地域を担う組織づくりと企業づくり【2011組織問題全国交流会から】

 8月23~24日、2011組織問題全国交流会の中から、福岡同友会田浦代表理事、愛知同友会加藤副代表理事、兵庫同友会田中代表理事の報告を紹介します。

『知りあい、学びあい、励ましあい』会員が主人公の組織づくり

愛知同友会副代表理事 加藤昌之氏

 愛知同友会の会員増強の歴史は、3つの期に分けられます。第1期は個人力の増えた時期です。74年から78年ころまで450名から1100名まで拡大しました。第2期は集団体制と好景気で拡大した時期です。83年から94年で2300名まで拡大しました。集団体制で盛り上げ、好景気とも相まって、2倍以上になりました。90年代は横ばいで、第3期は04年から11年までの7年間の成長期です。大きく変わったのは組織的目標設定し、本格的に会員拡大に乗り出し、3100名まで拡大しました。

 会員拡大には、愛知青年同友会(以下青同)のパワーが貢献しました。90年から一貫して拡大してきています。100名の組織から750名と7・5倍になっています。41歳で青同が卒業だから、これ以上少なくしたくないと、仲間づくりにエネルギーをかけています。少人数で時間をかけて、お互いに会いながら学んでいます。

 また、2010年ビジョンを作成しました。次代を創る中小企業と日本一の同友会をめざすとうたっています。そして、愛知同友会5000名会員を目指す意義を明確にしました。「自立型企業づくり」「地域と共に」です。ビジョンにそって組織分けをし、支部ごと、地区ごとの行動を明確化、地域にねざした活動をしようと統一化しました。

 愛知同友会の増強の特徴は、日常増強です。イベントをうつ必要はありません。毎月の例会のワンゲスト運動を行い、「こういう内容に興味を持っている友達がいたら誘ってよ」ということを行っています。

 愛知同友会では会員の自主運営を基本としています。会員同士が声をかけあい、手間をかけること、これが特色です。地区では会員発表とグループ討論をベースにしていて、企業経営と不離一体と議論しています。愛知同友会では、このような基礎的組織(各同友会では支部にあたる)としての地区が52ありますが、地域を中心に細分化されています。その下に小グループが170あり、一昨年は1年間で1762回の会合が行われ、うち1000会合は互いの企業訪問を行うという企業と顔の見える活動を行っています。

 役員研修大学については、おおよそ会員の1割が修了しています。役員としての学びをもって同友会の活動を運営しています。

 また、組織をつなぐ仕組みづくりとして、「あいどる」(ITインフラ)があります。「あいどる」では会合案内や資料共有は勿論のこと、52の地区例会の活動内容がデータベース化されています。どのように企画され、どのような内容で、参加者の反応はどうだったという記録が写真付きであります。

 これは愛知同友会の財産です。これは10年前の企画とも比較検証もできます。会員と組織との関係を担保できる仕組みをつくっています。ですから事務局員が関わらなくても地区での独自運営が可能となります。

 では、事務局はどう関わるかというと、会員をサポートしていくことにあると思います。サポートによって会員が動きやすくなります。そのためには、事務局の専門能力を高めていくことです。会員と事務局の関係が大切です。事務局は当然パートナーでもありますが、マネージャーでもあります。会員の経営課題やニーズを引き出し、経営でやっていることを同友会運動でもやっていくということが大切だと思います。

増やせる組織づくりに向けて

福岡同友会代表理事 田浦 通氏

 福岡県の人口は507万人、九州の約半分の経済力を持っている県です。福岡同友会の会員数は92年に2900名強をピークに減少しています。現在2000名弱になり、非常に危機感を感じています。

 バブル崩壊後には同友会理念が深く浸透していないことで会員数が減少しました。また、支部と県という組織が遊離していて、会計が二重構造になっている組織でもあります。支部長の裁量が大きく、活動内容が県全体で統一されていない問題がずっとありました。 5カ年ビジョンを策定しながら、04年には地域に根差した同友会にしていこうと機構改革委員会をつくり、地域ごとに北九州、福岡、筑豊、県南という4地区会を結成し、地区幹事会を設置。07年には財政の健全化プロジェクトに取り組みました。

 しかしながら、ビジョンの実践が検証されていないという課題がでてきました。現在、ビジョンを検証しようと、支部での肉付けがされた進化型ビジョンを推進しています。地区、支部を分割再編し、下駄履きでも参加できることを目指すこと。本部・委員会等の組織が複雑、専門性の高い学びなので次の担い手ができていない、などの問題もあります。

 同友会運動や活動の全会員への浸透の仕組みづくりが課題となっています。

役員として会員の模範になる強靭な企業づくりへの挑戦

兵庫同友会代表理事 田中信吾氏

 同友会へ入会は赤字を脱出したいというのがきっかけでした。学んでいくと、良い会社になるためには良い経営者にならないといけないとわかりました。赤字会社からまずは黒字会社へ、そして景気に左右されない企業に、それから社会貢献できる会社という段階があるはずと。良い会社になるには決して一足飛びではないと思いました。

 しかし、「良い経営者ってなんやねん。人材育成するのは社長が人材にならないといけない。共に育つということはもちろん自分が育たないといけない。理念に人格の向上を入れ、人格は器、能力は液体、あらゆる液体を入れる器を大きくせなあかん」と勝手に思い、器を大きくしていく場が同友会だと思いました。心に刺激を与え、自分を変化させていける経営者にならないといけません。

 また、経営計画書は約束であり、経営は実行して結果を出すことです。高収益企業めざし、変革し続けることが社長の一番の仕事です。そして、そのような経営者として闘(たたか)って生まれ出てくる教養を学ぶのが同友会だと思います。話しをしていると理想や夢を語るばかりで自分の会社のことを語らない人がいます。社員と共に経営指針をつくり、赤字を出して「社員が文句言わない、社員は良くできている」と自慢している人がいました。「経営者の最終責任と社員の実施責任の区別もわからないのでは?」と疑問に感じました。

 経営者は自分で必死で意識しないと変わりません。経営者という人種はほめてはいけません。叱られて、怒られて、変わる人種です。そうした環境が大切です。

 また、同友会が地域からあてにされてくるようになると、行政などでは代表理事の会社を調べてきますから、地域から信頼される会社をつくることです。そのようなプレッシャーで会社は良くなっていきます。

 学んで、実践して、結果が出て、自信がついて、また学んでというスパイラルが良いと思います。

「中小企業家しんぶん」 2011年 9月 15日号より