【採用と教育】第4回 (株)ヴィ・クルー 代表取締役 佐藤 全氏(宮城)

(株)ヴィ・クルー 佐藤全氏

 「採用と教育」をテーマに各社の取り組みを紹介する連載の第4回。今回は、(株)ヴィ・クルー代表取締役の佐藤全氏(宮城同友会副代表理事)に、共同求人活動と地域の関わりについて聞きました。

共同求人活動と社員教育で活力ある会社・地域に

 わが社は父が創業した企業から分社独立してつくった会社です。父の会社は車の整備や修理などのメンテナンスを行っていましたが、経営状況は大変厳しく社員とは信頼関係ではなくお金でつながっているような関係でした。経営再建のために価格決定権を持とうと修理工場からメーカーをめざし、第二創業の気持ちで立ち上げたのが(株)ヴィ・クルーです。

 仕事枠をどんどん広げ、タイミングよく規制緩和の追い風を受け設立から3年で東日本トップシェアまで成長しました。しかし、無我夢中で働いていたため経営の勉強はまったくしておらず、危機感をつのらせた時に同友会に入会しました。経営指針を作成し、マーケットをバスに特化して自分たちで提案できるメーカーになろうと決めました。

経営指針の実践も共同求人から

 経営指針で掲げた未来のビジョンに向けて動くためには、人の採用は不可欠です。経営指針の実践は採用と教育に関わる共同求人活動に取り組むことから始まると思います。新卒採用を21年間継続して行い、現在社員の8割は新卒で採用した人たちです。

 わが社は毎年採用することで、ひとつ上の先輩が新入社員を育てる社風ができました。部門ごとに「毎年1つ新しい仕事をつくろう」という方針があり、新入社員が個性を生かして新しい可能性を職場に持ちこみ、先輩と一緒に考えています。このサイクルで事業の幅も広がり、社員間の信頼関係も強くなっているように感じます。採用決定も、1週間のインターンシップを受け持った部門に判定してもらっているので、意地でも育てようという環境ができます。

 社員の給料はお客さまから、社長の給料は社員からくれるものと考えています。お客さまのほうだけ向き、社員の働きやすい職場を作らないのでは給料泥棒です。経営者の責任として、社員の働きやすい環境づくりをすることが最大の仕事であると思います。

地域で人を育てていく重要性

 私にとっての地域は宮城県の最南端にある白石市です。人口は3万8000人で毎年減少しています。白石市の中小企業振興基本条例の制定に関わる中で、白石管内600名の高等学校卒業生のうち就職希望者は200名、内36名しか白石管内に就職していないことが明らかになりました。8割以上が地元に就職できていません。白石市を離れた若者が戻ってくる確立は0%と言われています。

 共同求人活動を通して、生まれた地域に誇りを持ってもらえるようなメッセージを若者に伝えていかなければいけないと思います。 われわれ地元の中小企業が使命感を持ち、歯を食いしばって人を採用し、技術革新と新しい仕事づくりの中で地域の若いリーダーを育て、未来を変えていくことこそが中小企業の役割だと思うのです。

「中小企業家しんぶん」 2016年 4月 5日号より