『同友会運動の発展のために』から学ぶ 第4回

第1章 同友会理念について

第一節 同友会理念とは

(前回の記事)

2、「自主・民主・連帯の精神」とは

(2)自主・民主・連帯の精神の実践は「人間尊重の経営」の源

 同友会は創立以来、「人間尊重の経営」をめざす活動を展開してきました。このことは、後でも述べますが、「中小企業における労使関係の見解(労使見解)」(1975年発表)や、「21世紀型中小企業」(1993年発表)の中にも貫かれています。

 「人間尊重の経営」の考え方の基本となるのも自主・民主・連帯の精神で、それは次のように考えることができます。

 「自主」とは、自立型企業をめざすこと。価格決定や技術力などで主導権を発揮でき、そのための独自性、先進性を持つ企業のことです。企業内では、社員の自主性、自発性を尊重し、自由な発言を保障して、個人の人間的で豊かな能力を「引き出す経営」が求められます。

 「民主」とは、経営指針にもとづく全員参加型経営や自由闊達(かったつ)な意思疎通のできる社風をめざすことです。そのためには、民主的なルールを尊重し、平等な人間観のもとで、創造力を発揮する民主的な社内環境を整備する必要があります。

 「連帯」とは、企業間や産学官金のネットワークに参加、組織、運営する連携能力をもつ企業づくりの課題です。また、企業内での連帯とは、労使が共に学びあい、育ちあい、高次元での団結、あてにしあてにされる関係をつくり出す「中小企業における労使関係の見解」(以下、労使見解)の精神の発揮です。

 以上のように自主・民主・連帯の考え方に基づく企業づくりは、人間らしく生き育つ「人間尊重」の経営をめざすことと言えます。(2008年中同協第40回定時総会・決議第2章第3節)

 今日の社会において、この「人間尊重の経営」を守り、広げる視点で見れば、さらに大きな課題が広がっています。すべての生命の母体を守る地球環境保全の課題や人類間のあらゆる紛争を武力によらず平和的解決をめざすことは人類永遠の存続と繁栄にとって不可欠の課題であることは明らかです。さらには、高齢化社会への対応や貧困の撲滅、極端な格差社会の是正など21世紀は人間の良心と英知を結集して解決しなければならない課題が山積しています。

 自主・民主・連帯の理念は、人間が人間らしく生きられる社会、すなわち、誰もが持っている人間の素晴らしさを発揮できる社会を実現していく力となるものです。

 とりわけ、人間相互の信頼関係をうたった連帯の精神が基盤となることで、自主性や民主主義が豊かにはぐくまれるといえるでしょう。

(次回に続く)

「中小企業家しんぶん」 2016年 8月 15日号より