緊張や希望とともに新社会人の第一歩~先刻各地で合同入社式・新入社員研修を開催

 この春、各同友会では合同入社式・新入社員研修が開催されました。就職・採用期間が大幅に変更になり、学生・企業ともに手探りの状態での活動となった昨年。それでも、各地では多くの新入社員を迎えています。今回は、山梨・石川・広島・宮崎の取り組みを紹介します。

会社を変えていく気概をもって【山梨】

 山梨同友会の合同入社式は2008年から開始し、今年で9回目を迎えます。

 4月7日に開催された式典には、23社から35名の新入社員が参加しました。新入社員は18歳の高校新卒者、大学新卒者などに加え、40歳代の中途入社までさまざまです。

 主催者の祝辞に立った中村猛志代表理事は「同友会で学ぶ会員企業に入社できた皆さんは恵まれています。私たち経営者は日頃から会社の発展に向けて学び合い、従業員のやりがい、働きがい、生きがいを実現できる会社づくりを進めています。ぜひ経営者を信じて、皆さんのフレッシュな発想と力で会社を変えていく気概をもって仕事を進めてください」とエールを送りました。

 また、来賓の山梨県産業労働部長と甲府市産業部長からの祝辞もあり、新入社員一人ひとりの氏名を読み上げて入社を祝いました。

 先輩社員の飯窪英明氏(オオタ総合食品(株))は自らの1年を振り返る中で「何事に対しても前向きに取り組む姿勢と素直な気持ち、謙虚さを大切にしてください」とアドバイスを送りました。

 新入社員を代表し、氏原周平氏(山梨住宅工業(株))は「人生で一番大きな買い物である住宅の業界に携わることになります。緊張感をもって持てる力を存分に発揮し、会社の歴史に恥じぬよう業務に専心したい」と力強く決意を表明しました。

業務の幅を広げていくこと

 式典後は新入社員研修会を実施しました。共育委員長の向山孝明氏は北海道同友会とかち支部が発行する「会社研究ハンドブック」をテキストに、マナーの意味やあいさつの重要性、仕事に対する基本姿勢などを丁寧に講義。特に職場での良好な人間関係を構築するためには、仕事に対する前向きな姿勢が大切であること、視野を広くもち、何事も自らの成長につなげ、業務の幅を広げていってほしいと強調しました。

 初めて合同入社式に参加した会員からは「しっかりとした式典で大変感動した。新入社員の良い思い出になるし、他の会社の同期生が生まれることは心強い」との感想が寄せられました。

 半年後にはフォローアップ研修会で再開し、お互いの成長を確認し合います。

 今年はNHK甲府に加え、県内3社のテレビ取材も入り、当日夕方の県内ニュースで大きく報じられました。

祝福と戒めの助言を背に社会人としてスタート【石川】

 石川同友会では4月8~9日、「2016合同入社式&新入社員研修」を石川県地場産業振興センター本館で開催し、会員企業15社から希望で胸を膨らませた43名の新入社員が参加しました。

 合同入社式では、岩木弘勝代表理事が「ビジネスの世界では、100引く1が0になることがある。例えば1人の社員が反社会的な行為をすることで会社の信用が失われ、他の99人の誠実な仕事ぶりが無に帰す。皆さんの人間力が評価され、また問われる世界に入ったことを強く自覚してほしい」とあいさつし、日常の中で欲や怒り、愚痴を抑えることで人間力が磨かれると助言しました。

 続いて、先輩社員として瀬戸裕紀子氏((株)フラワーガーデン入社3年目)が励ましの言葉を述べ、新入社員代表の舞谷弘樹氏(玉田工業(株))が岩木代表理事の前で決意表明を読み上げました。

 新入社員研修では、6~7人ずつのグループに別れ、ビジネスマナーの基本と応用のほか、社会人としての心構えや考え方などを参加者は学びました。

 冒頭、「企業は年齢がバラバラの集団。先輩にかわいがってもらうための研修と思ってください」と講師が切り出し、好感度の高い「はっきり、爽やかな」あいさつの仕方から学びが始まりました。

 会場に、「宜しくお願いします!」「いってらっしゃい!」「こんにちは!」と43人の声が響きました。最初は遠慮がちだった声量が繰り返し発声する中で徐々にボルテージアップ。気持ちがほぐれてきたところで、次にお辞儀の練習へ。腰を曲げてから「おはようございます!」「ありがとうございます!」と声を出し、3秒でゆっくり姿勢を戻します。

 首や背中、腕をきちんと伸ばしながら15度、30度、45度のお辞儀を反復し、腰の角度や手の位置を新入社員同士でチェックし合いました。

 新人の頃の記憶は、意外と鮮明に残るものです。社業発展のため、石川同友会で習得したことを各社新入社員がこの先ずっと生かし続けてもらえればと願った研修会でした。

(石川同友会広報委員 竹本鉄雄 (有)ライターハウス・専務取締役)

地元企業で働く誇りを【広島】

 広島同友会の合同入社式は86社162名(うち広島会場41社99名、福山会場31社45名、呉会場14社18名)が参加しました。新入社員の紹介や基調講演、先輩社員からの励ましのメッセージ、新入社員決意表明という流れで進められました。

 広島同友会の新入社員研修は3月28日の広島会場を皮切りに広島・福山・呉の県内3会場で行われ、77社161名(うち広島会場35社104名、福山会場28社39名、呉会場14社18名)の社員が参加しました。

 今回は、3会場のなかでも広島会場の研修の様子をお伝えします。広島同友会の新入社員研修では、「あいさつをする、時間を守る、人に迷惑をかけない」という3つのルールに沿って進められます。

 初日は、基調講演「いこる人生を!」(講師(株)タテイシ広美社代表取締役立石克昭氏)でスタート。会社に新しい風を吹き込んでほしい。故郷で錦を織り続け、「いこる」人生を送ってほしい。地域の中小企業ではたらく誇りをもってほしい、とメッセージを送りました。また、QCゲーム「人をほめる」では、他人の長所を発見し、ほめる、ほめられる喜びを実感しました。

 2日目はマナー研修。午前中は全体で「マナーとは何か」「基本動作」の講義。午後からは4つの教室に分かれてロールプレイングです。あいさつ訓練、入退室、名刺交換・来客接遇・電話応対のロールプレイングを、会員スタッフを講師に進められました。

 3日目は「先輩社員の体験談」でスタート。講師は、昨年の新入社員研修を受講した先輩社員です。1年間で学んできたこと、成功談や失敗談が語られました。

 最終講は年間の実行計画作成です。 計画作成前に、新入社員への期待が詰まった、各社の社長からの手紙を手渡します。

 受け取る社員も、感激して思わず泣き出す人、食い入るように読み込む人など反応はさまざま。グループ討論では、「思わぬ手紙に感動した」「一生の宝物にする」「自分が期待されていることがわかった」「元気が出た」「方向付けができた」「時代の変化に合わせた仕事の変革が必要であることがわかった」などの感想が寄せられています。

 新入社員研修では1月から実行委員会を開催。研修当日の講師やグループ担当スタッフによる事前勉強会を開催し、参加企業自らが心構えや、マナーの事前研修について確認しています。7月には参加者のフォロー研修が開催されます。「何のためにはたらくのか」「実行計画の再確認」が大きなテーマです。

目標をもって未来を切りひらこう【宮崎】

 宮崎同友会では、4月1~2日にかけて24回目となる合同入社式と新入社員研修会を開催。共同求人活動を再開して2年目となる今春は内定辞退や応募者の減少など、企業にとっては思ったように新入社員を迎えられないきびしい春となりました。そのような中、10社で26名の新卒新入社員が同友会会員企業へ入社。「縁あってわが社に入社してくれた社員。大事に育てたい。」そんな思いが詰まった合同入社式&新入社員研修会となりました。

 「困難や失敗で行き詰まったときは、自分に何かを教えてくれているんだと考えましょう。これから共に宮崎を盛り上げていきましょう」と島原俊英代表理事の歓迎の言葉から始まった合同入社式。

 記念講演では、(有)岡田花店の岡田明利社長が「延岡から世界へ! もう未来は始まっている」をテーマに講演しました。2代目として家業を引き継いだ岡田氏は、現在中国や台湾などに、宮崎の花をブランドとして売り込んでいます。

 「『宮崎には何もないと思っていませんか』―安心・安全、温かい自然、人のことを自分のことのように考えられる心優しい人がたくさんいること。まだまだよいところがたくさんあります。同友会の経営者はこの宮崎を元気にしようと日々学んでいます。社長を信頼し、自分の考えや目標をしっかりもって、どんどん挑戦してください。絶対に未来は切りひらいていけます」との力強いメッセージが岡田氏から贈られました。宮崎で育ち、宮崎で働く新入社員に、殻に閉じこもらず広い視野で物事を見て、挑戦してほしいという願いのこもった記念講演でした。

 続いて行われた1泊2日の新入社員研修会では、「マナー研修」や「社長と語ろう」、「働くこと生きること」「先輩社員に学ぶパネルディスカッション」と4つの講座を行いました。「働くこと、生きること」の講師であるブライトハウス住吉の岩下博子施設長は、「仕事は1人でしてはいけません。人と人とのつながりを大事にすること、喜びを分かちあうことが大切」と自身の50年に及ぶ精神障がい者支援の仕事を通じて大事にしてきたことを若い人たちに語りかけました。

 働くことが自分を豊かにすることにつながっていく1年後の自分へ3つの約束をした新入社員。

 今期、共育ち委員会では、見守り、共に育つための2回のフォロー研修を行う予定にしています。

「中小企業家しんぶん」 2016年 5月 5日号より