【若者が輝く企業づくり】納得すれば、社員は輝く~(株)サヤカ 社長 猿渡盛之氏 (東京)

分かりあっている“つもり”だった

 羽田空港に着陸する巨大な機体が、目の前を横切ります。空港に隣接した大田区城南島に、プリント基板分割機を製造する(株)サヤカ(猿渡盛之社長、東京同友会会員)はあります。同社の基板分割機は高い技術力が評価され、75%という圧倒的なシェアを誇ります。また同友会の共同求人活動での採用を長年続けており、新卒社員の定着・成長が同社の好調を支えています。

 創業初期の1980年のある日、猿渡氏は信頼していたナンバー2の社員と大ゲンカになりました。「分かりあっていると思っていたのは自分だけだった」とがく然としました。全員を集めて話を聞くと、不平・不満が出るわ、出るわ。つばきを飛ばしながら言いたいことを言いあい、就業規則をつくりました。しかし、どうやって実現するのか、売上、粗利益は、それをやり上げるための手立ては、と問いかけて議論。全員の納得のもとに、第1号の経営計画をつくりあげました。以来、年3回(現在は年2回)の「全社員会議」を欠かさずに続けています。

最高の経営情報を伝えよう

 「全員が納得することが大切」、そのために「最高の経営情報を伝えよう」と考えた猿渡氏。「全社員会議」に詳細な経営データを提出するようになりました。売上、粗利益、経常利益、自社への注文内容・客先の特徴、決算の内容、労働時間の実態、それらが時系列でどう変化しているのかなどをまとめました。会社をとり巻く客観的事実を深く多面的に理解してもらい、「どうしたら良いと思う?」と社員に問いかけるようにしたのです。

 自分は何をするのか、社員の間で前向きな議論が始まりました。「どんな決定も与えてはだめで、社員同士が話しあいを通して合意していくことが大事だとつくづく思った」と語る猿渡氏。その後、1980年代後半には「3カ年計画」を大幅に超過達成するなど、目に見えて全社の結束は高まりました。

早く先輩のようになりたい

 現在の「全社員会議」は社員により自主運営されています。経営計画をもとに自信に満ちて議論する先輩社員を見て、新入社員は「早くあんなふうになりたい」と大いに刺激を受けるそうです。毎朝の各部門の代表による打ち合わせと各部門での朝礼、毎月の社内報も社内で親しまれ、社内の情報共有を支えています。「高いレベルで納得していれば、社員は輝くのですよ」と猿渡氏の言葉には社員への信頼が溢(あふ)れています。

会社概要

設立 1975年
資本金 4,800万円
社員数 38名
事業内容 自動組立・検査システム・プリント基板分割装置・各種治具、開発、製造、販売
所在地 東京都大田区城南島
URL http://www.sayaka.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2012年 6月 25日号より