男性中心の業界でも子育て支援で女性が活躍 (株)エステム(愛知)

【特集】女性の活躍促進で、企業力・地域力アップ

 (株)エステム代表取締役会長・鋤柄修氏(愛知同友会・中同協会長)、業務管理部平岡幸子氏、総務部門脇千恵氏に女性が活躍できる企業づくりの取り組みについて話を聞きました。

 (株)エステムは水処理施設の維持管理を中心とした事業を行っています。従業員415名のうち女性は約4分の1、仕事柄技術職の割合が高くなっています。男女同賃金同業務を基本として、評価体系は全部で7等級、昇格には資格取得等の明確な条件設定があるほか、26歳時のコース選択など社員の働き方に柔軟に対応しています。

働きたい社員が活躍できる環境を

 「女性社員の積極的活用は、愛知同友会の先輩会員の取り組みから学んだこと」と当時を振り返る鋤柄会長。女性のこまやかな気遣いが社内外によい影響があることに注目し、女性社員の採用をはじめたのは1980年代、男女雇用機会均等法が施行された頃です。しかし、水処理施設の現場はいわゆる3K(キツイ、汚い、危険)の仕事で、業務によっては大雨時の非常配備などの過酷な環境下での作業もあることから長い間「男の職場」とされてきました。働きたい社員が活躍できる環境を提供することは企業の責任であるとエステムでは役所にかけあい、工事現場に女性トイレと更衣室を設置しました。当時の常識では考えられないことで、説得するのに苦労したそうです。

企業と社員が一体となって取り組むことで制度は活(い)かされる

 女性も活躍できる環境整備を進めるにあたり、子育てしながら働ける環境づくりは避けて通れない課題でした。具体的には、育児休業制度(以下、育休)時短勤務制度(以下、時短)や出産・育児を理由に退職した社員を優先的に採用するカムバック制度などの両立支援制度があり、多くの女性社員が時短を利用し、仕事と生活を両立させながら能力を発揮しています。時短を利用した女性社員が管理職として活躍している実績を認められ、2011年度の名古屋市女性の活躍推進企業認定・表彰制度の従業員部門で表彰を受けました。

 ただし、いくら制度が充実していても利用する人がいなければ意味がありません。時短を利用し、現在は業務管理部でチームリーダーを務める平岡氏は「時短が定着するまで先輩が苦労してきた姿を見てきたので、制度を利用させてもらえたことにとても感謝していますし、私たちもしっかりしないといけないと思いました」と語ります。両立支援は企業と社員が一体となって取り組まないと進まないということ、また制度を利用する層が厚くなることで安心感や責任感が生まれ、社内の結束力も強まっていくという好循環のサイクルが伝わってくるお話です。

「活躍の場」を長期的視点でとらえ、制度は合理的に

 エステムでは次世代育成支援対策推進法に基づいた「一般事業主行動計画」を策定するため、2008年に育休経験者に対するヒアリングを行いました。「育休より時短の期間を長くしてほしい」という要望が多かったことから、これまでの「子が3歳に達するまで」から法定以上の「小学校就学まで」に規定を改定。さらに短時間勤務正社員制度も新設しました。これは、育児や介護だけでなくメンタル不調などで限定的な働き方を希望する社員が、周りの社員の目を気にすることなく働き続けられるように配慮した制度です。

 総務部門では会社と社員の生活の将来を視野に入れ、雇用環境についての情報収集を積極的に行っています。「今後は育児期の女性の両立支援に加えて高齢者も含めた働く側のワーク・ライフ・バランスに配慮した取り組みを進めることが重要だと考えています。年齢と共に体力が落ちて現場の仕事が厳しくなる状況は誰にでも有りうることですので、違う形で能力を活かせる場を作っていくことができないかと職域拡大を模索しています。消極的な職域拡大でなく積極的なビジネスチャンスと捉え、新たな付加価値を提供できれば事業としての可能性も広がります。また、女性や高齢者の職域が広がることにより、現場で働く若い世代の雇用創出にもつながると考えています」と門脇氏はこれからの展望を話してくれました。

 エステムの取り組みをWEPsの7原則に沿って整理してみると、全ての項目に該当します。女性が仕事に対して責任を持ち、いきいきと活躍できる環境づくりに取り組んでいくことで、社員も成長し企業力も発展していくことを実現しています。

会社概要

社名 株式会社エステム
代表者 代表取締役会長 鋤柄 修  代表取締役社長 東口 享
設立 1970年7月
資本金 7,000万円
所在地 名古屋市南区弥次ヱ町
従業員数 415名
事業内容 ・水処理施設維持管理 ・環境ソリューション ・環境調査分析 ・環境コンサルタント業務 ・広域管理システム ・公害防止および資材販売 他

「中小企業家しんぶん」 2013年 1月 15日号より