金融アセスの精神いまこそ~金融庁が金融機関を評価する指標を導入

 同友会が提唱した「金融アセスメント法」案という制度が15年の時を経て、静かに蘇りつつあります。

 金融庁は、地域金融機関に金融仲介機能の質的改善を促すため、個別金融機関の水準を客観的に評価するベンチマーク(指標)をつくるとしました(『ニッキン』9月25日号)。9月に開始した約1000社への企業ヒアリングの結果や、新たに設置する外部有識者会議の意見も踏まえ、来春までの策定を目指すようです。

 9月に公表した「金融行政方針」に、2015事務年度の重点施策として盛り込んだもの。指標化の狙いは「他の金融機関と比較可能な目安を示し、共通の目線で改善策を議論する」(幹部)としました。

 金融アセスメント法という言葉は使っていませんが、内容次第ではほぼ同意になりえます。金融アセスメント法のアセスメントとは、「評価」という意味です。何を評価するかといえば試案では次の5つのカテゴリーで調査することを当時提案していました。

 (1)「地域貢献度」、資金運用に占める地元貸出率など。
 (2)「中小企業貢献度」、金融機関が営業を行う地域での預貸率と当該地域での中小企業貸出比率。無担保貸出の比率。第三者保証付貸出の割合。融資申込みから融資実施までの平均日数。起業家や女性企業家、NPO等への融資実績。
 (3)「地域住民貢献度」、地域住民向け学資ローン、住宅ローンなどの所得階層別構成と融資額。
 (4)「取引公正度」、利用者、融資先の利便性を高めるための努力や活動状況。銀行約定書などの改善の度合い。融資基準及び融資拒否理由の書面通知の有無。苦情処理ルールの有無。
 (5)「資金供給安定度」、既存利用者の利便性を著しく害する本支店、出張所の移転・廃止の有無。融資額や融資条件の一方的変更の有無とその状況など。

 今の金融状況からは古くなった部分や付け加えることもありますが、基本的には十分通用する事柄です。

 では、金融庁は評価を行うためのベンチマークとしてどんなことを考えているのか。(1)地域における取引企業数の推移、(2)支店の業績評価など、(3)金融機関ごとの比較を可能とする計数などを検討するとしています。

 そして、業績性評価およびそれに基づく解決策の提案・実行支援として次のことをも考えています。(1)主要な営業地域について、地域ごとの経済・産業(主要な産業セクターを含む)の現状・中長期的な見通しや課題などをどのように把握・分析しているか。(2)取引先企業について、財務内容などの過去の実績や担保・保証に必要以上に依存することなく、事業の内容、強み・弱み及びその業界の状況などを踏まえた融資やコンサルティング機能を発揮すること。(3)融資、既存保証の見直しなどに当たって、経営者保証に関するガイドラインの積極的な活用に努めているかなどです。

 このような地域・中小企業の声を聴こうとする中小企業憲章の姿勢は金融機関においても大変有効です。

 金融庁との席で金融アセスメント法を大いに訴えましょう。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2015年 10月 15日号より