時代を見つめる眼と、切り拓く信念 2016年新春講演会・賀詞交歓会【京都】

京都同友会

 京都同友会では、1月27日に2016年新春講演会・賀詞交歓会を開催し、256名が参加しました。(写真)

 今回の新春講演会の講師は、妙心寺退藏院副住職の松山大耕氏で、「時代を見つめる眼と、切り拓く信念~人間らしく生きる地域社会をつくるために」と題し講演を行いました。

 妙心寺は京都市北西部に位置し臨済宗妙心寺派の大本山で、退藏院はその中にある塔頭の1つです。松山氏は30才代後半とまだ若い身ながら、政府観光庁ビジットジャパン大使や京都観光おもてなし大使などを務め、2014年には世界経済フォーラム(ダボス会議)に出席するなど、日本文化の発信や交流に活躍しています。

 講演で松山氏は、さまざまな先人たちの事例をもとに、“地域を大切にする”ことが京都が培ってきた強みであると話しました。

 冒頭、退藏院の「退藏」とは、人知れず善行を行う「陰徳」をして、その徳を積み上げるという意味であることを説明し、さまざまな事例を紹介しながら、その底流にある地域貢献と相互扶助の思想について語りました。

 妙心寺開山の関山彗玄の説話より、自らが動くことで“人の心は動く”、自分たちのできることをすぐ実践してみること。奈良時代、東大寺の大仏造立ではクラウドファンディングの思想によって当時の国民の半数を巻き込んだこと。江戸時代後期の低成長時代、二宮金次郎が行った「5常講」、今でいうマイクロファイナンスによって地域の再生を図ったこと。そして、時間的な効率性、金銭的な効率性ばかりを追い求める世相に対して、京都では経営者の器をはかる1つのモノサシとして、企業の大小ではなく地域への貢献度が重要であることなどが紹介されました。

 最期に松山氏は、「社会のシステムが複雑化し、善行がしづらい世の中にあって、地域に根ざす中小企業家の皆さんは長く広い視野でもって時代を切り拓いてほしい」との期待を述べ講演を締めくくりました。

 同友会がもつ理念の1つ、「国民や地域と共に歩む中小企業」の大切さを改めて実感する講演となりました。

「中小企業家しんぶん」 2016年 3月 5日号より