賃上げと労働分配率

 中小企業も賃上げ時期になっています。法人企業統計によれば、労働分配率は09年74.7%の直近のピークから13年69.5%、14年度 68.8%と低下。規模別データから資本金1000万円未満企業では80%以上、1000万~5000万円では78%、5000万~1億円では70.7%、1億~10億円では69.3%、10億円以上が56%と大企業ほど人件費に配分していないことがわかります。(表1)

 2015年勤労統計では「実質賃金0.9%減。名目の現金給与総額は0.1%増と2年増、賃金上昇が物価上昇1.0%増に追いついていない」とあり、2015年度賃上げ率を見ると経団連では大手2.59%、最終平均2.52%、300人~500人未満1.94%、100人~300人未満1.84%100人未満1.69%。連合では300人未満1.88%、300人以上2.24%。財務省調査では5000人以上1.9%、1000~4999人2.1%、300~999人1.7%、100~299人1.6%、30~99人1.7%です。3つの平均を比べると、賃金は上がっているものの大企業は人件費を絞っています。

 どのくらい賃上げ可能なのかを2013年法人統計から規模別で推計すると、営業純益の3分の1を人件費にまわせると見れば、年間人件費総額で全体は6.1%可能であり資本金10億円以上の大企業では12.5%まで可能です。昨年3月のDOR調査「賃上げ予想57.4%」と日本商工会議所の実施・予定回答55.6%から半分は賃上げを行っていると想定し、資本金1000万円以下は現在の人件費に1.7%の5割=0.85%上げられると仮定し、新人件費を試算しました。(表2)新人件費の労働分配率を見ると、資本金10億円以上で63%と大企業が10%以上賃上げできることがわかります。中小企業も消費喚起を考え、年間で2%以上は出したいものです。

「中小企業家しんぶん」 2016年 3月 25日号より