外形標準課税の導入に反対する3つの理由~強化される外形標準課税部分

 わが国の税制において、法人に対しては国税である法人税が課せられるほか、都道府県によっても税が賦課されています。それが、「地方法人二税」と呼ばれる法人住民税と法人事業税です。このうち法人事業税が外形標準課税と説明されています。外形標準課税とは、法人の所得ではなく、事業活動の規模を外形的に示す要素を課税標準とする賦課方式のことです。

 現行の法人事業税は、所得に対して課税される所得割、付加価値額に対して課税される付加価値割、資本金等に対して課税される資本割からなり、外形標準課税である後2者は2004年度より導入されています。資本金が1億円以下の法人に対しては所得のみを課税標準として法人事業税が課されているのは周知の事実です。

 なにかと話題になる外形標準課税ですが、2015年度税制改正において、外形標準課税部分を2年かけて段階的に拡大する方針が示されました。2004年度の導入以降、全体の4分の1であった外形標準課税部分を、2015年度には8分の3、2016年度には2分の1まで引き上げ、これに応じて所得割を4分の3からそれぞれ8分の5、2分の1に引き下げることとしました。

 さらに、2016年度税制改正大綱においては、さらに上回る拡大が明記され、外形標準課税部分を全体の8分の5まで拡大し、所得割を8分の3とすることが想定されています。本格的に外形標準課税部分が強化されています。

 しかし、外形標準課税は資本金1億円以下の中小法人に適用されないわけですが、反対する理由が3つあるといわれています。

 第1に、付加価値割では、「報酬給与額」が課税標準に含まれていますが、法人は税負担を軽減しようと賃金の引き上げや雇用の拡大に消極的になり、ひいては賃金・雇用に悪影響をもたらすことにつながるとの懸念があることです。これに対し、現行制度において既に一定の対策がとられていますが、これらの対策による負担軽減の効果にはどうしても限界があることも考慮しなければなりません。

 第2に、現行の法人事業税において、付加価値割と資本割からなる外形標準課税部分については、赤字法人であっても一定の税負担が求められることになります。応能課税を重視する立場に立てば、利益を上げることができなかった以上、その法人には担税力がなく、税負担を求めるべきでないことになります。

 第3に中小法人への対象の拡大の是非です。一般に中小法人は大法人に比べて支出に占める人件費の割合が高いことが知られています。これらの法人への税の賦課において、報酬給与額が含まれる税負担は、その経営のみならず存立自体に大きな影響を及ぼします。外形標準課税は相当に筋の悪い課税方式であり、反対せざるを得ません。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2016年 3月 15日号より