『同友会運動の発展のために』から学ぶ 第7回

第1章 同友会理念について

第一節 同友会理念とは

(前回からの続き)

4、同友会理念はどのように形成されたか

(4)同友会理念の明確化に到達した第22回定時総会(1990年・香川)

 1980年代は、70年代に確立された「3つの目的」の実現をめざし、学びあう活動が活発に展開され、経営環境改善活動では税制問題等で他の中小企業団体との連携も前進しました。総会、全研をはじめとする全国行事の充実、各専門委員会活動も次々と始まり、同友会運動の全面的展開により組織も大躍進をとげます。

 そうした中で、改めて同友会理念の再構築が求められることとなりました。1990年、第22回定時総会(香川)では、同友会理念として、「3つの目的」「自主・民主・連帯の精神」「国民や地域と共に歩む中小企業をめざす」が確認されました。このことは、同友会運動は、「3つの目的」の実現をめざし、「自主・民主・連帯の精神」で会活動を進め、「国民や地域と共に歩む中小企業をめざす」という大きな理想を掲げての運動として集大成されたことになります。

 さらには、“バブル崩壊不況”を乗り越え、新しい時代をめざす指標として「21世紀型中小企業づくり」を宣言(1993年、第25回定時総会・北海道)したのも同友会理念の深化のあらわれです。

(5)求められる「3つの目的」の総合実践、同友会理念の全面開花の21世紀

 “バブル崩壊不況”のさ中にあって、90年代から21世紀にかけて展開した、企業と金融機関との新しい関係づくりをめざす「金融アセスメント法」制定運動は、「3つの目的」の総合実践といえる高次元の運動でした。100万を超える請願署名と1000自治体を超える自治体決議により、金融庁の「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」の策定(2003年3月)、「金融検査マニュアル別冊・中小企業融資編」の再改訂(2004年2月)など金融政策に大きく反映されました。

 これらの自らの手で政策は変えられるという貴重な経験から、中小企業を日本経済の主人公とする「中小企業憲章」制定運動へと発展(2010年閣議決定)、自治体では「中小企業振興基本条例」制定、推進運動が進められています。

 憲章制定運動の成果は中同協・中小企業憲章制定推進本部が「3つの課題と4つの柱」を方針として提起することにより大きく前進することができました。

 「3つの課題」とは、各同友会が、(1)総会方針に憲章推進を盛り込む、(2)憲章学習を活動計画に位置付ける、(3)憲章推進担当(組織、役員)をおく。「4つの柱」とは(1)学習活動の具体化、(2)「中小企業振興基本条例」制定・見直し運動に着手、(3)「3つの目的の総合実践」としての認識を深め、組織強化に力点をおく、(4)自社と憲章との関わりがわかる学習活動を深める。

 これらの運動は、「3つの目的」の総合実践であると共に、「自主・民主・連帯の精神」を生かした企業づくりと人間尊重の社会づくりへとつながる国民運動へと高めていく活動でもあります。同時に、「国民や地域と共に歩む中小企業づくり」の理念をベースとした中小企業家ならではの運動であることをいつも確認して取り組むことが大切です。

 現在、中同協が「人間が人間らしく生きていける持続可能な社会」を展望し力を入れている「エネルギーシフト」、地域再生の課題も同友会理念をさらに深化、具現化していく過程でもあるのです。

(次回につづく)

「中小企業家しんぶん」 2016年 11月 5日号より