めて、環境改善に取り組んでいます。

 2009年の環境活動重点テーマの最初の項目が「化学物質の排出削減」でした(図は、その1年間の取り組みの一部を紹介)。

情報管理部で社内体制の革新と確立を実現

 いま、マネジメントシステムの実行に必要な、社内のデータ管理や法改正などの外部環境、要求事項の変化に対応しているのは情報管理部です。

 「50名を超えるような規模の会社には、総務や経理といった実務的な間接部門ではなく、情報管理や経営者の意思決定にかかわる部門が必要」と、深田社長。

 情報管理部では、事業を展開する上でのデータ管理することを目的として、社内的には、営業や製造データから在庫管理まですべての数値データを取りまとめると同時に、経理データの承認と社内公開を行っています。これらによって、これまで紙ベースであった完成図書や品質保証資料をはじめとするすべての社内データの電子化と共有が可能になりました。

 社外的には、WEBを活用して情報収集にあたると同時に、自社HPを通じて在庫情報の提供や得意先からのアクセス分析などを行い、今日の事業活動の要となっています。

同友会マイナス10%運動で「審査員奨励賞」

 これまでも「チーム・マイナス6%」の取り組みには参加していましたが(現在は環境省の「チャレンジ25」キャンペーンに参加)、2008年に兵庫同友会で「マイナス10%運動」をはじめると知って「6%より大きな目標の10%には参加しないとアカン」と思い、すぐに準備をはじめました。

 その結果、2008年の「冬季コンテスト」で審査員奨励賞を受賞しました。受賞の大きなポイントは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のフィールドテストに採択された太陽光発電システムの稼働でした。

 以前より太陽光発電には興味があったのですが、具体的に話がすすんだのは兵庫同友会の「ワット神戸」との出会いでした。

 「当社の実情にあわせてフレキシブルに対応して頂き、現在では照明に使用する電力の半分以上を太陽光で発電しており、得意先や市民のみなさんが工場見学などで来社の際には必ず見学して頂いています」といいます。

 2009年春のISO14001定期審査のなかでは、この審査員奨励賞受賞がストロングポイント(他のマネジメントシステムと比較して秀逸な事例であり、今後一層伸ばしてほしいという事項のこと)として認められたことは大きな成果であり、自信となりました。

環境に取り組むことは企業の寿命をのばす

 深田社長は、環境問題に取り組むことについて、次のように話しています。

 「環境問題に取り組むことは、企業そのものの寿命をのばすことになると考えています。入口は、裏紙の使用、ゴミの削減、照明の消灯、水の再利用などからはじまると思いますが、そのことをやり続ける、組織化や進化させることに挑戦することです。

 企業は常に事業展開や業態開発が求められています。環境問題にもたゆまなく取り組んでいく姿勢が大切だと思います。まさにそれは、事業の継承であり、アイデアや技術の開発だからです」。

会社概要

創業 1950年
創立 1967年
資本金 6000万円
社員数 60名
業種 航空宇宙関連機材の設計・製造・修理
所在地 兵庫県川西市下加茂
TEL 072-759-4145
http://www.kapp.co.jp/「中小企業家しんぶん」 2010年 10月 15日号より