【2015年度共同求人活動から】今こそ共同求人の強化と充実を~“連携”の動き、全国に広がる~

 本年は「大学生は学業を優先すべき」といった政府要請に経団連が応えるかたちで就職・採用期間が大幅に変更になり、学生・企業ともに手探りの状態での採用活動となりました。そのような中、各同友会で取り組まれた2015年度の共同求人活動の特徴を振り返ります。

求人・就職活動の動向

 2015年10月の有効求人倍率は1・24倍で、1992年1月(1・25倍)以来23年9カ月ぶりの高い水準でした。大企業を中心とした業績回復や人手不足を背景に、企業の採用意欲が高まったことが要因と考えられています。2015年3月に大学を卒業した学生の就職率は94・7%と、前年より2・0ポイント上昇し、2008年3月卒業生以来7年ぶりの高水準でした。

 Jobway参加企業は1074社(前年比116・8%)になり、4年間増加傾向にあります。各同友会が開催した合同企業説明会の参加企業数も延べ2652社(同123・1%)となりました。

 一方、合同企業説明会の参加学生数は延べ6554名(同78・9%)、Jobway登録学生数は1万4748名(同91・1%)となりました。全国的に人手不足の中、学生の合同企業説明会参加数、Jobway登録学生数は4年連続して減少傾向にあります。

採用時期変更による中小企業への影響

大阪同友会

 2015年度より就職・採用時期が、広報活動は3年生の3月1日以降、選考活動は4年生の8月1日以降、採用内定日は4年生の10月1日以降と大幅に後ろ倒しになりました。経団連が発表した「採用選考に関する指針」に対し、中同協共同求人委員会ではその指針に準じて採用活動を実施していくように昨年より呼びかけを行いました。

 リクルート就職みらい研究所「2015年11月1日時点 就職内定状況(2016年卒)」【確定版】によると、採用企業側では足並みがそろわず、早いところでは5月ごろから内々定を出している企業もあり、結果として8月1日の選考活動開始時点での就職内定率は65・3%。11月1日時点での就職内定率は89・5%で、同年同月の89・4%と同水準ですが、大手企業の正式な内定日10月1日以降は内定辞退が増加し、11月1日時点で63・0%(同年同月差10・7%)までにのぼっています。

大学との連携の動き加速

 同友会と大学が協定を締結して、学生の教育や就職活動を中長期的・系統的に連携して取り組む動きもさらに加速しました。青森同友会は3月23日に青森中央学院大学と連携に関する協定書締結、宮城同友会は、6月23日、東北大学と「宮城県中小企業家同友会と国立大学法人東北大学大学院経済学研究科地域イノベーション研究センターとの連携協力に関する協定」を、7月3日、東北工業大学と「東北工業大学と宮城県中小企業家同友会との包括連携に関する協定」をそれぞれ締結しました。滋賀同友会は、9月25日に立命館大学および経済学部との協力協定を締結しました。また、京都同友会右京支部は、6月30日に立命館大学産業社会学部学生との懇談会を開催。地元の中小企業を知ってもらうとともに学生の考えを知る機会になりました。

社員教育委員会との連携を強化

 「人を生かす経営」の実践において、それぞれの委員会が連携する取り組みが求められています。その試みとして、今年度は社員教育委員会との連携を強化しました。

 中同協第47回定時総会では、第6分科会を合同で担当し、パネルディスカッションを行い、「労使見解」に基づく「人を生かす経営」の総合実践は、キャリア教育、採用、社員教育を一貫して取り組むこと、同時に中小企業振興基本制定条例運動も視野に入れて取り組むことで一貫した取り組みを地域ぐるみで支援するものになり、地域ぐるみの若者教育運動に発展するという活動の方向が確認されました。

 また、8月26日には小暮恭一・共同求人委員長と梶谷俊介・社員教育委員長が厚生労働省、文部科学省、中小企業庁を訪問。それぞれの委員会の活動内容を紹介すると共に、採用・就職活動期間変更に伴う影響などについて懇談を行いました。

 さらに、翌27日には社員教育と共同求人の合同で委員会を開催し、キャリア教育、共同求人、社員教育を一貫して取り組み、「人を生かす経営」の総合実践を進めることを確認しました。

共同求人の歴史と理念を再確認

 11月26~27日、2015全国共同求人交流会が沖縄県那覇市のホテル日航那覇グランドキャッスルで開催され、28同友会・中同協から324名が参加しました。「若者が育つ魅力ある企業と地域づくり~人を生かす経営の源流をたどる~」をテーマに、1日目は6つの分科会で学び、2日目は池川和人・北海道同友会共同求人委員長、川口康之・広島同友会広島4支部求人社員教育委員長、川畑順義・沖縄同友会共同求人委員長がパネリスト、小暮・中同協共同求人委員長がコーディネーターを務め、「若者が育つ魅力ある企業と地域づくり~源流より広がった各地の活動に学ぶ~」のテーマでパネルディスカッションを行いました。北海道同友会から広がった共同求人の歴史と理念を振り返りながら、各地で取り組まれている共同求人活動を通しての企業づくり、地域づくり、同友会づくりの事例に学びました。

 人口減少に伴い企業での人材不足が続く中、大学や行政との連携はもちろんのこと、各委員会とも連携して、同友会の活動を広げることがますます重要となっています。人を育て、企業を育て、地域をつくる共同求人の参加企業の輪を全国に広げ、地域と中小企業の未来を切り拓いていきましょう。

「中小企業家しんぶん」 2015年 12月 25日号より