同友会だからこそできた特質とは

東日本大震災における同友会の存在意義

 今から5年前の2011年3月11日、東日本大震災が発生。死者・行方不明者1万8517人、福島第一原発の過酷事故は東日本大震災をさらに悲惨なものにしました。

 地震や津波によって大きな被害を被りましたが、地域の衰退という点では他の地方なら20年後、30年後に起きる事態がいきなり目の前の課題になってしまったことではないでしょうか。

 長期的課題として考えていた人口減少・人口流出問題などが時間を早回ししたように地域の現実的課題として出現したような感じです。そのような状況に対して、経営者としての覚醒があったと思われます。

 この5年間、地域の復旧・復興に経営者としてどのように立ち向かったのか。同友会という組織に結集したことによる6つの特長を探ってみたいと思います。

 第1に、自主・自立の精神、最も同友会らしい理念が発揮されました。「われわれ、同友会がやっていくしかない」との精神のもとにすべて自主的にやりました。震災直後は行政も対応ができず、行政に代わって同友会が説明会などを行うなど、行政機能を代行することもありました。自主・自立は経営の精神にもなりました。

 第2に、「1社もつぶさない、つぶさせない」という企業の存続と雇用の維持への経営努力がなされました。特に、「雇用は守る」という経営者の力強い思いを社員に伝え、将来に向けての不安をなくすことなどに注力する経営者を同友会は数多く輩出しました。

 第3に、同友会の絆、ネットワークが非常に強まったことです。震災直後に停電し、メールも電話も通じない中、e.doyuがつながり、全国へ情報を発信できました。震災から5日後より、支援物資が届けられ、避難所ごとに必要な物資が分けられ配られるなど細心の注意が払われました。これらが積み重なり、同友会の絆が非常に強まりました。

 第4に、価値観をはっきりさせ、経営理念・経営指針を進化させることができたことです。震災前の経営理念はあいまいな表現だったものが、多くの会員が震災後、理念に徹底して向き合い、社員全員で考え、より本質的で魂の入った経営理念をめざしました。

 福島同友会は、「企業存続・地域再生のための行動指針」を出して、経営理念が地域やお客様から試される局面だと訴えました。ある会員は、被災から1週間後、手書きでA4サイズ1枚の「復興計画書」を書き上げ、金融機関に持ち込み、協力を約束してくれる事例が生まれました。

 第5に、「まちの衰退をどう防ぐか」の意識のもと中小企業振興基本条例の制定を提唱していることです。地域の衰退をどう防ぎ、少しでも地域循環が機能する経済へ発展させるのか。被災地の自治体では、震災復興の条文が位置づけられ、条例をもとに復興していく仕組みができつつあります。

 第6に、エネルギーシフトです。単なるエネルギー転換でなく、エネルギーシフトという新しい時代の価値観・理念と地域を支える中小企業という考え方にそったエネルギー政策の大転換が必要であるという認識を持つことが大事です。

 このように中小企業と同友会の存在意義は見事に示されつつあります。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2016年 2月 15日号より