企業の知的財産権の把握~自社の強みと弱みの分析のために

【経営者のための知的財産入門】(6)

 今回は、中小企業の知財活動の現状について、紹介します。

Q.特許や商標などを取得する目的はなにか?

A.目的はさまざまですが、「自社製品を他社に真似されたくない」「受注生産している商品に知財トラブルがあると取引先に迷惑がかかるため」など防衛やリスク回避を目的としているという話をよく聞きます。

 その時に権利侵害の有無を伺うと、調査していないためわからないということが多いです。

 中小企業は知財業務に注力できないのが現状で、知財に取り組む目的に実際の対応が追いついていない場合が多いので、足りない部分は知的財産相談窓口などを有効活用して負担感を少しでも減らしてください。

Q.中小企業の特許出願が少ない理由は?

A.費用などに余裕がないという理由以外では、中小企業は自らの技術・ノウハウについて、特許の出願により保護をするのではなく、営業秘密として保護している可能性が考えられます。

 中小企業が知的財産の保護に関してどのような方針を持っているか調査したところ「特に方針は定めていない」とする企業が多いですが、大企業と比べて、「特許出願は最小限にとどめ、できるだけ営業秘密として保護」と回答する企業が多いという特徴が見られました。

 知財というと特許など権利化するというイメージがありますが、営業秘密も大切な知的財産です。

 権利化とノウハウ秘匿のどちらが適切か適宜判断しましょう。

Q.自社の知的財産権を把握しているか?

A.産業財産権専門官が中小企業に訪問を打診すると、「うちは弁理士に依頼しているから問題無い」「知財は関係ない」という回答をいただく時があります。

 知財の専門家である弁理士がいれば問題ないというのはある意味正しいと思いますが、弁理士に任せきりにしていて、自社が取得したい権利内容で実際に権利を取得できていない場合や、知財の意識がなく、自社の知財を把握していないだけという場合があります。

 事業活動をされている中小企業で全く知財がないとは考えにくいので、自社の強みや弱みを把握される際に、知財のことも同様に考えていただけたら幸いです。

 「『知財』を力に!」をテーマに6回にわたり知財の基礎知識を掲載させていただきました。知財を経営の1つのツールとして活用いただければ幸いです。(終)

特許庁普及支援課産業財産権専門官 佐藤 ちづる

「中小企業家しんぶん」 2013年 9月 15日号より