【同友会景況調査(DOR)概要(2016年7~9月期)】一部で改善するも、中小企業景気の不安定感ぬぐえず

〈調査要項〉

調査時点 2016年9月1~15日
調査対象 2,325 社
回答企業 1,010社(回答率43.4%)(建設184社、製造業334社、流通・商業289社、サービス業195社)
平均従業員数 (1)37.0人(役員含む・正規従業員)(2)27.0人(臨時・パート・アルバイト)
※業況判断DI(デフュージョン・インデックス)は、好転企業が悪化企業を上回っている割合(%)をさす。DIが100に近いほど、好転企業の割合が高いことを意味し、DIが-100に近いほど、悪化企業の割合が高いことを意味している。好転、悪化が同数の場合は、DIは0となる。ほかの指標のDIも同じ考え方で作成されている。各水準DI以外、本文中特に断りがないものは前年同期比。

景気の不安定感は解消せず

 日銀の9月短観(全国企業短期経済観測調査)は、大企業製造業は3期連続で同水準が続き、大企業非製造業は3期連続の悪化となっています。それに対して中小企業製造業は、今期は改善しますが次期は悪化を見込んでおり、先行きへの警戒感が示されています(図1)。

 DORでも足元の業況を示す業況水準DI(「良い」-「悪い」割合)は水面下ながら△6→△4と2ポイント改善しましたが、業況判断DI(「好転」-「悪化」割合)は△5→△5と横ばいでした。また、売上高DI(「増加」-「減少」割合)は△3→△6と悪化、経常利益DI(「増加」-「減少」割合)では△3→△3と横ばいとなり、改善、横ばい、悪化が入り乱れています。

 次期(2016年10~12月期)は主要指標すべてで改善を見込んでいますが、この間「次期見通し」よりも低い結果が続いていることから、先行きは楽観できません。

 今期の業況判断DIを業種別でみると、建設業は△6→△11で5ポイント悪化、製造業が△13→△12、流通・商業が△4→△3でほぼ横ばい、サービス業が9→11と建設業の悪化が目立ちます。地域別では全地域で「悪化」側となりました。企業規模別では100人以上のみが「好転」側となり、規模による差が明確です(図2)。

仕入単価の上昇は落ち着き、価格は下降傾向

 資金繰りDI(「余裕」-「窮屈」割合)は10→14で4ポイント改善、これは1990年のDOR調査開始以来、最も高い「余裕」感となりました。借入金利については、部分的に上昇の兆しもありますが、借入難度や借入金への影響は限定的なようです。

 また、仕入単価(「上昇」-「下降」割合)の上昇は落ち着き、下降基調が続くとはいえ、売上・客単価DI(「上昇」-「下降」割合)も同様に推移しており、価格動向に大きな変化は見られません。

 ただし、価格動向と同様に、1人当たり売上高DIおよび1人当たり付加価値DI(いずれも「増加」-「減少」割合)も減少傾向にあり、2016年1~3月期に「減少」側に転じて以来低迷を続けており、採算好転への壁となっています(図3)。

人材、設備の不足感が続く

 一方で、人手の過不足感DI(「過剰」-「不足」割合)は2011年7~9月に「不足」側に転じて以降強い人材不足感が継続しており、企業経営の課題としての認識も強まっています(図4)。

 人手の不足感と同様、設備投資についても不足感が継続しています。設備投資実施割合は2013年7~9月期以来30%を超えているものの、実施目的は「維持補修」への指摘割合が多く、躊躇感が払拭できていません。

 一方で、設備投資をする計画がない理由として「当面は修理で切り抜ける」も上昇傾向にあり、設備の更新時期を迎え、投資の実施・修理と方法は異なりますが、各企業で状況に合わせた対策をしている様子がうかがえます。

企業づくりと地域づくり、一体に取り組む必要性が高まっている

 経営上の問題点は「同業者相互の価格競争の激化」(37%)、「民間需要の停滞」(36%)、「従業員の不足」(33%)、「熟練技術者の確保難」(22%)の指摘割合が高く、いずれも高止まりしています(図5)。経営上の力点は「新規受注(顧客)の確保」(59%)、「付加価値の増大」(49%)、「社員教育」(43%)、「人材確保」(39%)への指摘が高くなっています。

 これらの指摘から見えてくるのは、基盤強化のための人材確保、人材教育への尽力と並行し、個人消費の低迷が続くなか、新規受注の確保、付加価値増大への注力の高まりです。

 企業においては地域経済発展のために、地域の課題と企業の課題を一体として取り組むことが避けて通れなくなっています。同時に、企業における人材確保・維持への取り組みが企業努力のみに留まることなく、地域ぐるみの支援も重要な課題となるなど、企業と地域との連携がますます求められています。

〈会員企業の声から:厳しい景況感に対応する動き〉

○コンサルを入れて、改めて市場における構造シェアの調査・分析を行い、次年度方針・計画を再構築中(宮城・製造業)

○BtoBからBtoCへ移行。直販ルートの確立、新商品の開発に力を入れる(茨城・製造業)

○個々の社員の業務内容見直し、生産性を落とさず残業を減らすことができた。この体制を維持し、新たな事業展開を行うために余剰人員を確保して現状の事業領域以外の取り組みを開始する(大阪、プリント基板プレス加工・金型製造)

「中小企業家しんぶん」 2016年 11月 5日号より