【採用と教育】第2回 「労使見解」の実践としての社員共育

岡山トヨタ自動車(株)代表取締役社長 梶谷 俊介氏(岡山)

 「採用と教育」をテーマに企業での取り組みを紹介する連載の第2回は、岡山トヨタ自動車(株)の梶谷俊介氏(岡山同友会常任相談役・中同協社員教育委員長)です。自社と同友会での取り組みを聞きました。

 同友会の「共育」の基本的な考え方は、他責にできない経営者の責任と、対等な労使関係を自覚することにあります。この2つの考え方から社員と「共に育つ」という思想が導かれます。ですから、誰かに任せて社員を教育してもらうのではなく、経営者と社員が共に育ちあうことが前提です。

 岡山同友会では社員共育大学、幹部社員大学、同友会大学、教育(共育)講演会などがあり、それぞれ経営者が社員とともに参加して学ぶことが原則です。社員共育大学は今期22期目、のべ479社1221名が受講、修了生は930名(会社、受講生、修了生の重複あり)です。

 社員だけでなく経営者が総括レポートを出さないと修了できません。会社にとって都合のよい社員を育てる視点ではなく、一人ひとりがより良い人生を生きることをテーマにしています。

 幹部社員大学は今期9期目、経営理念を現場でどのように応用していくのかを学ぶ場という位置づけです。受講生には、部下と議論して経営理念の解説書を作成するなどの宿題が出ます。経営者にとっては、幹部社員にどういう問いかけをするのかが大きなポイントになります。

 私が岡山同友会社員教育委員長のときに幹部社員大学がスタートしました。経営指針を策定するだけでは成果が出ないという問題意識でした。その意味では「労使見解」を実践する経営者の問題意識から生まれたものです。毎年、前年の成果と課題を検証した上で、手づくりで運営しています。「労使見解」の実践という問題意識を持った経営者が集まることで、同友会の「共育」の取り組みはいかようにも展開できるという捉え方が大切です。

 当社では1996年以降、ほぼ毎年、社員が同友会の幹部社員大学・同友会大学に参加しています。これまで社員共育大学を44名、幹部社員大学を7名(トヨタレンタリース岡山を含むと社員共育大学92名、幹部社員大学14名)が修了しています。幹部社員大学には部下や上司を巻き込んで実行に移すことがプログラムの中に組み込まれており、当社では、幹部社員大学に参加しながら各部門でミーティングをやることが定着しています。

 また地域課題の認識が「共育」にとって大切です。一般的に子どもの教育には親の影響がとても大きい。親を教育しているのは誰なのかを考えると、それは経営者です。地域が抱えている子どもの問題は、実は企業経営に大きく関わっているといえます。従って地域の人材育成という視点で「共育」を考える必要があります。

 つまり経営者の役割は、地域課題をどこまで認識しているか、地域の問題解決に向けた自社や社員の可能性にどこまで目がいっているかです。社員を自社にとっての人材としてだけでなく地域にとっての人材として認識することが重要です。

「中小企業家しんぶん」 2015年 12月 15日号より