点から面へ~林業の活性化が農業の活性化に(第1回) (有)安岡重機 代表取締役 安岡 浩史氏(高知)

【エネルギーシフトに挑戦!】 第12回

 地元産材を原材料にすることで、眠っている山林の資源を活用し、循環が生まれ、雇用にもつながります。森林率84%(うち人工林が66%)と日本一を誇る高知県。地元の間伐材を原料にした木質ペレットで化石燃料から脱却し、域内循環を図ろうと取り組む(有)安岡重機を取材しました。

もったいない精神が生んだ木質ペレット事業

安芸にある原風景

 木立の間を抜けてくる、深い山の緑が溶け込んだ風。山々を縫うように流れる江川川(えかわがわ)。

 トンネルを抜けると途中から豊かな伊尾木川では、きらやかに岩肌に飛ぶしぶきが美しい。

 山の中腹から里を見ると市営の「元気バス」が家々の間を走っています。自分の故郷に戻ったような原風景がここにあります。

 高知県東部の安芸地域に高知同友会の支部が設立されたのは昨年3月、1年ほどで安芸市の対企業組織率は10%を超えました(支部会員数22名)。東京23区の半分ほどの面積に人口1万8800人。面積の88%が森林です。

もったいない精神で木質ペレット製造に挑戦

 安芸支部長を務めるのは(有)安岡重機代表取締役の安岡浩史氏。安岡氏は2010年から間伐材などの杉やヒノキを収集してボイラーの燃料となる木質ペレットを製造しています。

 原木からペレットになるまで20分。できたての熱いペレットからスギやヒノキの香りが漂い、破砕機や乾燥機などの騒音はあるものの、工場内は森林浴ができそうなほど香りで満たされています。

 安岡重機はもともと建設、運搬業などを手がけていましたが、安岡氏が入社した2000年ころに、リサイクル関連法案の制定という時代背景を追い風にコンクリート破砕機などに設備投資し、産業廃棄物処理に進出しました。

 始めてから数年は景気が良かった産廃処理業ですが、やがて景気の悪化に伴って建設の仕事が減る中、2008年の年初に安岡氏は事業を継承しました。

 売上減の中、多角的経営に着手。産業廃棄物として引き取った廃材を利用して、飲食店「スープカレー&カフェchez nous(シェヌー)」や簡易宿泊施設「四季楽庵」を開業。食材も地元のものにこだわっています。

 同社が10年以上にわたってリサイクルにこだわった経営に取り組む背景には、経営理念に掲げる「循環型社会への貢献」と「あきらめない精神ともったいない精神」で事業創造していくという安岡氏の強い思いがありました。

(平)

「中小企業家しんぶん」 2014年 8月 5日号より