第3回 「企業変革支援プログラム」が地域づくりに貢献する

拓殖大学政経学部教授 山本尚史

 中小企業振興基本条例、企業変革支援プログラム、エコノミックガーデニングに焦点を当て、地域経済と中小企業との関わりについて考える連載の第3回。今回は「『企業変革支援プログラム』が地域づくりに貢献する」です。

 今日は、地元で革新的な縫製業を営む社長さんの会社に伺っています。

「ようこそ、若先生。先日の例会で、経営指針を深めることで会社を建て直した方の話を聞いた。リーダーシップは私の会社の問題でもあり、ちょっとショックだった。もっと早く同友会に入ればよかったよ。ところで、若先生は、企業変革支援プログラムについてどう思う? 私の会社でもやるべきだろうか?」

―私見ですが、企業変革支援プログラムには経営指針の実践と見直しとが内包されているので、企業変革支援プログラムを実行することで経営の質が高まると思います。ところで、上の図を見て下さい。これは、企業変革支援プログラムを使って自己診断した同友会会員企業の診断結果の平均です。御社はどうでしょうか?

 「時間をかけて自己診断しないとわからないが、市場情報の収集と分析が私の会社の弱点だと思う。なるほど、同友会の人たちが企業変革支援プログラムを勧める理由がわかった。私の会社でもやってみよう」

―企業変革支援プログラムは、地域経済活性化のためにもお勧めです。この点についてご説明します。

 第1回で「地域経済の変革能力を高めるためには企業家精神に富む中小企業の存在が不可欠だ」と申し上げましたが、中小企業の変革を進めるには、現状を的確に把握することと、変革のためのシステムや構造を持つことの両方が必要です。地域の中小企業には現在も将来も活躍してほしいからです。

 現在の経営状況が改善されたとしても企業が次世代に続かなければ持続的な地域経済づくりには貢献しません。また、事業を継ぐときには、資産や業務だけではなくて会社の在り方も承継されることが大切だと思います。会社の在り方が継承され更新され続けることで変革力のある企業となるでしょう。

 私には、会社の在り方とは経営理念であり、経営理念を実現する方向性が経営方針、そしてそのための具体的な方策と手順が経営計画だと見えます。そして、企業変革支援プログラムは、中小企業が今世紀を生き抜くことができるように自己変革することを支援する、とても効果的な構造だと思います。

―ところで、まだ構想段階ですが、「地元企業が企業変革支援プログラムを活用している地域は、地域経済活性化が進んでいる」という理論を提示してそれを証明する、という研究をしようと思っています。所長も賛成すると思います。

 「若先生、それはいいね。同友会の人たちにも協力してもらおう。早く研究して、所長先生と一緒に国際学会で発表してほしい。研究結果を待っているよ」

「中小企業家しんぶん」 2013年 7月 15日号より