人口ボーナスで見る経済成長

 勤続年数が短い国ほど潜在成長率が高いとの論調が、働き方改革でよく主張されます。一方労働法制の改正理由として、海外では雇用の流動性が高成長につながる傾向にあると主張されています。10月17日の日経エコノフォーカスでは、「35カ国の勤続10年以上の従業員の割合を2012年で比較すると、日本47%、潜在成長率で0.3%。潜在成長率4%以上がコロンビア(20%)、チリ(24%)。3%以上が豪州(25%)、1%以上に米国(30%)となり、勤続年数の短い米国や豪州は潜在成長率が高い」と結論づけ、「勤続10年以上の割合が10%低いと成長率は1.4高いという関係性が浮かぶ」と相対的データの比較だけで記載されています。しかし、潜在成長率でもっと根拠のあるのは人口ボーナス期です。人口構成が経済成長を押し上げる効果は確認されており(表1)、「メキシコ、ブラジル、チリ、ペルー、コロンビアでは、2030 年までは人口ボーナス期にある(経済産業省)」と人口ボーナス期により潜在成長率が高いと見た方が正確でしょう。また人口ボーナス終了国の豪州や米国が高いのは移民が多く生産年齢人口の増加によるためです(表2)。雇用の流動性とこじつけた理論で見ると間違いを起こす可能性があります。

 また80年代の米国におけるMITリチャードレスター教授らは「日本の大企業製品に米大企業が負けるのは、その部品を供給している日本の中小企業が優秀であり、さらに継続雇用における社員の力だ」と結論づけています。日本の成長率向上には今後中小企業の力で子どもが生めて育てやすい地域をつくる横受けネットワークと継続雇用の力を復活させ、地域の新しい仕事づくりを進めることが大切ではないでしょうか。

「中小企業家しんぶん」 2016年 11月 25日号より