「個人消費」が伸び悩む理由

アベノミクスがなくても成長できる日本へ

 新しい年があけました。DOR(同友会景況調査)によれば、2015年10~12月期の業況判断DI(「好転」-「悪化」割合)は4→6と伸び、34半期連続で改善しました。業況水準DI(「良い」-「悪い」割合)も2→9と伸び、業績を示す採算水準(「黒字」-「赤字」割合)は45と調査開始以来の最高となりました。原油安によるコストダウンの面もありますが、経営努力が成果につながっているようです。

 もっとも、改善してきた景況はこれから悪化の見通し。アメリカの金利引き上げや中国経済の減速など波乱要因が迫ってきます。特に、2015年7~9月期のGDPが年率1・0増と発表されましたが、「消費の実績は年率換算で307・7兆円。消費増税前の2013年の実績(313・2兆円)を大きく下回っている状態」(日本経済新聞、12月9日付)とあるように消費増税前の個人消費に戻れていないのです。

 個人消費の落ち込みが景気後退のきっかけになっています。なぜ、伸びないのか。耐久財が伸び悩んでいるからです。政府の(1)リーマン・ショック後に実施された家電エコポイントやエコカー補助金などの購入支援策、(2)地上デジタルテレビ移行、(3)2014年の消費税率の引き上げが、耐久財需要の先食いを数年にわたり促していた影響が大きいというものです(日本経済新聞、12月26日付)。これに輪をかけて、2017年4月から10%への消費税率引き上げがあるとすれば…当分、個人消費の回復は見込めず、悲観ムードが高まります。

 しかし、景気が永久に下を向いたままということはありません。また、消費税率引き上げを中止すれば良いのです。さらに、「アベノミクスがなくても成長できる日本」という自信を持ったら良いという発想もあります(鈴木明彦三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部長「『景気は緩やかに回復』していない」)。

 実際、アベノミクスが登場しなくても景気は回復していたと言います。景気回復が始まった2012年11月には、世界経済が持ち直す中で日本からの輸出が増加し景気が回復するという極めてオーソドックスな景気回復が始まろうとしており、そこにたまたまアベノミクスの登場が重なったと考えることができるそうです。そうであれば、アベノミクスの効果が期待できなくとも景気は回復してくることになるわけです。多くのエコノミストは「円高とデフレに苦しんでいた日本経済は、アベノミクスの効果で緩やかな回復を続けている」という定説が、「常識」となっていました。しかし、そうした定説からスタートしてよいのかという疑問がようやく出てき始めたのではないでしょうか。日本経済がおかれている現状を一から考え直してみようという動きが出てきたことに自信を持ちたいものです。

 当たり前ですが、アベノミクスがなくても、「日はまた昇る」のであり、「日を高く昇らせる」ことも可能となるのです。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2016年 1月 15日号より