同友会に広がる企業連携 産学官民連携組織「MANGO」【宮崎】

 各地で中小企業間での連携が進んでいます。今回は宮崎同友会産学官民連携組織「MANGO」の取り組みと企業間連携を進めている(株)日向中島鉄工所代表取締役の島原俊英氏(宮崎同友会代表理事)の事例を紹介します。

 宮崎同友会は昨年、産学官民連携組織「MANGO」を立ち上げました。「10年で100のプロジェクトを生み出し1000名の雇用を実現する」を目標にスタートし、宮崎大学や行政、連携センターの協力を得て、新しいサービス、商品づくりに取り組んでいます。

 「MANGO」では今までで3つの商品を開発しています。その中のひとつが「薬草生活」です。MANGO例会で(有)山下薬草店を訪問、「薬草を薬品会社に卸すだけではもったいない」と話し合う中で、おいしく手軽に飲める薬草茶の開発を始めました。(有)ふながやま園と宮崎食研(有)の2社の協力で、「おいしく」と「手軽」のコンセプトが実現できました。

 ほかふたつの商品は宮崎県の東日本復興支援事業を受託し、岩手との仕事づくりプロジェクトの中で開発されています。

 そのひとつが、「結―風呂敷―」。風呂敷は岩手県葛巻町の山葡萄の蔓と宮崎県田野町のお茶の葉で染めています。蔓を提供した岩手同友会会員の葛巻高原食品加工(株)の漆真下満専務は「厄介者と思っていた蔓がやさしい色あいの染物となり感激した」と新たな付加価値に驚きました。

 もうひとつ、岩手同友会会員の(株)八木澤商店の醤油と宮崎県日向市特産のかんきつ類「へべ酢」を掛け合わせた、ポン酢とドレッシングの試作品が生まれています。日向市の特産を岩手の復興に役立てたいという思いから生まれた商品です。

 同友会の仲間と一緒に立ち上げた「MANGO」が、新しい仕事づくりにむけて動き始めました。これからさらに理念を同じくした仲間と連携しながら新しい仕事をつくっていきます。

 『同友みやざき』第284号から転載。

理念を共有して連携

(株)日向中島鉄工所 代表取締役 島原 俊英氏(宮崎同友会代表理事)

 連携して事業を創り出していくには、理念を共有することが大事です。お金が回ることだけを考えて事業をつくっていくと、壁にぶつかったときに非常にもろい。「へべ酢」の連携もそうですが、同友会の仲間だったらそれができると思っています。

わが社の農商工連携

 わが社は畜産業の食肉加工を自動化する機械や焼酎などをつくる醸造機械などをつくっています。宮崎の地場に密着した業種、業態として育ってきています。

 会社は職人ばかりでなかなか私の話に耳を傾けてもらえませんでした。それでも経営指針の成文化に取り組み、社員とともに作成する中で会社の方向が見えてきました。

 社員にはこれまでの地元の企業との信頼関係を大事にしてほしいと話しています。目に見えない部分への意識を育てていきたいので「理念を大事にしよう」と言い続けてきました。

理念でつながる連携「野菜光房」

 わが社が進めている連携が「ひむか野菜光房」です。太陽光を活用し、ハウス内で葉レタスの水耕栽培をするものです。温度、湿度、照度などのデータをすべて取り、野菜が育ちやすい最適な環境をつくります。地域の困っていることで、私たちの力が生かせることはないだろうか、と勉強会を立ち上げたことがきっかけです。

 農業の困っていることに視点をあてる中で、水耕栽培と野菜工場という形が浮かんできました。しかし、行政や農業者の方などに計画を話してもなかなか受け入れてもらえず、それでも、と私たちが想いを語っていたら、「私たちも参加させてくれますか?」と声をかけてくださる方がいました。

 脱サラをして水耕栽培に取り組んでいる方で、「もっと事業を広げて、本当の意味で地域に貢献したい」と入ってきてくれました。それを機に農業用資材を扱う会社の役員さんなど徐々に仲間が集まってきました。

 2012年6月に会社を創立し、現在1日5000株から6000株を生産し、九州全土、広島、大阪を中心に出荷しています。

 まず私たちの時代認識と問題意識があり、いかに解決するのかという将来像があり、そこに人が集まってきた。そういう条件が揃うと、新しい仕事が生まれてくると感じています。

「中小企業家しんぶん」 2013年 8月 25日号より