地方税充実や経済活性化にも逆行

【「外形標準課税適用拡大」を検証する】第2回

関東学院大学法学部 教授 阿部 徳幸 (中同協税制プロジェクト委員・東京同友会会員)

 前回、外形標準課税適用拡大が求められる理由のうち、(1)税負担の公平性の確保と(2)応益課税としての税の性格の明確化、について検討してみました。今回は、(3)地方分権を支える基幹税の安定化と、(4)経済の活性化・経済構造改革の促進についてみることにします。

「地方分権を支える基幹税の安定化」とは

 「地方分権を支える基幹税の安定化」とはどういうことでしょうか。地方団体が提供する公共サービスは安定的に提供されなければなりません。そして、地方団体がこの責任を全うするためには、その自主財源となる地方税はできる限り安定的で変動の少ないものであることが必要となります。

 現状の所得に対する課税では景気変動の影響を受けやすく、不安定な仕組みとなっています。外形標準課税とは事業規模などといった外形的な基準に対して課税する仕組みです。この外形的基準をベースに課税するのであれば、確かに景気変動の影響は受けづらく、安定的で変動の少ない税収の確保ができそうです。

 しかし、これを逆説的にみれば、仮に赤字であっても納税が求められることになります。

新たな滞納税金が増える恐れ

 話はそれますが、この4月から消費税率の引き上げが実施されました。消費税制はその制度的欠陥から事業者にも負担が求められ、赤字であってもその納税が求められるものとなっています。その結果、消費税の滞納が止まりません。政府もこの滞納対策に手を焼いているというのが実状です。

 地方税における安定財源の確保は極めて重要な課題です。現在、国税と地方税の税収における配分比率はほぼ6対4となっています。その反面、支出における国と地方の割合はほぼ4対6と逆転しています。

 地方の活性化からも地方税の充実は重要です。しかし、このことと外形標準課税適用拡大とは別問題のはずです。外形標準課税の中小法人への適用拡大は、新たな滞納税金を増やすだけに過ぎません。

「経済の活性化」につながるか

 外形標準課税の適用拡大論者は、これまで課税を免れてきた赤字法人にも受益に見合う税負担を求めることにより、全体的として広く薄く税負担を求める仕組みに改革するといいます。これにより現状の所得に対する税負担は緩和されることになり、より多くの利益をあげる事業活動を支援し、企業経営の効率化や収益性の向上に資すると考えられ、経済構造改革につながることが期待されるというのです。これが(4)経済の活性化・経済構造改革の促進です。しかし、これでは強い者をより強く、弱い者はさらに弱くなることを後押しすることにつながらないでしょうか。

 次回は、具体的な外形標準課税の計算方式について触れてみることにします。

「中小企業家しんぶん」 2014年 7月 15日号より