第1回「エネルギー=電力?」―省エネと熱源の有効利用

 2013年10月、全国から27名が参加したドイツ・オーストリア視察。視察のキーワードとなった「エネルギーシフト」というのは、日本ではまだまだ知られていない考え方です。今後、本紙では、ドイツ・オーストリアの「エネルギーシフト」の取り組みや考え方、ドイツ・オーストリア視察報告、日本のエネルギーの現状など、さまざまなテーマで「エネルギーシフト」を取り上げていきます。

エネルギー=電力?

 まず第1回目の今回は、前提としての「エネルギー」のイメージについて触れます。視察に参加する前、「エネルギー」と聞くと、「電気・電力」という先入観がありました。エネルギー問題とは電力の問題であり、発電する方法が何なのかと考えて、環境先進国ドイツではどうなっているのだろうと視察にいきました。

 一般的に、電気を発電する方法としての火力、水力、原子力。火力でも、石炭、石油、天然ガスということで発電するという選択でエネルギーミックスを考えてしまいます。その代替エネルギーとしての「再生可能エネルギーをどう活用するか」ということで、再生可能エネルギーで発電する方法を考え、太陽光・地熱・小水力・バイオマスなどで他の発電方法と代替していこうという流れです。

省エネと熱利用

 しかし、ドイツ・オーストリア視察によって、「エネルギー=電力」という先入観は打ち破られ、エネルギーの一部分に過ぎないことを思い知らされたのです。省エネ住宅や地域暖房など熱源を有効利用することなど「エネルギーシフト」を大きな柱としています。

 実際、エネルギー白書2013によれば、世帯あたりの用途別エネルギー消費割合をみると、暖房が25・1%、給湯が28・7%となっており、動力源が燃料か電力は別として、熱源に53・8%のエネルギーを使っています。電力も重要ですが、省エネと熱を効率的に活用することで地域に仕事とお金が循環していくということになります。

 「エネルギーシフト」という考えは、経済社会が消費しているエネルギーの全般を徹底的に見直し、生活・住宅・交通・都市・教育などあらゆる分野に及んでいるものでした。持続可能な社会をつくり、かつ質の高い暮らしを実現し、新しい成長モデルを示していこうというドイツ・オーストリアの地域全体や国全体の実践でありました。次回は「エネルギーシフトの3本柱」を紹介します。

(I)

エネルギー白書2013より、世帯あたり用途別エネルギー消費割合

「中小企業家しんぶん」 2013年 12月 5日号より