点から面へ~林業の活性化が農業の活性化に(第2回) 県産材で地域内循環にこだわる

【エネルギーシフトに挑戦!】第13回

(有)安岡重機 代表取締役 安岡 浩史氏(高知)

木質ペレット製造へ~あきらめないで継続する

 安岡浩史氏((有)安岡重機代表取締役)は高知の高校を卒業後、東京の学校に進学。新聞奨学生として働きながら土木系の学校を卒業しました。過酷な日常生活の中、東京多摩地区42店舗で営業成績トップとなるなど、「忍耐・継続すること」を覚え、「あきらめない」ことの大切さを知ることになりました。

 2009年に、木質バイオマスへの取り組みとして、ペレットの加工製造施設を導入。安芸地域の木材を使い、木質ペレットの製造に取り組み始めました。ところが実際に施設を導入してみると、機械は正常に動くものの、ラインの調整や質の良いペレットに仕上がりません。

 原材料となる木材は、木の種類、伐採した時期(季節)などによって、特性やコンディションが大きく異なります。そこで木材加工業者と同じように「その木に合った」加工条件を研究し、少しずつ条件を変えてペレット製造の研究を重ねました。

 乾燥温度、時間から成形時の圧力まで、細かく調整する必要があるのです。最適な条件を探すためには膨大な量、時間がかかりました。社員から「もう無理ですよ」というあきらめの言葉も出る中、安岡氏は「とにかくやり続けよう」とあきらめずに取り組み続け、ついに最適な加工条件を探し出しました。

林野庁や県知事も視察に

 この独自のプラントは外部から評価され、林野庁や知事も視察に訪れています。社員1人で1日に4~5トンを生産。ペレットは安芸の園芸作物用ハウスに主に使われ、昨年末までにペレットボイラーがすでに107カ所、おがくずボイラーは6カ所設置されています。燃料使用量は年間3190リットル。削減量は重油換算で1500キロリットル、1億5000万円相当の域外への資金流出を抑制しています。

 また、CO2削減量は4100トンで860世帯相当分となっています。(表参照)

表 木質バイオマス熱利用の取り組み

 間伐材が活用されれば林業も活性化し、雇用の創出や森林環境の保全につながります。さらに木質バイオマスによる熱利用施設が増えることで、安価で安定的なエネルギー供給ができるようになります。それは消費者の環境意識や地産地消への意識を高め、食の安全安心につながります。林業の活性化が農業の活性化とつながり、低炭素作物の栽培で作物のブランド化もできます。(図参照)

 7月には国や県に原料の安定供給や木質バイオマス熱利用の制度などを求める要望書を提出しました。

図 林業と農業の循環

同友会の仲間で高知の魅力発信へ

 取材した6月中旬ころペレットボイラーを使うハウスでは、促成栽培のナスや高知マンゴーの収穫は最終盤。

 高知同友会会員の「メリーガーデン」(岡宗信明代表)では、濃厚な自家製完熟マンゴーのまるごとジュースが楽しめます。ガーデンで直売されているマンゴーはLサイズで1500円ほどと手ごろで、出荷したその日に売り切れる勢いです。

 採れた農作物はそのまま県外の大消費地へ、また(有)安芸グループふぁーむ(小松哲也代表取締役、同支部幹事長)では、「焼きナスのアイス」「しょうがのアイス」などに加工して高知の魅力発信へ。「焼きナスのアイス」は「FOODEX JAPAN2012」での「ご当地アイスグランプリ」で最高金賞を受賞するなど、その品質の高さが評価されています。

 エネルギーシフトに中小企業が点から面に展開して取り組めば、地域の雇用を生み地域振興につながる。限界集落地帯が広がる中、同友会の役割、中小企業の役割を改めて実感するものとなりました。

(平)

会社概要

設立 1980年
社員数 16名(パート、役員含む)
所在地 高知県安芸市下山1626-1
事業内容 産業廃棄物処理業、一般建設業、一般貨物自動車運送業、木材加工業、飲食業、簡易宿泊業
URL http://www.yasuoka-j.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2014年 8月 15日号より